神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動している芸人「9番街レトロ」の京極風斗(きょうごく・かざと)さんは、極端なほどに“0か100か”で生きている。自分に自信があって、かっこいい生き方をしている、そんな彼なら恋愛も得意なのでは?と、ファンの方々から恋愛相談を受けることも少なくないんだとか。そこで、永遠のテーマである「愛」について“京極風斗”的な考えとは……。失敗しないための方法(?)は必見です!
9番街レトロ・京極風斗
連載【0か100かで生きてゆく #4】
ー 自分を愛するということ ー

Illustration: Kazato Kyogoku
恋愛相談
「今日はViViの原稿を書かないといけないんだ。」
友達にそう連絡してから書いています。
ドタキャンの理由としてはかっこよ過ぎますね。
いきなりですが、僕は恋愛が苦手です。
にもかかわらず、SNSをやっていた頃はよくファンの方から恋愛相談のDMが来ていました。
ナルシストなので恋愛マスターだと思われていたのだと思います。
確かに僕はナルシストですが、自分のことをかっこいいと思っていることと、異性にかっこいいと思われていると自惚れることとは全く別です。
僕が僕を好きなだけで、みんなが僕を好きだとは別に思っていません。
いや本当は自惚れもそこそこあるのですが、それは一旦置いておきます。
とにかく、恋愛らしい恋愛はもう何年もしていないのです。
なので僕に答えられることはいつも1点だけで、どんな悩みにも共通して「自分を愛しなさい」と返していました。
自分を愛でてください。愛でて愛でて、溢れた分だけ他人を愛してください。
我ながら良い言葉ですよこれは。
この言葉だけはViViの本誌にも載せてほしいですね。
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恋愛相談をしてくる人は俗に言う「重い」人が多いです。
これは自分に向けるべき愛情も上乗せして相手に届けているからです。
まず自分を愛しきってから、やっと他人です。この順序を忘れないでください。
これは別に「自惚れろ」と言っている訳ではありません。
「自惚れる」とは、「実際の能力以上に自分を高く見積もる」ということです。
僕の言う「自分を愛せ」は、「ありのままの自分を」ということです。
そしてそれは自分の為に、だけではありません。
自分を愛するというのは、自分のことを愛してくれている人を肯定するということです。
「あなたが愛している人間は素晴らしい存在なので、その愛に自信を持ってください」ということを示す営みです。
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例えば誰かに贈り物をする時、日本人は「つまらないものですが」と謙遜しますが、「これは最高な物なので是非受け取ってください」の方が、お互い気持ち良いと思いませんか。
マナー講師からのクレーム覚悟で言いますが、たとえ謙遜でも、「つまらない」と思っている物を他人に渡すなんて失礼ではありませんか。マナー違反です。
あと、クレームもマナー違反ですよ。
「つまらない私を愛してください」はあまりにも勝手です。
「私は最高なので愛してください」の方が筋が通っているじゃないですか。
首にリボンでもくくりつけて、自分は最高のプレゼントだと主張してください。
そんなことしたら嫌われますよ。なんでもかんでも真に受けるな。
とにかく、自信を持ってください。
自信とは文字通り「自らを信じる」ということです。この世で唯一「絶対に裏切らない存在」である自分のことも信じられない人間が、いったい他に何を信じられると言うのでしょう。
自信を持つと承認欲求は薄れていきます。
自分が凄いことは自分だけが分かっていればいいので。
僕はこのスタンスで数々の失敗をしてきました。
「これで成功する」とは一言も言っていないですから。
いいですか。
自分を愛していることを表に出し過ぎるとこうなります。
こっそり自分を愛してください。
そしてこういうやつに恋愛相談しないでください。
いい人紹介してください。
それまで僕は、僕を抱きしめるので。

Photo by: Ryo (Kotora)
連載『9番街レトロ・京極風斗の0か100かで生きてゆく』は第2・4水曜日に更新!
1995年8月9日生まれ。大阪府出身。吉本興業所属のお笑いコンビ。2019年4月1日に9番街レトロを結成。神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動中。
コンビのYouTubeチャンネルは毎日更新!
個人チャンネル「京極風斗の道楽ちゃんねる。」ではアートとインテリアを軸に、好きなことを週2(月・木曜)で配信。絵が得意で、自らデザインしたオリジナルグッズをSUZURIで販売している。
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Photo: Ryo (Kotora) Text & Illustration: Kazato Kyogoku