9月末から公開の映画『ミッドナイトスワン』でトランスジェンダー役に挑んでいる吉村界人さん。プライベートでも、様々なアイデンティティやルーツに興味を抱いているようで……。
最近、演じる役のルーツを調べることにハマってます
草彅剛さん演じるトランスジェンダーの女性と、ネグレクト(育児放棄)被害者の少女の、切ない疑似親子ストーリーを描いた映画『ミッドナイトスワン』。吉村界人さんは、主人公が働くニューハーフショークラブのダンサーを演じています。
ーーー今回、どのような役作りをされたのでしょうか?
吉村「僕の友人にも2人トランスジェンダーの方がいるので、できるだけ時間を共有させてもらったんですが、一緒に過ごすうちに周りの反応に敏感になっていくことに気づいたんです。
映画の中でも草彅さん演じる凪沙はいつも髪を触っているんですけど、何かしてないと落ち着かないそうで、実際トランスジェンダーの方には、自分自身の見られ方を気にするがゆえにそのような行動をする方が多いと聞きました。僕にはそういう人の目が気になるとか全くなかったので、意外な気づきでしたね」
作りは難しかったけれども、メイクは楽しかったという吉村さん。
吉村「それで女性の気持ちが理解できていたかというと、そんな単純なものではないですが、マジマジと自分の顔を鏡で見ることってしないので、メイクをすることで初めて自分ってこういう顔だったんだ、と思い知らされましたね。そういう意味では女性は男より自分をより良くしようと意識が高くなるんだろうな、と感じました」
Page 2
そんな独特の“気づき”を語ってくれた吉村さん。常に独自の世界観を持ち、それを表現したアーティスティックなインスタも高い支持を得ています。
ーーーその吉村さんのアンテナに最近引っかかっていることとは?
「『SKIN』という黒人差別を描いた短編映画を見たんです。それで自分は意外と、日本のいろんな出来事の歴史や背景を知らないなと思って。たとえば僕は三島由紀夫作品はすごく好きなんですけど、学生運動とか、彼の文学が生まれた背景は知らない。
それで最近、歴史の勉強を始めたんです。図書館に行って調べたり、歴史好きな友達がいるので電話で長時間説明を聞くこともあります。やっぱり演じる役や時代の裏に何が起きていたのか知ることは、役者の義務だと思うんですよね。興味あることのルーツを辿るって楽しいですよ。ViVi読者の皆さんも、ファッション好きならファッションの歴史を探ってみるのもいいんじゃないでしょうか?」

シャツ¥45000/ボディソング、ピアス¥43000/エドストローム オフィス(オールブルース) ●商品情報はViVi2020年10月号のものです。
吉村界人(よしむら かいと)
1993年2月2日生まれ。東京都出身。2014年『ポルトレPORTRAIT』で映画初主演。ʼ18年、第10回TAMA映画賞にて最優秀新進男優賞を受賞。主な代表作に、映画『太陽を掴め』『サラバ静寂』、ドラマ『左ききのエレン』『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』など。今後の公開予定映画に、『滑走路』(2020年秋)、『無頼』(2020年12月)、『プリテンダーズ』(2021年夏)、『ジャパニーズスタイル』がある。

新宿のニューハーフショークラブで働くトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。故郷の母親に頼まれ、育児放棄に遭っていた少女・一果(服部樹咲)を預かることになる。初めは反発し合っていた二人だが、次第に温かな感情が芽生え始め……。共演は他に真飛聖、水川あさみ、田口トモロヲなど。9/25より全国公開。©2020 Midnight Swan Film Partners
合わせて読みたい♡
Photos: Toshiaki Kitaoka Hair&Make-up: Rumi Terasawa Styling: Yoshie Ogasawara(CEKAI) TEXT: Naoko Yamamoto