累計1400万部超えのCLAMPの伝説的コミック『xxxHOLiC』が、蜷川実花監督の手によって遂に映画化! その公開を記念して、蜷川監督とキャストの吉岡里帆さん、玉城ティナさんの3人による豪華トークが実現しました。 作品の持つ深いメッセージ、そして同じく映画に出演している我らが国宝級イケメン・松村北斗さんの撮影秘話も教えていただきました!
2人の演じたキャラはビジュアルの強さが圧倒的です

ViVi:伝説のコミックを蜷川実花監督が実写化するということで大きな話題を呼んでいます。ひまわりを演じた玉城さん、女郎蜘蛛を演じた吉岡さんの印象を教えてください!
蜷川監督(以下、蜷川) ひまわりのキャスティングは本当に難しかった。ひまわりの持ついい意味での暗さ、内側に向かっていく力……。そういう子が明るく振る舞っている、という説明を、ティナに演じてもらえたことで語らなくて済みました。
あと、あのツインテールが似合う人、ということでもひまわり役はハードルが高かったんですけど、本当に可愛かった。やっぱりビジュアルの強さは圧倒的でしたね。
玉城ティナ(以下、玉城) オファーをいただいたときは、『xxxHOLiC』の世界観やイメージが蜷川監督とピッタリ合っていたので、純粋に「どういう作品になるんだろう?」というワクワク感がありました。
ひまわりの癒し的なところ、心の奥に潜む闇……、その陰と陽のバランスをどう演じようと、最初に原作を読んだときから悩んだんですが、監督からは「そのままでベースは大丈夫」とのことで。だからあとは、シーンごとに「もうちょっとキャピッとしてもらえるかな」とか「そこはちょっとおさえて」とか、コミュニケーションをとりながら演じさせていただきました。


©2022 映画「ホリック」製作委員会 ©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社
蜷川 里帆ちゃんに演じてもらった女郎蜘蛛も、すごく難しい役だったと思います。後半は女郎蜘蛛が物語を引っ張っていくので、女郎蜘蛛が魅力的じゃないとこの映画は終わる。そういう意味でもキャスティングが難しいと思っていたんですけど、ある日突然、里帆ちゃんが演じたら面白いかもしれない!と思いついたんです。
吉岡里帆(以下、吉岡) いや、びっくりしました! 最初はものすごくファンの方が多い漫画が原作ということもありプレッシャーを感じたんですけど、蜷川監督と『xxxHOLiC』との世界観が掛け算になってすごく美しい映像が生まれるんだろうなあとワクワクして。だから是非、やらせていただきたいなと思いました。
蜷川 里帆ちゃんにとってもチャレンジな役だったと思うし、衣装も大胆なものだったけど、「これは着られません」というのも1つもなくて。「女郎蜘蛛をやるんだ!」という意気込みで来てくれて、なんて男前で気持ちのいい人なんだろう!って。
Page 2

ViVi:この作品は、「願いを叶える対価として自分の一番大切なものを差し出す」という究極のメッセージが投げかけられています。皆さんが願いを叶えるために、対価として支払う“大切なもの”とは何でしょうか?
蜷川 今回って、本当に人のつながりを感じた現場だったんですね。緊急事態宣言が明けてすぐの撮影だったこともあって、世の中がすごく混乱した状態だったんですけど、そんな中で一丸となって進めた。スタッフ、キャスト全員……。普段もそうなんですけど、一人で作っているんじゃない、ということを心の底から思えたんです。
私は人数が多い世代に生まれたこともあって、わりと「私が私が」と思いながら生きてきて。もちろん、何でも一人でできるわけではないことはわかっていたんですけど、より「“私たち”という主語って素敵だな」と思った。だからそれが今は、私にとっての対価となり得る“大切なもの”ですね。
吉岡 私は、コロナでのステイホームを経験したこともあって、自由な時間というのは対価として支払ってもいいな、と思えました。あの期間、撮影が止まって何もしないフリーな時間ができて。それまで休みも大事だと思っていたけど、やはり物作りをしたいし、映画に参加したい!という気持ちがどんどん膨らんでいって。その分、自由な時間は失われるけれど、それは対価として払ってもいいとあらためて思いましたね。
玉城 撮影中は本当に、私が支払えるものであれば何でも差し出す、という気持ちでいました。作品中の侑子さんのセリフに、「人の思いだけは対価を求めない」というのがあるんですけど、私もある意味、撮影のときはそんな状態になっているというか。本当に損得というものを考えずに現場にいるし、相手からの対価も求めていないし。そもそも、支払っているつもりもないかもしれません。
Page 3
今は“自分にとっての幸せ”がつかみにくい時代かも

