独自の考え方と胸にささる言葉に、毎回ハッとさせられる宇垣美里さんのエッセイ連載。11月は、“言葉”をテーマにご自身のエピソードや考えを綴っていただきました。自身の職業とも密接に関わっている言葉に宿る力とは……?【私から見えている景色】

第十七章 『ことだま』
(一)
“ありがとう”の言葉をどんなに伝えたところで、伝えきれたことなどない気がする。
例えば疲れてぐったりしていたときに差し出された飴玉、道に迷ってうろうろしていたときにかけてくれた声。
ふとした気遣いやちょっとした親切、相手にとっては何気ない行為にどれだけ自分が救われたか、思うままに伝えたいなと思うのに、言葉を尽くせば尽くすほど上滑りしていくのを感じて、結果さらっと“ありがとう”と口にする。
こんなとき、悲しいくらい言葉は無力だ。思っている気持ちをそのまま可視化してぽんと贈ることができたらいいのに。

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なまじ言葉を職業にしているために、流暢な分だけぺらぺらに感じるのは何故なんだろうか。
政治家の流れるようなスピーチよりも、新婦のつっかえつっかえ涙に声を潤ませながらのあいさつの方が涙を誘うような、そんな不器用ゆえの力を私はもう使うことができない。
逆の立場だったとき、別にありがとうと言われたくてやったわけじゃなくても、その言葉に、ああ、心を配ってよかったな、と体がぽかぽかするのを知っているから、全部が全部、伝わらないと分かっていてもせめて、と口に出す。
言葉は、人間が持つ最大のリソースだ。元手がかからない上にリターンの大きいこの力、ちゃんと使わないのなんてもったいない。
“ありがとう”は、聞いた人も言った人も幸せにする魔法の言葉なんだから。

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宇垣美里にQ&A

Q. 自分に自信が持てず、
彼が女性がいる飲み会に行くだけですごく不安になります。 こういう時どんと待っていられるような女性になるにはどうすれば いいと思いますか?(かのこ 女性20代)
A. 他に依存先というか、
居場所みたいなものをたくさん作ればいいと思います。友達とか、 仕事とか、趣味とか。私にはこの人だけ! って思っちゃうとどうしても不安になっちゃうし心を欲しがり過ぎ てしまうけど、 どうしたって束縛されると人は人のこと億劫に思ってしまうものだ から、あなたを否定しない場所をたくさんつくって、 そこに逃げ込んでください。1人の時も楽しそうで余裕のある人の 方が、きっと魅力的ですよ。それに、 自由にさせた時に自分の元に帰ってこないものは、 もともと自分のものじゃなかったんだよ。
兵庫県出身。2019年3月にTBSテレビを退社し、4月からフリーのアナウンサーとして活躍中。無類のコスメ好きとしても有名で、コラムやエッセイなど執筆活動も行っている。
宇垣美里マネージャーアカウント
▶︎@ugakimisato.mg
※ドレス¥36000/HOUGA
Text:Misato Ugaki Photo:Kisshomaru Shimamura Styling:Ruri Matsui Hair&Make-up:Miho Matsuda Composition:Mayuko Kobayashi