【第6話】彼がいない週末なんて『恋がわたしを変える、週末にわたしは変わる』

2020.08.14

ずっと憧れていた、恋愛リアリティーショー番組『恋する❤︎週末ホームステイ』に出演することになった美柑(みかん)。恋ステ2週目にして、やっと憧れの男子メンバー・セイジをツーショットに誘うことができた。しかし、セイジと一緒にいても、リョクのことが頭から離れなくて……。『恋がわたしを変える、週末にわたしは変わる』マイクロコンテンツ最終話をお届けします。
※「AbemaTV『恋する❤︎週末ホームステイ』 短編ノベル・イラストコンテスト」受賞作品です。

合流してもわたしとリョクくんが言葉を交わすことはなかった。

声をかけようとしてもあえて無視されているみたいで、なんだか辛い。
ホテルに到着してそれぞれが部屋に入っていく前に、わたしはリョクくんに声をかけた。

「なに?」
「今日話せなかったから寂しくて……わたし、嫌われることしちゃった?」

他の子を誘っていたから嫌われてしまったかもと怖かったけれど、リョクくんはふわりと微笑んだ。

「美柑ちゃんがセイジ誘ってたからイライラしちゃって、いじわるしちゃった。怒ってる?」
「……ううん」

怒ってはいない、けれど不安だった。先週あれだけ一緒にいたリョクくんが、急に離れてしまったみたいで。

リョクくんの手が伸びる。
その時に、彼の手首が視界に入った。

「あれ? 絆創膏は――」
「美柑ちゃん」

絆創膏のついていない手首。どうしてって聞こうとしたけれど、その言葉はリョクくんに遮られた。

「勇気出して、セイジに声かけたこと。頑張ったね」

優しく、頭を撫でられる。
よくできましたと褒められているみたいに。

「君の恋が叶うこと、応援してる」
「え――それは……」
「またね」

その言葉が示すもの。
問いかけても、リョクくんの手は離れていく。
キャリーを引いて、わたしを置いて遠くへ行ってしまう。

呆然としながらポケットに手を入れると、そこにあったのは観覧車でもらった告白チケットの紙片だった。
わたしたちには期限がある。旅に参加するチケットが何枚配られているのかわからない。

もしかしたら――来週、リョクくんはこの旅にいないのかもしれない。
リョクくんがいない、週末。

Page 2

「……あ、」

想像して気づく。胸をじりじりと締め付ける感情。
こんなにも切なく苦しいのに、手放すなんてできない。

「わたし、リョクくんが好きだ」

彼のいない週末を、手放すなんてできない。

その朝は、輝いているようだった。
ひとつの決意をすればきらきらと世界が輝いている。だめだったとしても後悔することはないと思う。

「リョクくん」

決意を胸にその場所へ向かえば、リョクくんが待っていた。
わたしは彼の前に立って――一歩踏み出す。

「リョクくんのいない週末を考えてみたの。きっと寂しくて物足りない。わたし一人じゃ、クレーンゲームでお人形も取れない。やっと気づいたの。リョクくんのことが好き。この旅が終わっても一緒にいたい」

想いを伝えることは怖い。
声かけることさえ勇気がでなかったわたしに、想いを告げるなんてできるのだろうかと不安だった。
けれど。いざ踏み出せば勇気なんていらなかった。気持ちを伝え終えれば、涼やかな風が心に吹くみたいに、すっとして。

Page 3

「……一歩、踏み出せたじゃん」

リョクくんはそう言って、ポケットから赤い紙を取り出した。それはあの日破った告白チケット。テープで貼り合わせているけれど、角が欠けている。

「あの紙片、持ってる?」
「あるよ」
「貸して」

わたしが持っていた紙片を渡すと、欠けた角にそれを埋める。
つぎはぎの跡がある歪な告白チケットだ。けれどそれを手に、リョクくんは笑う。

「俺からも言いたい――バスで声かけられた時から、君のことばかり考えてた」
「……え……うそ……」
「嘘ってひどいなあ。こう見えても、このままサヨナラとか、美柑ちゃんはセイジのことが好きなのかなとか、色々悩んできたんだけど」

リョクくんの頬は少し赤くなっていて、視線を泳がせて恥じらいながら手を差し出す。

「告白してくれてありがとう。俺も美柑ちゃんが好きだよ。付き合って欲しい」

でもわたしの頬も赤くなっているのかもしれない。顔が熱くて、逃げるように彼の手を掴む。

指先を絡めて、隣を見上げて。
誰かと恋に落ちるかもしれない週末。それはわたしを変えた。恋だけじゃなくて、一歩踏み出す勇気。

その果てに、わたしの隣に、彼がいる。

全話を読む

4作品をイッキ読みする♡

【毎日更新】『恋する❤︎週末ホームステイ』をベースにした恋愛小説で毎日胸きゅん

Page 4

最新シーズン「恋する︎週末ホームステイ 2020夏」はABEMAで毎週火曜よる10時放送中! 遠く離れた街に住む高校生たちが期限付きの「恋の旅」で出会う。「恋チケット」の枚数だけ旅を続けることができるが、自分の期限は誰にも言ってはいけない……。“君は明日、いないかもしれないから”今シーズンは顔面偏差値最強♡ 美女たちが積極的に夏の恋を加速させる!


短編ノベルコンテスト優秀作一覧はこちら

みんなの投稿作品を見る

作者:松藤かるり