どんな役柄も軽々と自然に演じ切り、観る人の心にスッと入り込み感動を届ける……役者として高い評価を受け続けている二宮さんの主演最新映画『浅田家!』。語る言葉から伝わってくる“大切なもの”への思い。飄々(ひょうひょう)としているようで優しくあったかい、そんなニノが「やっぱり好き」!
家族は不思議で面白い
「この家族は本当に仲がいいんだろうな。それが、写真集『浅田家』を初めて見たときの感想でした。子供たちだけじゃなくご両親も一緒にコスプレするっていうのは、本当に仲のいい家族じゃないとできないだろうなと思ったから(笑)」
二宮さんが主演を務める映画『浅田家!』の原案は写真家·浅田政志氏による2冊の写真集。小説でも漫画でもなく“写真集”をもとに一人の写真家と家族の実話を描き出した、今作はちょっと珍しい作品。その1冊が家族の夢を写真の中で叶えるために全員が全力でコスプレ、様々な職業になりきった家族の姿を収めた写真集『浅田家』だ。
「家族って何より個性的なものだと思うんです。自分の家では全く意識しなかったけど、他の家族を見て驚いたっていう話はよくありますよね。家族の中では当たり前の価値観も、他人と話しているとそれが全く異なったり、そもそもその価値観に気かなかったりする。例えばお父さんにずっと髪の毛を切ってもらっているとか。本人としてはそれが普通でも、友達に話したら、とてつもなく驚かれたりして(笑)。
それでいうと、浅田家の“個性”はやっぱり“仲の良さ”なんだと思う。そんな家族の肝になっているのが、今作でブッキー(妻夫木聡)が演じているお兄さんなんですよね。
劇中に“お父ちゃんとお母ちゃんを喜ばせることができるのは政志だけなんだ”っていう台詞があるんだけど。本当ならばその役割は自分であって欲しい思いもあったはずなのに、早くからそこに気づき、僕が演じる弟の政志を愛情深くサポートしてくれる……。映画の中でもすごく良い方ですが、ご本人もとても良い方で。そんなお兄さんがいてこそのあの浅田家なんですよね。
だからこそ、政志がひとりっこだったら、長男だったら、この家族はどうなっていたんだろう、何かがひとつズレるだけで違う形になっていたんだろうなって、想像してしまったりして。それもまた、家族の不思議で面白いところだと思いますよね。」
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写真が持つ大きなチカラ
今作の原案になっているもう一冊の写真集が、東日本大震災の津波で泥だらけになった写真を洗浄して持ち主に返すボランティア活動を約2年にわたり撮影した『アルバムのチカラ』だ。
「写真には二度と戻らない大切な時間もパッケージされている。今作を通して、僕自身も写真の力の偉大さを感じました。」
普段、自分で写真を撮ることは「滅多にない」と言う二宮さん。
「写真に関しては完全に“もらう”専門ですね(笑)。今はスマホで簡単に写真が撮れるけど、それを遡ることはほとんどなくて。見返すのはやっぱり紙焼きの写真なんだよね。僕の家には周りの方々からもらった紙焼きの写真が結構あって。意外とね、仕事現場でよくいただくんですよ。
昔はドラマや映画の打ち上げ会場に行くと、学校の修学旅行の写真みたいに、壁に撮影中のオフショットが番号付きで貼り出されて。欲しい番号を書いて渡すと後日送ってくださったりしてね(笑)」
そう語りながら「今作はそんな写真にまつわるエピソードをたくさん思い出させてくれた」と二宮さん続
ける。
「昔は、緑色の看板が出ているお店にフィルムを出して。フチ無しにするかフチありにるか、日付は入れるのか入れないのか、そんなやりとりを店頭でしたこととかね。懐かしいなぁって、ViVi読者のみなさんはわからないか(笑)。
最近はそんな昔の写真を見返す機会も多くて。今ではなく過去を振り返る、僕が“写真のチカラ”を感じるのはそんなとき。こないだも、見返した写真の中に亡くなってしまった方の姿を見つけて。今はもうこの世にいないのに、そこにいるその人は“あのとき”のまま。また、一緒に写っている僕も嵐のメンバーもすごく若くて……。その瞬間、うわっといろんな思い出が蘇り、自分自身も“あのとき”に戻る感覚というか。その一枚でもう手が止まっちゃって。掃除の途中に作業が止まってしまうという、まさにあの状態ですね。
記憶は薄れるばかりだけど、写真には切り取られた時間が薄れることなくずっと存在している。写真の中ならもう会えない人に会うこともできる。それってスゴイことだなって、改めて感じた瞬間でしたね。」
そんな“写真のチカラ”がたくさん描かれている今作。観た後はきっと自分自身の思い出のアルバムもめくりたくなる。写真が教えてくれる様々な家族や愛のカタチ。笑いとに満ち溢れた映画『浅田家!』。
「もしもこの作品に出会わなかったら後悔すると思えるくらい、いいものを作れたと感じています。この作
品がまぶしく見える人もいれば、温かく感じる人もいていいと思う。僕なんかは“こんないい人達がいるのか!”ってとてもまぶしく見えましたし。この作品に何かの縁で出会えたなら、楽しんでいただきたいですね。」
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text:Miwa Ishii