ViVi読者さんにオススメのマンガを月に1回ご紹介している、マンガ大好き芸人の吉川きっちょむです。さて、あっという間に4月はもう目の前ですね。ViVi読者の皆さんの中にも、この春から新しい環境に飛び込む方はきっと多いはず! そこで今回は、新生活に挑戦するあなたの背中を押すような「学びになるマンガ」を紹介していきたいと思います!
周りの目が気になる人におすすめ!
『着たい服がある』
【あらすじ】女子大生マミには、誰にも言えない「秘密」があった。それは、「ロリータファッション」に憧れていること。背が高く、一見クールなマミは、家族からも友達からも「かっこいい女性」像を自然と求められ、そのイメージから外れることに臆病になっていた。だが、周りの目を気にせず奇抜すぎるファッションをし続けるバイト先の同僚・小澤くんに感化され、徐々に「本当の自分」を開放していく――。

©常喜寝太郎/講談社
下手な自己啓発セミナーみたいで申し訳ないんですが、今回だけはまっすぐ言わせてください。
「憧れているものはありますか?」
「なりたい自分になれていますか?」
僕はこのマンガを読んだとき、もっともっと自分の好きに生きていいんだ、と泣いてしまいました。
このマンガは、「服」の話にとどまらず、自分のためにもう一歩踏み出したい「あなた」のための物語です。
周りの視線が気になって、つい本心を押し殺してしまった経験はありませんか?
勝手なイメージで固められて、期待されたり失望されたりするのが怖くて、思い通りの行動に移せない人もいるでしょう。
主人公のマミも、周りから求められた自分を演じて「かわいいロリータファッションに身を包みたい」という小さな願いにフタをしてしまいます。そんなマミの前に現れたのが、自分の好きな服を好きなように着る奇抜なファッションの小澤くん。
そして、小澤くんは彼の服装に絡んできた相手に堂々と答えるんです。
何着てどこ行くかは自分で決めます(1巻第2話)
思えば当たり前のことなのですが、周囲の視線を気にして自分に自信が持てなかったマミには衝撃でした。ここからマミは傷つきながらも何度も立ち上がって、一歩ずつ挑戦していきます。
ひどい言葉で心がザワつくような場面もあるんですが、それ以上に「誰かを傷つけないように自分と戦って思い悩む」主人公に、とても勇気づけられます。
そして、このマンガが面白いのは、ただ「好きな自分になる」だけで終わらないところ。
勇気を出して「自分らしく生きる」姿を見せつつも、同時に身近で大切な人の理解や責任、一人だけで生きてるわけじゃない難しさが丁寧に描かれています。
全5巻を通して「なりたい自分になる」ことを一貫して描いていますが、1冊ずつ違う切り口で悩んでいる読者の背中を押してくれる、オススメの作品です!
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愛とか死とかよくわからない…人におすすめ!
『ひとりでしにたい』
【あらすじ】いわゆるひとつのバリバリのキャリアウーマンで、優雅な独身生活、余裕の老後を謳歌していたかに見えた伯母がまさかの孤独死。黒いシミのような状態で発見された。その死にざまに衝撃を受けた山口鳴海(35歳・学芸員・独身)の人生は婚活から一転終活へ。死ぬのは怖い。だけど人は必ず死ぬ。ならば誰より堂々と、私は一人で死んでやる。一人でよりよく死ぬためには、よりよく生きるしかない。愛と死をひたむきに見つめるフォービューティフルヒューマンライフストーリーの決定版誕生!

