「セックスの悩みを抱えてるのは、あなただけじゃない! 大好きな人とのエッチなのにイケない、性欲が高まらない……。そもそも「イクってどういう感じ?」「性感帯ってみんなにあるもの?」「不感症かも……」など、解決策や答えがわからない、学校では教えてもらえない疑問や不安を、医師・宋美玄先生とセクシー女優・紗倉まなさんに聞いてみました。

宋美玄 先生 産婦人科医 医学博士。大阪大学医学部医学科を卒業後、大阪大学医学部附属病院、りんくう総合医療センターにて多数の診療に従事。2017年「丸の内の森レディースクリニック」を開院。美容婦人科治療専門クリニックとしては日本初。周産期医療・女性医療に従事する傍ら、メディアで情報を発信。

Q. 彼のことは大好きだけど、セックスではなかなかイケない……

私もこのお仕事をする前には「イク」って、よくわかっていませんでした。ぼんやり「気持ちいい」と思うような、ふんわりとした感覚でした。
気持ちが盛り上がっていれば、全身どこでも感じちゃうし、逆に性感帯といわれるところを触られても冷めていくこともあります。まずは「楽しい」と思えるようになるといいのかもしれないですね。
セックスの楽しみ方は、お互いに性癖や性感帯を伝えているかどうかで、大きく変わってくるはず!
これは私がまだ高校生のときの話なのですが、当時の彼氏と、とにかくいろんなエッチに挑戦していた時期があるんです。
私がはちみつを塗って、彼がそれを舐める“はちみつプレー”をしてみたり、アダルトグッズを試したり、ラブホ巡りをしたり……「ふたりだけの秘密」ができたようで嬉しかったな~。セックスでイカなくてもそんな時間を過ごせたらいいんじゃないかな。
ちょっと大きな話になりますが、男性なら射精をしたり、女性ならオーガズム(イク)とか「わかりやすい快感」を目標とするセックスが主流になっている風潮に、個人的に違和感を覚えるんです。
だってゴハンを食べるときも、食べ終わったときのことは目的としていないですよね。その料理を味わうことがそもそも楽しいし。それなのに、いざセックスとなるとゴールにこだわってて変だなって。相手から「イケた?」と聞かれたら女の子も「YES」と言うしかないから、その質問あんまり意味ないですしね(苦笑)。
セックスはごくプライベートな行為だから、焦らず、手柄を求めずにゆっくりとコミュニケーションを楽しめればいいんじゃないかな~と思います。

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そもそもセックスで感じられるようになるには、マスターベーションもしくはセックスの経験が必要
最初からセックスでイケる人はいないし、AVみたいな感じ方はハッキリ言って幻想です。大好きな彼と付き合ってエッチすればイケるというわけではないんです。
アメリカで大学生に行った調査では、はじめてのセックスでオーガズムを得たのは男性79%に対して女性は7%という結果が出たそうです。そして特定の異性とのセックスにおいて、「必ずオーガズムを感じた」という女性は、20代以降では年齢を問わず全体の1/3なんてデータもあるんです。
相手が経験豊富で「本当に感じてるのかな?」「ここは違うかな?」など、カラダの声を聞けるほど性的に成熟している相手ならまだしも、そうでもないのに、いきなりオーガズムを感じられるほどカラダは簡単にはできていません。
キスや愛撫によって脳が興奮して、骨盤に血流が集まり、クリトリスが勃起したり、膣の入り口が少し開いたり、充血してふっくらして、その一部が濡れるという一連の反応を「性反応」と呼びます。この性反応が起こっていない状態で、膣やクリトリスを刺激されれば痛くて当然。婦人科の診察で膣に器具を入れられても、気持ちよくなったりしませんよね? つまり単に触れられただけでは、気持ちよく感じないようにカラダはできているんです。
「不感症」なんて言葉も広く知られていますが、これは医学的なものではありません。生まれつき性的快感をまったく感じない人は、ほとんどいません。もしも「感じにくい」という自覚があるなら、セックスの経験が浅いため性感が掘り下げられていない、または過去のトラウマなどからセックスに没頭できていない、など様々な原因が考えられます。焦らず時間をかけて解決していきましょう。

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Q. 感じるスイッチ「性感帯」ってどこ?