ViVi:現代って情報も物も、何でもすぐに手に入る時代。その対価として私たちは何を払っていると思われますか?
蜷川 え、難しい(笑)。でもたしかに、情報との付き合い方ってすごく難しいなと思っていて。スピードがあるし、物量も年々すごいことになっているし。その中で「自分が何を信じるか」という軸って持ちづらいですよね。
吉岡 とにかく選択肢が多いですもんね。
蜷川 そうそう、便利な分、選択肢も多すぎて「自分にとっての幸せって何だろう?」ということがことが掴みづらい。やっぱり現代はそれが対価として支払われていると思うので、もっとみんなが「自分にとって」という主語で考えられるようになったらいいな、と思って作っている映画でもあるんです。だから見た人の意識がそこに向かってくれたらいいな、と思っているんですけど。
吉岡 “選択の多さ”でいうと、自分の根本的な“好き”を見失いそうになる、ということは誰にも起こりやすいんじゃないかなと思います。私は、嫌いなものより好きなものを見失わないことがすごく大事だと日々感じているので、自分にとって誰が大事かとか、どういう言葉を大事にして生きていきたいのかとか、そういうことはいつも意識するようにしていて。
本当に今は、音楽だって映画だってSNSだって選べる量が多すぎますから。これは現代の人にとっての大きな壁でもあると思うから、反対にもっとピュアに、自分の“好き”を大事にしてあげる時間を作りたい、と思っています。誰かに話すために見るのではなく、自分が見たいから見る、みたいな……。
蜷川 たしかに今って、「これは嫌い」は多いもんね。
吉岡 そうなんですよね、「嫌い」の発信は簡単かもしれないけど、「好き」を曲げないというのは難しいのかなって思います。だからこそ大事にしたいですよね。
蜷川 好きを曲げなさすぎな女がここにいますけど (笑)。見てのとおり、この映画の世界観も 「好き」が凝縮していますし(笑)。
玉城 私は、この仕事は失うと同時に補われるみたいなところがあるので、ただ失っていくことを恐れる、ということもあまりしてないんですよね。
何だろう、しいて失っているものがあるとすれば、イメージですかね。受け取る人によって私のイメージって違うと思うし、演じた役に対してもいろんな感想を持たれると思うので。でも私はそんな何通りものイメージがあることも興味深いし面白いなと思うので、わりと何を思ってもらってもいいというか。イメージは尽きないし、消費されないのかなって思うので、それは対価として支払い続けているのかもしれないです、はい(笑)。
Page 4
神木松村コンビはいつもイチャイチャしていました(笑)

