宇垣美里さんのエッセイ連載。“言葉”をテーマにお届けしている11月最後のエピソードは、言葉のもつ力について。以前、宇垣さんが「言葉は人間が持つ最大のリソース」と綴っていたように、言葉とは誰かが誰かを幸せにすることができる最高の魔法なのかも。宇垣美里の【私から見えている景色】

第十七章 『ことだま』
(四)
きっと言ってくれたその人はもう忘れているような、些細で何気ない言葉が、ずっとずっと自分を支えてくれてる一生ものの魔法のような言葉だったりすることがある。
友達に言われた“あなたのこういうところ、好きだな”って言葉とか、“君の書く文章は本当におもしろいねえ”って先生にしみじみと言われたこととか。
馬鹿みたいかもしれないけれど、何度も何度も思い出しては噛みしめるように味わって、もらった勇気と共にまた立ち上がろうと思えるのだ。

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どんなに容姿をけなされたって平気。だって、私の妹はいつも私が一番可愛いって言ってくれる。
どんなに性格悪そうって言われて知らない人にまで嫌われても、平気。人生の半分を共にした友人たちはそんな私をおもしろいと愛してくれている。
言葉に消費期限はない。
いつまでも甘く、優しく、体を温め続けてくれる。
だから私もどんな細かい、小さな美点も、全部全部伝えるようにしている。
どれが芽吹くかなんてわからないけれど、その人が苦しくなったときに心にそっと灯る小さな光になればいいと祈って。

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宇垣美里にQ&A

Q. どうしても欲しいものが手に入らないとわかって、
それでも手に入れたい時。宇垣さんならどうしますか?(ナギ 20代女性)
A. 悲しいかな、恐ろしいほどに執着心のない人間なので、
どうしても、という気持ちになったことがない……。 なんで欲しいのかの気持ちを因数分解して自分を見つめるかな。 答えとしては、どうもしない、ってことなのかも。 個人的にはこれじゃなきゃ絶対にダメなものなんてこの世にないと 思っていて。大統領が変わろうとも地球は回るし、 この人以外いないと盲信した相手と別れたってすぐに次の人が見つか るし、 欲しかった服が買えなくても他に可愛いものがたくさんあるし。 それなのにどうして、それが欲しいんでしょうね、 手に入れたいんでしょうね。 その答えがわかると意外とどーでも良くなることが、割とあるよ。
兵庫県出身。2019年3月にTBSテレビを退社し、4月からフリーのアナウンサーとして活躍中。無類のコスメ好きとしても有名で、コラムやエッセイなど執筆活動も行っている。
宇垣美里マネージャーアカウント
▶︎@ugakimisato.mg
※Tシャツ、パンツ/全てスタイリスト私物
Text:Misato Ugaki Photo:Kisshomaru Shimamura Styling:Ruri Matsui Hair&Make-up:Miho Matsuda Composition:Mayuko Kobayashi