性欲を感じている相手に触れられれば、頭皮からつま先まで、身体中のあらゆるところが気持ちよくなり得ます。逆に「ここさえ触れば、いつでも気持ちよくなってしまうスイッチ」みたいなものは人体にはありません!
とはいえ、もともと感じやすい場所というのはあって、それはズバリ「神経がたくさん通っている」ところ。最も気持ちよくなれる性感帯は性器のうちならクリトリスです。ただ、やさしい愛撫でないとオーガズムはおろか“感じる”こともできません。
自分の性感帯を見つけるためには、マスターベーションをするのもよいでしょう。女子だって思春期になれば性欲や性的なことに対する興味が出てきます。マスターベーションをすることは今後のセクシャルライフに有利になるはずです。自分の性欲をマネジメントしやすくなったり、性的指向や性感帯、好きな性的空想(どういうもので興奮するか)のデータベースができることで、リアルなセックスでも気持ちよさに近づきやすくなると思います。
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Q. 彼のことは大好きだけど、セックス欲が高まりません……。気分を上げる方法は?

“脳内オカズ”を作ってみては?
もし彼とセックスすると思うだけでテンションが下がるなら、脳が興奮せず、性反応が起こらなくなってしまいます。いわば「快感に対してシャッターが降りている」状態です。
このような状態ではセックスは楽しめません。また何度もセックスをしてきた仲なら、マンネリ化は否めません。
興奮を呼び覚ます方法として、憧れのアイドル、アニメキャラ、好きなシチュエーションなど“脳内オカズ”を作るのはどうでしょうか。セックスをしている最中に、頭の中では別のアイドルを妄想する……なんてことは実は多くの人がやっていること。付き合いたてのカップルでも珍しいことではないですし、長年一緒に住んでいるパートナーとのセックスならなおのことです。
あなたの“脳内オカズ”をこっそりストックしておいて、妄想で興奮を補完するのも悪くないと思います。
セックスを楽しむために、自分が気持ちいいと感じるのはどんなことかを知ることは、とっても大切です。まずは、そこからはじめてみては?

私はセックスを楽しむために、「自分を酔わせる」ようにしていますね
これには2つの意味があるのですが、まずはお酒を飲んで物理的に酔うこと。未成年の人は無理ですが、シラフじゃできない大胆な自分をさらけ出せるのも「自分を酔わせる」醍醐味です。
そしてもうひとつが「脳を酔わせる」こと。セックスの際、「今、私たちは、村上春樹の物語の主人公なんだ……(村上春樹さんのファンなんです!)」とひとりで妄想したり、自分を楽しませる術として、脳を酔わせています。
つい先日ご一緒した、とある芸人さんが「セックスをしているときに他の女性を思い浮かべていることもある」って言っていました。すると周りの出演者も「あるある」と頷いていたんですよね。実はみんな、コッソリやってるみたいだし、罪悪感を持たなくていいんだと思いましたね(笑)。
宋美玄先生もおっしゃっていますが、私も過去の撮影現場で、どうしても気持ちが上がらないことがあって、そのときは昔の彼を「脳内オカズ」にして、自分を酔わせていましたね。もちろん目の前の相手に興奮して楽しめたら最高ですが、「セックスを楽しむ方法のひとつ」として試してみては?

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Q. 実は彼とのセックスのとき、いつも演技してるんです。カラダの相性が悪いのかな?

