宇垣美里さんのエッセイ連載。7月はルーティーンについてのあれこれを綴っていただきました。今週はかなりマニアックな宇垣さんの“マイルール”をお届けします。宇垣美里の【私から見えている景色】

第十三章 『繰り返し繰り返すこと』
(二)
階段の3段目は絶対に踏まない。
小学生の頃からの癖。上から3段目と下から3段目は私にとって鬼門なのだ。
たしか、学校の怪談をモチーフにしたようなアニメの中で、階段の3段目が急に真っ黒な奈落となって子どもを引きずり込むのをみたせいのような気がする。
もはや原因となったものの記憶すらあやふやだけれど、脳どころか脊髄にこびりついたこの長年の癖は、アラサーになったところで直る見込みもない。
6段の小さな階段なんて大変だ。
真ん中の2段を踏むことができないので、階段の真ん中で不格好にぴょんと3段下まで飛び降りなければならないのだ。危ない。
しかもこれには“誰にもバレてはいけない”という制約までついている。
まあこれはバレたら恥ずかしいからって自分で勝手に決めただけなのだけれど……。

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素知らぬふりしてまっすぐ前を見ながらすとととと階段を降り、さりげなく3段目を飛ばす。
何の意味もない、何の価値もない秘密のルーティーン。
もちろん秘密だから、どんなに上手くできても表情には出さない。代わりに心の中で大きくガッツポーズ。3段目を踏まなかった。奈落にも落ちてない。なんてラッキーなんだろう。
ああきっと、今日の仕事もうまくいく、いいことあるに違いない。
こんなことで勝手に上機嫌になるんだから、コスパがいいったらありゃしない。

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宇垣美里にQ&A

Q. 自分に全然自信がもてません。
どうしたら自分を好きになることができますか?(日奈 10代女性)
A.好きになる、というか、
自分とは一生離れることができないので、 肯定せざるを得ないと思うんです。 嫌いなところやダメなところなんて一番近くで見てるんだから痛い ほどわかってるけど、 まあそれでも好きにならないと人生辛すぎるから、 一生懸命好きなところ見つけるしかないのかなあと。 とどのつまりただのライフハック。 私も別に自分が好きではないけれど、悪いやつじゃないよな、 けっこー頑張っててえらいじゃんって思ってます。 あとは嫌いにならないよう振る舞うことかな。 人のことみんなと一緒になって笑わなかったの、偉かったな、 とか。ずるできたはずなのに誠実でいられたの、すごいな、とか。 まずはそういった自分がわかってあげられてる自分の努力を褒めて 誇ってあげたらいいのかなと思います。
兵庫県出身。2019年3月にTBSテレビを退社し、4月からフリーのアナウンサーとして活躍中。無類のコスメ好きとしても有名で、コラムやエッセイなど執筆活動も行っている。
宇垣美里マネージャーアカウント
▶︎@ugakimisato.mg
※衣装:イエローワンピース¥48000/ブライト ライト(ライト) フレアデニム¥13000/エドウイン・カスタマーサービス(サムシング )
Text:Misato Ugaki Photo:Kota Shouji Styling:Mana Kogiso(io) Hair&Make-up:NAYA Composition Mayuko Kobayashi