人気恋愛リアリティ番組『テラスハウス』の出演メンバーとして、またビキニブランド『ALEXIA STAM(アリシアスタン)』の顔として、ViVi読者にはおなじみの山中美智子さん。いまや知らない人はいないはずの存在だけど、じゃあどんな人? というと、TVやSNSでわかること以外はベールに包まれているのも事実。というわけで、波瀾万丈な半生を振り返る独占ロングインタビューを敢行。ブランドから子育て、私生活まで、存分に語ってもらいました!
自分を「起業家」なんて、絶対言えない
山中美智子さんのイメージはおそらく、「テラハの人」「アリシアの人」「海外によく行ってる人」「インフルエンサー」「憧れの起業家」「素敵なママ」と、人によってさまざま。当の本人としてはそれをどう思っているのでしょう。山中さんにとっての“第一の顔”はどれですか? と聞くと、「どれでもないです」と、想定外の答えが。
「それこそ自分が“起業家”だなんて感覚はまったくないし、恥ずかしくて言えないです(笑)。(取材に同席してくれたアリシアスタンの共同経営者の方を指して)彼もそうだけど、『ALEXIA STAM』はみんなで頑張ってきた、って感覚が強いから。私はすごく頭がいいわけじゃないし、最初から経営の知識を持っていたわけでもない。ブランドを立ち上げてから今まで何もかもがチャレンジだったし、たくさんの人からアドバイスや助けをもらってここまで来ましたから。起業家と名乗るのは好きじゃないしキャラでもないかなって」
きっと、山中さんをあまり知らない人ほど「テラハの人」というイメージを持っているのでは。そして「TVで有名になったからブランド始めた」なんていう、事実とは異なる認識も。山中さんがビキニブランド『ALEXIA STAM』を始めたのは2012年、『テラスハウス』出演よりもずっと前のこと。出演の話をもらった際は、TVに出ることでブランドイメージを壊してしまうかもしれないと相当悩んだとか。
「ブランド立ち上げから2年ほど経って、ようやく人気が出てきた頃だったんですね。当時から、余裕はない中でもルックブックはかなり気合いを入れて作っていて、アートディレクションなども全部自分でやっていました。それを番組のスタッフに説明したら、すごく面白いね、と言ってくれて。『テラスハウス』って、一人ひとりの夢ややりたいことをすごく応援してくれる番組なんですよ。リアリティー番組に出るという決断は大変だったけど、今は出演して本当によかったと思っています」

知らない人から、名前ではなく「テラハ」と呼ばれた頃
そして2ヵ月の出演が終わった頃には、人生が一変していたそう。
「私が出演していたのは2ヵ月間なんです。たった2ヵ月で、こんなに人生変わるのかと思いました。ある時、ベンチでおにぎりを食べていたら、全然知らない人に「テラハの人がおにぎり食べてる」って言われちゃって、“え、ダメなの……?”って(笑)。それまで、人の目とかまったく気にせず生活していたから、通りすがりの人まで私のことを知っているという状況に、どう対応していいかわからなかった。それに最近でこそ「山中美智子ちゃん」って名前で呼んでもらえるようになったけど、当時は「あ、テラハ」って。みんな、私がTVに出ていたことは分かっても、私の名前は覚えてない。どう対応したら良いか悩んでいた時期もありましたね」
TV出演が終わっても世間の反応はおさまらず、またブランドの人気や知名度が上がっていくのと、SNSが一般的になる時期が重なったこともあり、たくさんの応援コメントに紛れて、なかには誹謗中傷を送ってくる人も……。それでも、今はもう何を言われても自分らしくいられるようになったとか。
「誹謗中傷が気にならなくなったキッカケですか? 当時、私のSNSを毎日執拗に追いかけて批判してくる人がいて。彼らも毎日ものすごい時間を使って見ているんだと気づいたんですよね。検索して、コメントして反応を見てまたSNSを見てっていう時間って結構時間取られるじゃないですか。それをずっとしてるって凄いなと思って。目も疲れちゃいますし、肩も凝っちゃうし」
そして驚いたのが、これまで批判してきた人にも感謝している、という言葉。
「彼らも私の事で時間を使ってくれたことは確かだし、何より、自分自身がたくさん傷ついたからこそ強くなれたし、そのおかげで今の私がいる。最初から強い人なんていませんから。辛い経験だったけど、決してムダではなかったと思っています」
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好きなことを追求したら、自分のルーツに戻っていた
TV出演以降のことばかりフィーチャーされがちですが、では、それ以前は?