「正常位」よりも「寝バック」のほうがクリトリスが刺激されて、感じやすくなります
日々の診察でもカラダの相性のいい/悪いについて相談されることはよくあります。
ペニスの大きさや硬さ、角度が膣の大きさや深さにピタッと合う場合もありますが、そんなパートナーと出会えるのは奇跡です。でもカラダのサイズが合うパートナーを探し続けるわけにもいきませんよね。そこで解決法のひとつとして、体位を工夫してみるのも手。
一番スタンダードな体位は正常位とも言われていますが、実は女性にとってはイキづらい体位。興奮すると膣の上部が充血して膨らむため、ペニスで刺激するのが難しくなるからです。
体位の好みは人それぞれですが、「寝バック」は布団でクリトリスが刺激されて、感じやすくなります。

AV女優になって、世の中には自分のカラダにうまくフィットする、まるでテトリスみたいに凹凸がハマる感じの男性が存在するんだと知りました
でも不思議なのは、凹凸がピタッと合った人でも、何度もエッチしていると、その感覚が変わってくることも。「一生この人とセックスしていたい♡」と思っていたとしても、気持ちよさには変化が出てくるんです。逆に最初はそれほど強烈な印象がなくても、何度もカラダを重ねていくうちに、徐々に気持ちよさがアップしてくる人もいるんですよね。
セックスはナマモノ。そのときのコンディションによって、自分の感じる気持ちよさは変わってきますよね。だからすぐに「カラダの相性が悪い」と判断しなくてもいいと思います。
私たちAV女優でも「なんだか今日は無理」という日はあって、それでもたくさんの人が働いている撮影現場ではできるところまでがんばります。でもプライベートだったら「ちょっと今日は体調悪くて、また今度しよ♡」って言っていいはず。気持ちよく感じられないコンディションの波って誰しもあるから、「大好きな彼とのエッチで感じられなかった……」と自分を責める必要はまったくないんです。
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Q. 本当はセックスが痛くて苦痛。でも「痛い」って言えない……

できれば痛いことを伝えるのが一番いいと思います
相手だって、痛いと分かれば痛くないようにするにはどうすればいいか一緒に色々試してくれようとするのではないでしょうか。でも、もしも「痛い!」とダイレクトに伝えづらいなら、「ゼリー(潤滑剤)を使ってみない?」と提案してみるのも手。
痛みの軽減にもなることもあります。
頑張って痛みに耐えて、なんとかその彼と付き合っても、その後もイヤなことをイヤと言えない関係が続くのは、考えもの。
実際に私の身の回りの女性でも、そういった違和感を抱いたまま結婚した人は、「あのときのモヤモヤにもっとちゃんと向き合っておけばよかった……」と、口を揃えて言っています。コミュニケーションを大切にしてくださいね!
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Q. カラダを見られるのが恥ずかしくて、セックスがいまいち楽しめないんです(泣)

あなたの魅力は、それだけじゃない!!!
カラダのコンプレックスは誰しも何かしらありますよね。
でももし彼が「俺、ペニスが小さいから恥ずかしいんだ……」といつまでもずっとウジウジ言っていたら、「あなたの魅力、それだけじゃないから!!!」と言いたくなってしまいませんか。
お互い完璧なスタイルではなくても、愛おしさを感じるし、興奮を覚えるもの。彼が好きだと言ってくれてるのだから、細かいことは気にしなくていいと思います。もちろん。もしそこで「オッパイが小さいから無理」と言われたら、そんな男性は即サヨナラ!です。

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紗倉まなさんからViVi世代のみんなにメッセージ

今って情報が多いせいか、セックスにおいても慎重な人が多いし、なにかと失敗が許されない風潮も強いように感じます。
でもそれってどうなのかな?
10代や20代前半のころは、相手を傷つけることでなければ、若気の至りバンザイ! 私のはちみつプレーみたいに色々試してみてもいいと思うんです。もしセックスでイケなくても、それが失敗というわけじゃないし、そもそもイクことだけを考えてしまうと、何のためにセックスをしているのかわからなくなってしまう。お相手の方とコミュニケーションを取りながら、自分なりの気持ちよさや楽しさを見つけてほしいな〜って思います!

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Photos: Lana Shimada Text: Akemin