©︎カレー沢薫/講談社
もしかして「孤独死」は、自分には関係ないって思っていませんか?
とりあえず結婚しとけば将来安心って考えている人は要注意!
このマンガは、「孤独死」を避けるためだけに婚活を始めたところで、うまくいくわけがない、と30代半ばの主人公の生き様を通して現実をピシャリと叩きつけてきます。
ここで一つだけ必ず当たる予言をしましょう。
あなたも僕もいつか必ず死にます。
「生まれたら必ず死ぬ」からこそ、よりよい死に方から逆算して、どうやって生きるべきかが見えてくるというもの。
知らなかったでは済まされないことを猫ちゃんや濃いめの顔芸で楽しく学べて、とってもためになる作品です。
なにより、自分が死ぬ前に考えなきゃいけないようなことについて、主人公が一つ一つ順を追って体当たりで解決案を出してくれる親切設計になっているので分かりやすい!
そして、暗いテーマかと思ったら、人生を楽しむために意外と前向きなのもオススメポイント。
恋愛要素も一応あるんですが、奇妙なすれ違いが起き続ける姿に笑えます。
職場のイケメン後輩が間違ったアプローチで主人公に関わり続けた結果、かえって主人公の「ひとりで死ぬこと」の解像度だけがグングン上がっていくのです。
そもそも高齢化社会とはいえ、ちゃんと高齢になって死ねるとは限りませんよね。
これを怖いと感じるか、早めに知れてよかったと思うかはあなた次第。
自分には関係ないかなという人にこそ、手遅れになる前に一度読んでいただきたい!
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“生きづらさ”を感じている人におすすめ!
『リエゾン ーこどものこころ診療所ー』
【あらすじ】遠野志保は小児科の研修医。遅刻や忘れ物の常習犯だ。見かねた研修担当医から、系列の小さなクリニックに“飛ばされる”。そこで志保を待ち受けていたのは風変わりな児童精神科医・佐山だった。志保は唐突にある診断を下されて……。大人も子供も生きづらさを抱える現代——。悩める親子に向き合う“児童精神科医“を描く、新たな医療漫画がスタート!!

©︎ヨンチャン/講談社
周りの人みたいに上手く生きられず、どこか生きづらさを感じている人、そういう人に手を差し伸べたい人に読んでほしいマンガです。
時間がないときに限って細かいことが気になって遅刻しかけたり、忘れ物したり、いくら気をつけてもミスがあったり、なんてことありませんか?
これはあくまで一例ですが、あなた自身じゃなくても、少し見渡せば社会にうまくフィットできていない身近な人がいるかもしれません。
性格に問題がなくても歯止めがきかなかったり、致命的なミスをする主人公を、児童精神科医の佐山先生は「凸凹(でこぼこ)」と呼び、優しく「発達障害」だと語りかけます。
「発達障害」とは、生まれつきの脳の特性で、脳の発達が通常と違うという障害で、得意・不得意の凸凹がとても大きく、社会生活に支障をきたすことがあります。
このマンガによると、日本では発達障害と診断されている人は48万人いるとされ、子どもの10人に1人、クラスで3~4人は何かしらの障害を抱えている可能性があるそうです。
エジソンやビル・ゲイツなども発達障害だったのではないかと言われているとか。
話の中で描かれているのはそれぞれ全く違う家庭環境の子どもたちですが、どんな状況でも必死に生きて困難に立ち向かっています。
主人公や佐山先生が子どもと親に寄り添い、思いやりをもって解決策を考える姿に胸が震えます。上手くいったとき、パッと輝くその笑顔に心を打たれて思わず涙が溢れてきます。
そして、自身も発達障害であると知った主人公が、研修を通して子どもの心の痛みに向き合うことで、自分自身に深く向き合っていく話でもあります。
このマンガを読むことで自分のことを深く知って、普段意識していなかった自分との共通点に気づき、他人の凸凹への理解も深まって視野が広がるのではないでしょうか。
もしあなたが発達障害ではなくとも、日常になにか生きづらさを感じているのなら、このマンガはきっと心の支えになるはず。
不安定な新生活のお供にぜひ読んでみてください!
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今回は3作品紹介しましたが、マンガはエンタメとして楽しいだけじゃなくて実は学びに溢れています! 学びとは、まずは「知ること」です。知ればいつもの景色が違って見えるはず!
これからのあなたの新生活が明るいものになることを祈っています。
素敵なマンガライフをお過ごしください!
Text: Kittyom Yoshikawa Photo: Lana Shimada