【第2話】余り物同士『恋がわたしを変える、週末にわたしは変わる』

2020.08.10

ずっと憧れていた、恋愛リアリティーショー番組『恋する❤︎週末ホームステイ』に出演することになった美柑(みかん)。メンバーそれぞれ自己紹介を終え、ロケバスに乗り込むと隣には第一印象が“優しそう”だったリョクが。しかしリョクはロケバスが動き出してから何も喋らず、不機嫌そうに外の景色を眺めてばかりいた。顔色の悪いリョクを見て“車酔いかも”と思った美柑はリョクにミント味のキャンディーを差し出し……。『恋がわたしを変える、週末にわたしは変わる』マイクロコンテンツ第2話をお届けします。
※「AbemaTV『恋する❤︎週末ホームステイ』 短編ノベル・イラストコンテスト」受賞作品です。

「わたし車酔いすごくって、ミント味のキャンディーはすっきりするから持ち歩いてるの」
「……」
「ご、ごめん! 飴なんて渡されても困るよね。急に変なこと言い出しちゃってごめ――」

受け取ろうとしないところから、わたしの勘違いだったのかも。恥ずかしくなって飴を引っ込めようとすると、リョクくんがくすっと笑った。

「ありがと」

飴を受け取るのはわたしよりも大きい手。それから封を破いて飴を食べ始める。

「……ほんとだ。すーっとして効く」
「でしょ?」
「うん。俺が車酔いってよくわかったね」

淡々とリョクくんは言っていたけれど、わたしは少し得意げになって頷く。

「わたしも乗り物だめなの。だから今日は――これ」
「手首に絆創膏ばんそうこう?」
「絆創膏の下に一円玉があるの。手首のちょっと下に乗り物酔いが楽になるツボがあるんだって」

手首の内側、付け根から肘側に向けて指三本ほど下げた場所に内関ないかんと呼ばれるツボがある。手の筋と筋の間だ。そこをぐっと押すように一円玉を貼ると車酔いしなくなるらしい。

「情報源ソースは?」
「……おばあちゃん」

というのはわたしのおばあちゃんから教えてもらったのだ。気の持ちようと言われればそうかもしれないけど。わたしは信じている。

するとリョクくんは吹き出して笑った。

「ははっ、なにそれ。ソースがおばあちゃんって」
「……ご、ごめん」
「いいよ、謝らないで」

リョクくんはそう言っているけれど、ケタケタと笑っているから目立つし、なんだか恥ずかしい。気づけば、前の席に座っていたセイジくんが振り返ってこちらを見ていた。
そりゃそうだ。いきなりおばあちゃんの知恵を披露しちゃう女子高生だもの。あの格好いいセイジくんだって呆れるに違いない。

開始早々、失敗してしまったかも。どんよりとした気分のまま、バスは目的地に着いた。

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今回の舞台となるのは、千葉県の幕張。海浜幕張駅にある商業施設を回る予定だ。
野球ファンらしいコウタくんと藍ちゃんは「球場の方行きたい」と騒いでいるけれど、今回はその周辺だけ。さっそく六人で行動……と思いきや。

「2ショットする?」

桃希ちゃんが切り出して、六人の空気が変わった。
恋を見つけるために来ているのだから団体行動だけじゃない。声をかけて自分から動かないと。
わたしはセイジくんの方を見る。声をかけてみたい、けど。どうしようか悩んでいる間にセイジくんが動いた。

「桃希ちゃん。行こう」

セイジくんが選んだのは桃希ちゃんだった。
置いてけぼりみたいな気持ちになっていると、今度は藍ちゃんがコウタくんに声をかける。二人も2ショットに出かけるらしい。
残されたのはわたしとリョクくん。皆が遠ざかってから、リョクくんが寂しげに呟いた。

「俺たち、置いてかれちゃった」
「そうだね……」
「せっかくだから。俺たちも行こう? 余り物も楽しむ権利あるでしょ?」

リョクくんに誘われて、わたしも歩き出す。せっかくの恋する週末ホームステイ、余り物なんて拗ねてないで楽しまなくちゃ。

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向かったのは海浜幕張駅近くの商業施設。週末で人が多いお店の中を歩いていると、リョクくんが言った。

「美柑ちゃん、第一印象で好みだったの誰?」

リョクくんがいるのに他の子の名前を出してもいいのだろうか。戸惑いがちに見上げると、リョクくんと目が合った。そして涼やかに瞳が細まる。

「当てていい? セイジでしょ」
「どうしてそれを……」
「美柑ちゃん見てたらわかる。あいつ格好いいもんな。まさしくイケメンって感じ」

どんな反応をするのか心配だったけれど、リョクくんはからりと笑っているだけだった。

「2ショしようって声かければよかったのに」
「……勇気がでなくて」
「おばあちゃんの知恵袋披露した時は元気よかったくせに」
「あ、あれは流れで!」
「そういう子っぽいもんね、美柑ちゃん」

リョクくんはなだめるように、わたしの肩をぽんぽんと叩いた。

「どうせあれでしょ。今までに好きな人はいたけど告白したことないとか、片思いのまま相手が卒業しちゃって高校バラバラとか」
「……その通りです」
「告白どころか好きな子に話しかけることもしてなさそう。廊下ですれ違う時も意識しちゃうタイプ。一言でも挨拶できればその日はご機嫌」
「……まったくその通りです」

リョクくんってエスパーなの、それとも後ろで見てた? って疑いたくなるぐらい当たってる。
何も言い返せず黙っているうちにエレベーターの前へ。乗りこむのはわたしたちだけ。扉が閉まってからリョクくんが言った。

「そんな美柑ちゃんが、どうして恋ステに参加しようと思ったの?」

▶︎【第3話】は8月10日13:00更新!

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作者:松藤かるり