何でもできるけど、何もできない。できるように見せるのが役者の仕事です
―― 菅田さんは、熱すぎずクールすぎずというスタンスに見えますが、ご自身ではどうですか?
菅田:どうなんでしょう? やるときはやらないと、とは常に思ってます。
―― 昨年公開された『あゝ、荒野』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞されましたよね。おめでとうございます。
菅田:ありがとうございます。全身全霊そそいで良かったなって思います。
―― 俳優業一つとっても、コミカルな役からストイックな役まで、あらゆる役をされてますよね。
菅田:そうですね、ありがたいことに縦横無尽にやれているほうだと思います。そういうふうにやっていこうと思ってやっている部分はありますけど、それって容易なことではないんですよ。あの役もこの役も手を出すっていうのは、ある種、諸刃の剣なので。一つ一つをちゃんとやっていかないと、「何ふざけてんの」ってなっちゃうので。
―― そうやって役と向き合った結果、歌手を演じたら歌は上手いし、ピアノは華麗に弾いちゃうし、ギターも上手いし……、戻りますけど、やっぱり怪物くんですよね。
菅田:いやいやいや……、俳優って“ぽく”見せるのが仕事なんで。『帝一の國』で披露したピアノも、シーンとして成立しているだけ。あれは、帝一にとってピアノがこんなに大きな存在なんだと分かればいいわけで、別にピアノが上手いのを見せるわけではないですから。だから何でもできるようにしていたいけど、何もできないっていうことでもあるんです。
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―― じゃあ、これはできない、ってことを教えてください。
菅田:ジェットコースターとかフリーフォールとか、ああいうグワンと落ちるものってダメです。飛行機も離陸するまでにいかに寝るかが勝負。
―― 起きてたらどうなるんですか?
菅田:え、死にそうになります(笑)。だからバンジーをするロケとか、絶対無理ですね。唯一のNGじゃないですか。
―― このインタビューでそのことが知られたら、逆にオファーきちゃうかもしれないですね。
菅田:いやいや、だからやらないんです。
―― あはは。菅田将暉も人間だった、ということですね。
菅田:当たり前じゃないですか(笑)。
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いい目標にならないと、夢がないし、カッコよくない。

―― 菅田さんの、好きなものにたくさん出会えて、それを全部やれてるって、読者世代の子たちにとっても憧れで。
菅田:たしかに、好きなものに出会えた感じはありますね。まあ、10年ぐらいかかってますけど。
―― 今って誰しも、そういうスタンスで仕事できるのが目標なのかなって。
菅田:時代の流れですかね。ここ数年でそうなった、みたいなところは感じます。
―― 時代的にも追随する人が増えてくると思うんですけど、アイコンとして意識する部分ってあります?
菅田:意識っていうか、僕もいろんな人の真似をしているだけだったりするんで。
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―― 菅田さんが学生の頃、真似してたのってどんな人ですか?
菅田:小栗旬さんとか山田孝之さんの世代。作品で言うと、『クローズZERO』とか学園ものがたくさんあった時代で、僕もM字バングとかしてました。
―― あー、ありましたね。でも今や、菅田さんがそういう存在ですよね。
菅田:自分がアイコンなのかどうかは分からないけど、少なくとも僕が学生の頃は憧れる存在がたくさんいて、その人たちのファッションとか髪型を真似していた。自分がその人たちくらいの年齢になったら、そりゃ、そうありたいなとは思いますね。いい目標にならないと夢がないし、カッコ良くないというか。



―― 好きをうまく仕事につなげていく秘訣があれば、教えてもらえませんか?
菅田:もちろん好きなものが仕事になれば一番幸せですけどね。現実はそうもいかないと思うので、安易なことは言えないですけど……、何だろう、やっぱり愛情の度合いによるんじゃないですかね。
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―― 愛情の度合い?
菅田:僕はどこまでやるか、という。今の時代、本当に頑張ればやりたいことをやれるじゃないですか。今って、高校生でも自分のブランド作ってる人もいるし、歌が好きだったら、自分で録音してネットで世界中に発信できるし、表現したかったらなんぼでもやれる。だったらあとはやるしかないんじゃないの?っていう気がしますけどね。
―― たしかに、本気でやれば何でもできる時代ですね。
菅田:ただ仕事にするってことはまた、好きなものが嫌いになりかける瞬間に、「ヤバい、売ることも考えなきゃ」とかなっちゃうから、それすらも楽しめたらいいですよね。
―― 菅田さんもやっていたことが嫌いになりかけた瞬間はあるんですか?
菅田:嫌いはないですね。このままじゃダメだと思ったことはありますけど。でもそんなときは、人に聞いたり頼ったりすればいいと思いますから。全部一人でやんなくても、ね。

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1993年2月21日生まれ。大阪府出身。『仮面ライダーW』(テレビ朝日)にてデビュー。昨年公開された映画『あゝ、荒野』では第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞のほか、第72回毎日映画コンク-ル、第42回報知映画賞、第30回日刊スポーツ映画大賞、第91回キネマ旬報ベスト・テンなどを受賞。俳優業にとどまらず、ラジオパーソナリティー、音楽活動など多岐にわたり活躍。デビューアルバム『PLAY』が発売中。
Model:Masaki Suda Photos:SASU TEI(W) Styling:Shogo Ito(sitor) Hair&Make-up:AZUMA(M-rep by MONDO-artist) Interview:Naoko Yamamoto Design:attik