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9番街レトロ・京極風斗の連載【0か100かで生きてゆく】#7「生のお笑い」

2021.11.10

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はい

神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動している芸人「9番街レトロ」の京極風斗(きょうごく・かざと)さんは、極端なほどに“0か100か”で生きている。そんな彼が、客として観たお笑いライブは人生で1回きり。その日の衝撃とともに「お笑い」を語りつくします! これを読み終わる頃には、あなたの休日の楽しみがひとつ増えてるかも♡

9番街レトロ・京極風斗
連載【0か100かで生きてゆく #7】

ー 生のお笑い ー

Illustration: Kazato Kyogoku 

「お笑い」って?

僕は全く把握していないのですが、どういった層の方がこの連載を読んでくださっているのでしょうか。

お笑い芸人としての僕のファンが殆どなのでしょうか。

意外と全く別の世界からいらっしゃっているのでしょうか。

いずれにせよ、ご覧頂きありがとうございます。

私が京極です。

今回は、普段テレビでしか芸人を見ないような、あまりお笑いに興味が無い方へ向けた内容にします。そういう読者もいると信じて。

既にお笑いにどっぷり浸かっている方も、「自分が何故お笑いが好きなのか」を再確認出来ると思いますので読んでください。

皆さんギャンブルをした事はありますか。

競馬だの宝くじだの、そんな分かりやすいものじゃなくても結構です。

例えば、長さを測らずに勢いでカーテンを買った経験など無いでしょうか。

そんなちょっとした賭けは誰しも経験した事があると思います。

では、部屋が決まる前にホームセンターへ走り、色もサイズも材質も確認せずに、何故か「次の部屋の窓にはこれがピッタリだ」と謎の自信だけでカーテンを購入した事はありますか。

 

あくまでも例えですので、別にカーテンである必要はありませんが、とにかく、それぐらい無謀な賭けに出た事はありますでしょうか。

もし、そんな人間がいるとしたら興味が湧きませんか。

僕はそんな人間を、嫌と言うほど知っています。

「お笑い芸人」という人種です。

人生の、それも特に精力的な尊い時間を懸けて、何の根拠も無しに「売れる」と信じている。それが芸人です。

少し興味を持って頂けたでしょうか。

では、提案があります。

次の日曜日、映画を観るはずだった時間でお笑いライブを観てみませんか。

「遊園地よりも劇場に来て下さい」とまでは言いません。流石にジェットコースターの方が楽しいので。

しかし、元々座って何かを観る予定だったなら、映像ではなく、生のお笑いにしてみませんかという提案です。

 

映画のスクリーンに映る小栗旬さんや菅田将暉さんは、明日も明後日もお金持ちですが、劇場には今日の電車賃も怪しい奴が沢山います。

小栗旬さんや菅田将暉さんにもそういう時期があったのかもしれませんが、小栗旬さんや菅田将暉さんはめちゃくちゃかっこいいので、同じ苦労ではないはずです。

見た目も頭も悪い、それ以前に人として最低ラインのことが出来ない、とにかく自分の人生も儘ならないような奴等が、死に物狂いで他人を笑わせようとするんです。それも、無いに等しい給料で。もう面白いですよね。

こんなエンタメが他にありますか。

その様を是非、生でご覧頂きたい。

「テレビでお笑いを観るのと変わらない」と思った方。ここからはテレビを消して読んで下さい。どうせ録画でしょう。後で観れます。

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お腹を抱えるほど笑えること

思い返してみてほしいのですが、テレビのお笑いで、「ハハハ」と笑うことはあっても、手を叩いて、涙を流して笑うことって滅多に無いですよね。

テレビには秒に莫大なお金が掛かっていますので、テンポが命です。一瞬たりとも無駄に出来ません。

なので、編集で出来るだけ盛り上がった部分を抽出するのですが、そこが盛り上がっているのは、実はカットした部分ありきだったりします。

 

テレビを観ていて、スタジオの盛り上がりと自分が感じる面白さにズレが生じていた事はありませんか?

それはそこにたどり着くまでの「無駄」を知らないからです。

生のお笑いライブでは、その無駄も込みで観ることが出来ます。

無駄を積み上げて積み上げて、それが爆発した時に大きな笑いになるのです。

積み上げて積み上げて、結局不発で、1時間かけてただの大荷物になる事もしばしばあります。

しかし、それは映画も同じではありませんか。

駄作は駄作で、友達と感想を言い合う時に盛り上がったりするものです。

もし爆発を観ることが出来たら、呼吸も苦しい程に笑えます。普段の生活で自分はそんなに笑ってなかったんだと気付くと思います。

あなたの人生がつまらないと言っている訳ではありません。お腹を抱えるほど笑うようなことなんて、そもそも稀にしか起こらないのです。

 

瞬間かもしれませんが、本気で笑うとストレスが無くなります。そして人は笑うと若返ります。笑いは究極のアンチエイジングです。

「病は気から」が本当なら、笑いは最強の特効薬です。

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人生の転機になったお笑いライブ

僕は中学年生の時には芸人になろうと決めていたのですが、そのキッカケはふたつ。

ひとつは修学旅行の時に友達とやった漫才が楽しかったこと。

もうひとつは、その当時、大阪の「baseよしもと」という劇場でやっていたお笑いライブで観た、プリマ旦那(現・令和喜多みな実)さんがカッコよかったからです。

完全に客として観た公演は人生でその1回きりだったと思います。

 

若手芸人のファンだった叔母に連れられて観ただけでしたし、僕自身通うほどハマった訳ではないのですが、その一回は僕の人生を変える大事な1回でした。

テレビで観ただけでは感じなかった衝撃が、確かに生のお笑いにはあったのです。

 

「月刊芸人」という吉本のマガジンがあるのですが、ありがたいことに6月号で東京版の表紙を飾らせて頂きました。

同月、関西版の表紙は令和喜多みな実さん。

 

わざわざ誰かに言ったりはしていませんが、僕はあの日のライブの力を密かに感じていました。

変な例ではありますが、他にもいろんな形で、誰かの人生を変えるパワーがお笑いライブにはあると信じています。

 

いかがでしょう。

たった一度でいいのです。

生のお笑いを経験してみませんか。

確かに劇場に足を踏み入れるハードルの高さは分かります。

でもそんなのは1回目だけです。

その一歩で、今後の「休日の過ごし方」が一つ増えたら最高じゃないですか。

この記事で、一度観てみようと思った方、まずは「9番街レトロ」を観に来てください。

 

ここから先は相方が頑張ります。

劇場でお待ちしております。

Photo by: Ryo (Kotora)

連載『9番街レトロ・京極風斗の0か100かで生きてゆく』は第2・4水曜日に更新!

PROFILE
京極風斗(きょうごく・かざと)
1995年8月9日生まれ。大阪府出身。吉本興業所属のお笑いコンビ。2019年4月1日に9番街レトロを結成。神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動中。
コンビのYouTubeチャンネルは毎日更新!
個人チャンネル「京極風斗の道楽ちゃんねる。」ではアートとインテリアを軸に、好きなことを週2(月・木曜)で配信。絵が得意で、自らデザインしたオリジナルグッズをSUZURIで販売している。

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9番街レトロ・京極風斗の連載【0か100かで生きてゆく】#6「店員に偉そうに接する命知らず達へ」

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Photo: Ryo (Kotora) Text & Illustration: Kazato Kyogoku