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ネイルと出会った会社員の僕が、「男なのに…」を超えてギャル見習いになるまでの旅路

2021.08.13

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【僕は、女性として生きる人も、男性として生きる人も、どちらかから抜け出そうとしている人も、どちらかになろうとしている人も、みんな関係なくネイルをしていいし、関係なくネイルをしなくていい世の中になって欲しいなと、個人的に願っています。】そう語るのはセルフネイル歴2年目・会社員の苔さん。ネイルとの出会いや心身の変化、「男のネイルは変」という社会の壁とのぶつかり、「やっぱりネイルが好き」という思い……。彼とセルフネイルの1年間の軌跡は、「好きなものを堂々と楽しみたい!」そんな気持ちを後押ししてくれるかもしれません。

突然ですがまずは、こちらの2枚の画像をご覧ください。

上が、2020年5月に初めてネイルをした時の写真です。
下が、2021年5月以降の最新のネイルたちの写真です。

あらま〜! 1年間でネイルマスターになりすぎ。

僕は男性として育ってきて、それでいてかつセルフネイルが大好きです。
去年の5月、同居している姉に半ば強引に塗られるかたちで、ネイルとの出会いを果たしました。

周りにネイルをしている男性がほとんどいないアウェーな環境でネイルを始めてから、自分の爪に色がつくようになったのはもちろん、自分のメンタルもまた、これまでの人生にはなかったきらめきを灯すように変わってきたと感じます。

周りの声はひとまず脇に置いて、自分の魂に素直になって、自分が好きだと思うものをとことん楽しむ、簡単なようで難しいこのメンタルをあえて「ギャルのメンタリティ」と呼ぶのだとしたら、僕の精神は1年間かけて、少しずつギャルになってきたと言えるかもしれません。

この記事を開いて読んでくださっている読者の皆さまは、きっとギャル部の先輩方、もしくはギャル部入部希望の方々も多いかと思います。

そこで先輩方、そして入部希望の方々。よろしければ、新人の僕がネイルを始めてからギャル見習いになってゆくまでの旅路を、順を追って一緒に見ていってやってくださいませぬか。今違う部におられる方も、何卒。

お時間許す限り、どうぞお付き合いくださいませ。

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〜僕がギャル見習いになるまでの心身の変化〜

①なんか自分の手が超イケてる気がしてくる

先輩方はわかるかもしれませんが、ネイルってマジ魔法ですよね。

はじめは正直、「男がネイルなんて変かも」という考えに囚われていたけど、姉から問答無用にネイルを塗られ、初めて爪に色を宿した途端、「これが自分……?」って思っちゃうくらいに生命力が溢れ出してて、たまげた。僕ってこんなにイケてたのね、もっと早く教えてよッ!!

プリキュアの初回で、主人公が初めて変身した時に「これが……私……?」と驚く気持ちがよくわかります。ウチらってみんな、最強のプリキュアになれるってことかもしれません。名前何にしようかな、キュアファビュラスとかかな。誰かウチとチーム組んでくれん?

姉も「似合ってんね〜!」って言ってくれたし、僕自身も素直に綺麗だなと思ったので、周りの目もさほど気にならず、手が視界に入るたびに自分の爪を堪能することができました。日常の質、爆上がり。姉、最高の女。

と言いつつ、仕事の日の前の晩には、ひっそりとネイルを落とす羽目に。こうして、休日限定の指先シンデレラ男が誕生する運びとなりました。

同居する姉とは今でも、各自ネイルを新調しては互いに自慢し合うラブリーな日々を送っています。(画像左の姉[両手]はジェル派で、画像右の僕[片手]はポリッシュ派。)始まりは少し強引なくらいでちょうどいいのかもしれません。

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②他の部位もデコりたくなる

今まで「男が体をデコるのは変」という固定観念があったけど、もう爪もデコっちゃったし、他の体の空いてるスペースもったいなっ! って思って、でかい指輪とイヤリング買っちゃった。買うよね、ふつうに。眩しくてカラフルなヤツがいちばん強そうだし。

僕はネイルを始めてから、自分の体が、単に呼吸をし血を循環させ食物を消化する生命維持機関であるだけでなく、ウチらがウチらの色を重ねていくための広いキャンバスであることに気づいてしまいました。もう前の自分には戻れません。

でも、戻れなくなった数だけ、人生はオリジナルになっている、ということかもしれません。

ネイルに合わせた指輪を付けて、おのれの手の総合戦闘力を高めるという気持ちでやっています。目に入るたびに強くなれる。

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③色の世界の楽しさを知る

昔からモノトーンよりはカラフルな服が好きだったけど、ネイルを始めて一層、色に対する感度が急上昇しました。

服を買うときは鏡で全身を引いて見て判断してたから、自分の雰囲気や体格に似合わない気がするものは自然と断念することも多かったけれど、それに比べてネイルは引いて見ることが少ないから、自分がときめいた色ならなんでも自由に買っていい気がしちゃう。

服だったら自分に似合わないなと棚に戻すような色をひとたび爪に塗ってみたら、それがすごく綺麗で、それから、自分が純粋に好きな色はなんだろう? と考えるようになり、赤と一言で言ってもよく見るといくつもの赤があることを学び、散歩していて素敵な色を見つけたら写真に収めて次買うネイルの参考にするようになり、ふと気がつくと色彩検定の勉強まで始めてデザインを考えるようになっちゃってる。

ネイルを始めてから、日常を眼差すレンズの解像度が上がり、世界には思っていたよりもずっといろんな色があることを、そしてそのうちのどの色でも自分の身にまとっていいことを知りました。今度は試しに服も、自由に好きな色を選んでみようかな。