ViVi:今作には松村北斗さんも出演されていますが、松村さんは『ViVi』の国宝級イケメンランキングで2連覇を果たし、殿堂入りしているんです。撮影中のとっておきのキュンエピソードがあれば教えていただけますか?
蜷川 ええ~、何だろう。すごくほっこりしているんですよ。気がつくとモニターの後ろにいて、ほえ~って画面を見ていて(笑)。「あ、またいた!」みたいな感じなのに、カメラ前に行くとスイッチが入ってガラッと変わる、というのがキュンですかね。写真を撮らせてもらったときも、「え、さっきまでほわほわだったのに、突然こんな顔するんだ!」みたいな。そのスイッチの入る瞬間が面白いというか、ギャップにいつも「うえぃ!」って驚きます(笑)。
吉岡 私は役柄的に、松村さん演じる百目鬼(どうめき)を攻撃することばかりだったんですよ。だけど松村さんはいつも、「全然気にしないでください」と言ってくださったので、こちら側も思いっきりいけて。そこはジェントルマンだなあと思いましたね。やっぱりめっちゃ気を遣うじゃないですか。「初めまして」でいきなり頭をつかんで投げる、とか(笑)。そこを察してくださったのは本当にありがたかったです。
玉城 私は松村さんと一緒のシーンが多くて。撮影前は、すごくクールな方なのかなと勝手に思っていたんですけど、良い意味で崩れました(笑)。演じている百目鬼のキャラとのギャップも大きくて、いい意味で天然というか。でも多分、天然とかは言われたくない方なのかなあ、とも思うんですけど。
蜷川 あと、謙虚で真面目。
玉城 そういえば最初に松村さんと神木さんと3人で、それぞれのあだ名を決めようってなって。私は「ティー」、松村さんは「まっさん」になったんです。多分恥ずかしかったと思うんですけど、松村さんは一生懸命「ティー、あのさ」とか声をかけてくれて。でも私は全然呼べなかったという心残りが……。だから次にご一緒する機会があったら「まっさん」と呼ばせていただきたいと思っています。
蜷川 でも何といっても、松村くんといえばとにかくいっつも神木くんとイチャイチャしていた。
玉城 ずっと2人でイチャイチャしていて、玉城ポツン……みたいな。でも多分、2人とも中身のある会話はほとんどしてないと思う(笑)。
吉岡 2人のイチャイチャを見て、みんながニヤニヤする、というシーンがけっこうありましたよね(笑)。
蜷川 うん、可愛かった~♡ それもあって、現場が楽しかったのかな。本当に仲がよくて、いつも触れ合っていないとダメなのかなってぐらい近くにいて。あんな瞬間に立ち会えて、みんなメロメロだったと思う。本番直前までくだらないこと言って笑ったり、トランプしたり。その仲の良い感じが作品中でも出ていると思います。
Page 5

ViVi:それは楽しみです! では最後に蜷川監督から、ViVi読者に向けての映画の見どころを教えていただけますでしょうか。
蜷川 私は劇中の、「それぞれの選択の先に変わっていく未来がある」というセリフが好きで。ViVi読者世代ってまだ若いから、今と未来がつながっているとは思えないことも多いと思うんです。でも、大きな願いを掲げなくても、毎日毎日をどういうふうに過ごすかで、すごくいろんなことって変えられるもの。
この映画が、そんなふうに能動的に生きるきっかけになってくれたらいいな、というのが一番のメッセージとしてあるのと……、あとはもう、どこを見ても楽しいから! 絶対に楽しんでもらえると思います!!
吉岡 祭りですもんね(笑)。
蜷川 そう。男性陣は素敵だし、女性陣は圧倒的に美しいしカッコいいので、目でもすごく楽しんでもらえる一方で、共感できるところもたくさんあると思うので、心でも楽しんでもらえるはず。メッセージをしっかり受け取ってもらえるよう、あらゆる年代に向けて作った映画なので、是非若い方たちにもたくさん見ていただきたいなと思います!

『ホリック xxxHOLiC』 人の心の闇に寄り憑くアヤカシが見える高校生・四月一日(神木隆之介)。その能力を捨て普通の生活を送りたいと願っていたある日、不思議な「ミセ」にたどり着き、侑子(柴咲コウ)という女性と出会う。願いを叶える対価として一番大切なものを差し出すよう言われた四月一日は、同級生の百目鬼(松村北斗)、ひまわり(玉城ティナ)と出会い、“大切なもの”を探し始める。しかし、そんな四月一日にアヤカシを操る女郎蜘蛛(吉岡里帆)の魔の手が迫る……。4/29より全国公開。
Photos:Tohru Daimon Interview&Text:Naoko Yamamoto Hair&Make-up:(for Mika Ninagawa)Noboru Tomizawa(CUBE), (for Riho Yoshioka)Sawako Yuri(SHISEIDO),(for Tina Tamashiro)Takako Imai Styling:(for Mika Ninagawa)Kumi Saito, (for Riho Yoshioka)Hiromi Chiba,(for Tina Tamashiro)Ruri Matsui