山中さんは4人姉妹の長女で、ご両親はレストランを経営。料理人の父は食養生(※東洋医学に基づいた、毎日の食事で体質改善や病気予防を目指す考え方)にも詳しく、幼い頃から、季節を取り入れ健康にも配慮した食事を食べて育ったそう。
「あとこれは“飲食店の家の子あるある”だと思いますが、夕食の時間はあまり親がいなかったんです。もちろん食事は用意してくれていましたが、ある程度大きくなってからは自分たちで作って食べることも多かったです。そんな感じで育ったので、今でも毎日の食事の支度はそんなに苦ではないですね。どちらかといえば、ひと手間かけてでもちゃんとしたものを食べたいと思うタイプかな」
一方、母方は、祖母がお裁縫の先生、家族も親戚も服飾専門学校卒というファッション一家。ドイツに住んでいた叔母や祖母のもとへ遊びに行けば、庭にやってくる小鳥に餌をあげたり、鳥小屋を作って観察したり。また、夏はいつも三浦海岸にある親戚の別荘で過ごし、貝を集めては名前を調べて、夏休みの自由研究にしたり。
「家族みんなモノを作ることが好きで、自然や季節を大切にする人たちですね。今改めて考えると、私はやりたいことを追求しながら、どんどん幼い頃に還っていっている気がします。東京生まれなのに海が大好きで自然に親しみや安らぎを感じるのは、幼い頃こういった場所へたくさん連れて行ってくれた両親のおかげですね」
そして2歳の女の子のママとなった今、両親からの影響の大きさや感謝の気持ちをいっそう強く感じるとか。
「私がどんどん幼い頃へ還っているように、まっさらな時期に吸収したものって、いくつになってもしっかり覚えているもの。だからこそ私も両親がしてくれたのと同じように、娘にはなるべくたくさんのものを与えてあげたいですね。ただ、そういう意味では怖さもあります。子どもって親のことを本当によく見ているし、何でもものすごいスピードで吸収していくから。こないだも私のネイルを見て『ママ、キラキラかわいいじゃん』って(笑)。まだ2歳でそんなこと言えるの?! ってことを、毎日増やしてきますからね。行動とか発言とか、私自身もちゃんとしなきゃなって思います」
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相手に譲れるのって、純粋に“愛”だと思う
ブランドの運営だけでも忙しいなか、さらに子育てが加わったことで「正直、生活は一変しました」と、山中さん。それでもベビーシッターなど頼まず、旦那さんと分担を決めて2人でなんとかやりくりしているのだとか。……と、ここで素朴な疑問が。山中さんが結婚したのは2016年。当時すでに『ALEXIA STAM』を軌道に乗せていたなか、結婚をすると決めた理由って何だったのでしょう?
「彼が、それまで付き合ってきた人とはまったく違うタイプだったから、かな。私って昔から、将来のビジョンに男性が出てくることがなかったんです。恋愛は好きだけど、男性に頼って生きていきたいとは思わない。むしろ、結婚することでやりたいことを制限されるのだけは絶対にイヤで。でも彼とは、一緒に生活するのを自然に想像できたんですよね。それまで“この人とはやってけない、きっと”って思うことばかりだったのに!(笑)」
もともと友達期間が長く、お互いの性格や交友関係を熟知していたこと。そして“一緒にいて幸せだ”と実感できたことが大きかったとか。
「一緒にいても自分がハッピーかどうか分からない時って、きっとダメな時なんですよね。それに、他人との暮らしってつくづく“譲り合い”だなと。もちろん彼のことは好きだけど、それだけじゃ暮らせない。譲れたり許せるのってある意味、愛そのものですし。結婚ってきっと、相手のものすごく好きなところを探すより、こうすれば許せるなという方法を3つくらい見つけておくのがいいんでしょうね」
TV出演のインパクトや見た目の華やかさから、どこか違う世界の存在のように感じていた人は多いはず。しかしお話から浮かびあがる人柄は“いい意味で普通”、そして真面目。そして好きなこと、大切な存在への誠実さでした。山中さんが自分の好きなことで成功した理由も、実はそんなところに隠されているのでは……? インタビュー後半は“好きなことを仕事にする秘訣”を詳しくうかがいます!

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Instagram:alexiastam1988
Interview & Text:Megumi Yamazaki