【第3話】惚れてもいいよ『恋がわたしを変える、週末にわたしは変わる』

2020.08.11

ずっと憧れていた、恋愛リアリティーショー番組『恋する❤︎週末ホームステイ』に出演することになった美柑(みかん)。デート会場、千葉県の幕張で好意を寄せるセイジをツーショットに誘おうとするも、セイジは他の女子に声をかけてしまい取り残されてしまった。同じく取り残されたリョクと一緒にツーショットをし、色々話しているうちにリョクから「どうして恋ステに参加しようと思ったの?」と聞かれ……。『恋がわたしを変える、週末にわたしは変わる』マイクロコンテンツ第3話をお届けします。
※「AbemaTV『恋する❤︎週末ホームステイ』 短編ノベル・イラストコンテスト」受賞作品です。

わたしだって、わかってる。

男の子に声をかける勇気もないようなわたしが、恋なんてできるわけない。ましてや週末限定のこの旅に参加するなんて。
だけど。

「変わりたいと……思ったから」

旅のチケットと告白チケットが入った封筒を手にした時、胸が震えた。
こんなわたしでも、恋をしていいんだって言われているみたいで嬉しかった。だから、決めた。

「わたし、この旅で恋がしたい」

言い終えると同時にエレベーターの扉が開く。リョクくんはさっさと歩き出して、それから振り返った。

「じゃ行こうよ。勇気出してこ」

わたしも頷いてエレベーターを降りる。
そこにあるのはアミューズメントコーナー。照明は落ちてやや薄暗く、メダルゲームの音が響いて騒がしい店内をリョクくんが慣れたように歩いて行く。

「見て。あれ、新しいVRゲームだ」
「わあ、すごい。リョクくんはゲーム好きなの?」
「まあね。得意なのこれじゃないけど」

と言い終えるなり、リョクくんは振り返った。

「ねえ。俺の格好いいところ見せてもいい?」
「なにそれ?」
「美柑ちゃんが俺のこと好きになっちゃいそうなやつ――こっち来て」

リョクくんが向かったのはクレーンゲームがいくつも並ぶ場所。わたしもやったことあるけれど、奥行きを合わせるのが苦手で欲しい景品はなかなか取れない。

「わあ。カリカリ梅干しビッグサイズだって!」
「好きな食べ物までおばあちゃんみたいだね」
「……ごめん」
「謝らなくていいって。それより欲しいものない? 食べ物じゃなくて記念に残りそうなやつ」

そう言われて見渡すと、ホワイトボードを持った白兎のぬいぐるみが目にとまった。
可愛いけど。取るのは難しそう。

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「何見てるの――ああ、あれか」

リョクくんがクレーンゲームの前に立つ。そして。

「一発でとれたら褒めて」
「うん」
「惚れてもいいよ」

こういった軽口はどうやって扱えばいいのだろう。流せばいいのか、それとも真に受けていいのかな。悩んでいるうちにクレーンが動く。
そしてあっさりと。ひょいっと音がしそうなほど軽々と、クレーンは大きなぬいぐるみを持ち上げた。ただ持ち上げるだけじゃなく、がっしりと掴んでいて安定感があり、滑り落ちることなく、景品のポケットへと運ばれていった。
リョクくんはいたずらっぽく笑ってぬいぐるみを取り出しているけれど、わたしはそれどころじゃなくて。

「すっごーい!!」

拍手しながら叫んでしまった。
だって大きなぬいぐるみが、あっさりと、それも一回で取れてしまった。わたしだったらボタンを押す前に屈んだり、ゲーム機の横から確認したり時間がかかるのに。リョクくんはさくさくと取ってしまったのだ。

「こんな大きいの取れるなんて、すっごいよ! 自慢できる特技だよ! クレーンゲームの神様みたい。あ、動画を取ればよかった。友達に見せたかったな」

リョクくんはきょとんと目を丸くした後、苦笑した。

「褒めすぎ。美柑ちゃんの感動ポイントが謎」
「ごめんね……」
「いいよ。そういうところが可愛いから」

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そうして遊んでいるうちに、待ち合わせの時間が近づいていて。
待ち合わせ場所は海浜幕張駅から少し歩いたところにある海だ。わたしたちも商業施設を出て海沿いの道を歩く。

リョクくんは歩くのが速いけれど、でもたまに振り返ってわたしが追いついてくるのを待ってくれる。見守るような優しい仕草。その優しさに気づくと、リョクくんと一緒にいても緊張しなくなった。不思議そうな子だと思っていたけれど、『謝らないで』って言ってくれる優しい人。

「リョクくんが第一印象で気になった子って誰だったの?」

潮の香りが濃くなって、海が近い。待ち合わせ場所について2ショットが終わってしまう前に、気になっていたことをリョクくんにぶつけた。
するとリョクくんは「んー」と複雑なうなり声をあげて、首を傾げた。

「ナイショ」
「ずるい!」
「じゃあ……こうしよう」

そう言って景品袋からあの兎のぬいぐるみを取り出す。カバンからペンを取り出して、そこに何かを書きこんだ。

「あげる」
「せっかく取ったのに、わたしがもらっていいの?」
「そのために取ったから――でも、書いてあることは後で見て」

わたしは頷いて、ホワイトボードを見ないようにして袋に戻す。でも『後』っていつのことだろう。ホテルに着いたら見ちゃってもいいのかな。

待ち合わせ場所の浜辺に行くとすでに四人が待っていた。みんなであれこれと話して、それから。

「美柑。2ショしよう。話してみたかったんだ」

今度の2ショットはコウタくんから声をかけられた。
立ち上がってみんなの前を通り過ぎていく時、リョクくんがわたしだけに聞こえる声量で呟いた。

「さっきの兎ちゃん、見て」

もう見てもいいの、っていうか今? 戸惑いながらもコウタくんの後を追いかける。

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「じゃー浜辺散策しよ。なんか面白いモンないかねー」

コウタくんと二人になったけれど。やっぱり緊張しちゃう。
そうだよね、と頷いて。でもあの兎の人形が気になっちゃう。コウタくんと一緒にいるのに。

結局、わたしは袋からぬいぐるみを取り出していた。
コウタくんは「なにそれ」と不思議そうな顔をしているけれど、わたしはホワイトボードの文字に釘付けになっていて。

『第一印象は、美柑ちゃん』
リョクくんが残したメッセージ。

第一印象で選んだ子がわたしって言ってもらえるのは嬉しい。
頬が熱くなるのを感じながらぬいぐるみを袋に戻す。

コウタくんとの2ショットに集中しなきゃいけないのに、頭はメッセージのことでいっぱいだった。

▶︎【第4話】は8月12日13:00更新!

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作者:松藤かるり