夕日に染まる海を見て綺麗だなと思い、親指の上で再現してみたときの爪です。

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④自分の手をいたわるようになる

爪へのダメージを減らすために保湿とかもするようになって、毎日の暮らしの中に爪を労わる時間が追加されました。自分の体をきちんとねぎらう時間を、なんだか求めていた気がする。そうして毎日きちんとケアしていたら、さらに少しずつ爪に愛着湧いてきちゃって、こうなるともう止まりません。

他人の目とか気にする必要ないって分かってるけど、やっぱりうまく愛することができない自分の体のパーツも色々ある中で、一個でも自分なりに愛せるパーツがあるってことが嬉しかった。

小学5年生の時から中指の第二関節に居座る彫刻刀の傷跡は、正直まだ好きにはなれないけれど、できる範囲のケアを続ける自分はたくましいし、焦らなくてもいいかと少しずつ許せるようになってきた。

無理して自分を好きでいようとするのも違うなって思ったし、自分にできる限りの手間と時間をかけながら、自分の気持ちが落ち着くべきところに落ち着いていく過程の中に身を置くことこそが、僕なりの、自分を愛する作法だと気づけた。

これからも人生の中で、自分でうまく許したり、愛せる体のパーツが増えていくといいな。無理だったら一生爪だけ見てよっと。

素の爪も優しくいたわった分だけツヤが出て、形まで整う、ような気がする。

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⑤ショッピングモールの化粧品売り場に入るのに慣れる

最初はやっぱり、ショッピングモールの化粧品フロアに入るのは抵抗がありました。周りほとんど全員女性だし。キラキラしてるし。

けれど、恐る恐るネイルのサンプルを見ていたら、BAさんが「どんな色がお好きですか?」って話しかけてくれたり、自然と「ご自宅用ですかね?」って訊いてくれて、何だ、このフロアは自分の体を磨いたりデコったりしたいバイブス持ってる人なら誰でもいていいんだな、と気づきました。要はギャルの巣穴ってこと?

日本の化粧品メーカーの教育はすごい。「似合います!」と褒められたネイルもまんまと全部買っちゃったし。もしたまに、不安そうにフロアをさまよい歩いている男を見つけても、皆さま是非やさしくしてくださいませ。

BAさん以外にも、カフェの店員さん達から爪を褒められて追加でもう一品買ったことが何度かあります。やさしい世界。

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⑥社会の壁にぶつかって半泣きになる

ここまで順調に来ているように見えますが、2020年10月に事件が発生します。旅行中にみかん狩りをしていたら、近くのキッズがそのお母さんに「見て〜! あの人男なのにネイルしてる〜!(僕を指差しながら)」とデカイ声で報告しました。そんなデカイ声で報告する必要あるゥ〜〜?!?!

その瞬間、自分の爪に色がついてることが恥ずかしくなってしまって、その場を逃げるように去ってしまいました。子供は正直だからしょうがない、って言うけれど、ってことはこれまで僕の周りの人たちも本当は僕の爪を変だと思いながら黙ってくれてただけなのかな、とか思ったり。

その後の旅行中も周りの目が気になって、早くネイル落として「(男として)普通の爪」になりたいなと除光液を探す始末。

この旅行が終わってから、僕はしばらくの間ネイルを中断することになりました。

オイ!!!見ているかキッズ!いやキッズは悪くない、ただそういう社会の固定観念に囲まれていただけだもんね。オイ!!!見ているか社会の固定観念!!オイ!!

キッズに指摘されたネイル。みかん狩りに合わせて、オレンジのネイルを旅行の前日に買いに行きました。

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⑦ネイルが好き

その後しばらく素の爪のままで過ごしていたわけですが、ネイルを塗らない間も、こっそり毎日のルーティンとして爪のケアは行なっていました。こんなに丁寧に保湿しているのに色を塗れないとは何たる屈辱かと思いながら、陰で文字通り爪を研ぐ、そんな生活を送っていました。

それから数週間経って、周りのギャルの友達に励まされながら、そしてなによりこれまで自分が塗ってきた爪の写真に背中を押されながら、今日は外出る予定ないし良いかなと、一番お気に入りの色のネイルに手を伸ばしました。

慣れ親しんだ、あのツンと鼻をつく匂いと、あのキャップの固さを思い出して、ただただ優しく丁寧に、自分の心を毛づくろいするように、そっと爪に色を載せました。ああ、やっぱりきれいだな。

復帰後初戦だったから爪先だけだったけど、日の光を反射する自分の爪を眺めてただ、「これだ、これでいいんだ、これが僕の「普通の爪」なんだ」と思いました。

なんとなく、日の光に祝福されているような錯覚さえしてくる。

そして僕は今この瞬間も、何なら10月のあの日よりもド派手な爪を輝かせながら、この文章を書いています。

会社の先輩方にも少しずつ相談して、なんとついにこの爪で会社にも行きました。この爪で? 弊社もギャルの巣穴?

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ネイルをしているとよく、「女の子みたいだね」と言われることがあります。

けれど僕は、女性として生きる人も、男性として生きる人も、どちらかから抜け出そうとしている人も、どちらかになろうとしている人も、みんな関係なくネイルをしていいし、関係なくネイルをしなくていい世の中になって欲しいなと、個人的に願っています。

人それぞれに、ネイルをする/しない理由や事情、そこに込める意味や祈りがあるけれど、その中で、自分が自分でいつづけるために、そして自分がもっと自分になるために塗るネイルが、僕にとっては一番綺麗なんだと、1年経ってそう感じます。

そんな、ギャル部入部2年目の夏の気づきです。

苔さんのネイルまとめ

PROFILE

セルフネイルを愛するサラリーマン。ギャル見習い。

Text:KOKE