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宇垣美里が「覚えているには苦しすぎる」と語る大切な記憶について

2020.08.27

宇垣美里さんのエッセイ連載。8月は宇垣さんの“捨てられないもの”をテーマにエッセイをお届けしています。今週は宇垣さんの心に眠る、覚えているに苦しすぎる“記憶”について綴っていいただきました。「それでも忘れたくない」と語るほど、彼女にとって大切な記憶とは?「自分らしく生きる」ということは、かんたんなようで難しい。次のステップへと歩みはじめた彼女から見えている世界は、もしかしたら私たちとは少しだけ違うのかも。宇垣美里の【私から見えている景色】

第十四章 『捨てることができないもの

(四)

捨ててしまえれば楽なのに。
そう思ってしまう記憶が山のようにある。

酔いつぶれてつっこんだ植え込みの葉や枝の硬さ。初めての生放送で緊張して何度も何度も言い間違えたこと。運命の人だと確信していた相手と、どんなに頑張ってもうまくいかなくて、大好きなのに傷つけることしかできなかったあの日々。
自分の半身のように思っていた人が、もう二度と笑うことも歌うことも、老いることもなくなってしまった日の世界の色。

忘れられたら、捨てられたら、どんなに楽だろう。

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あの時言い淀んでしまった単語を見つけて固まることもなければ、一緒にいたころよく作った料理を無心で作ってしまい、我に返ってバツが悪くなることもない。

ああ、彼女が好きだった花が咲いている、そんなことで彼女の不在を感じ、胸が苦しくなることもない。

いいなあ。心が揺さぶられないと、楽だろうなあ。
でも、それは幸せなことなのだろうか。覚えているには苦しすぎるそれらの記憶は、忘れてしまうには大切すぎて、嫌になる。

大事なものは甘く温かなものばかりではない。でもその痛みすらも愛おしい。
結局捨てられないまま、生きていく。

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宇垣美里にQ&A

Q. 私も宇垣さんと同じく妹がいますが、要領がよくて人に甘えるのが上手な妹があまり好きではありません。親に仲良くしてほしいとお願いされます。どうしたら妹に優しくできますか?(emmi 20代女性)

A. 別に好きで同じ親から生まれたわけでもなし、ただの偶然なので、別に仲良くする必要ないんじゃないんですか? 兄弟だから必ず仲良くなれる、だなんて幻想でしょ。ただ、私はこんな面倒臭い私を理解したうえで、仲良くしてくれる妹に本当に感謝していて、かつ家庭内のセンシティブな問題を共有し、共にサバイブした仲間として、とても大切に思っています。そんな相手、妹しかいませんからね。これまでの人生で何度となくその存在に助けられてきました。多分、歳を取れば取るほどそのありがたみって分かるようになるのではないかなと思います。

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宇垣 美里(うがき みさと)
兵庫県出身。2019年3月にTBSテレビを退社し、4月からフリーのアナウンサーとして活躍中。無類のコスメ好きとしても有名で、コラムやエッセイなど執筆活動も行っている。

宇垣美里マネージャーアカウント
▶︎@ugakimisato.mg

宇垣美里『私から見えている景色』 連載一覧

※花柄ワンピース/スタイリスト私物
Text:Misato Ugaki Photo:Kota Shouji Styling:Mana Kogiso(io) Hair&Make-up:NAYA Composition Mayuko Kobayashi