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中村倫也がエゴサをしない理由「評価なんて人の数だけあるもの。判断基準は自分が持つべき」

2022.05.01

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好きを仕事にできたらいいけど、好きを貫くって大変! そんな理想と現実の間で奮闘する2人のアニメ監督を描いた映画『ハケンアニメ!』が520(金)より全国公開します。天才でワガママで、でも誰よりも好きに誠実なアニメ監督・王子千晴を演じている中村倫也さんにインタビュー。前編では作品について詳しく伺いましたが、後編は、中村さんの独特の仕事観についてお届けします!

中堅と言われる年齢になった今は、瞳の気持ちも王子も気持ちも分かる

――この作品は、カリスマアニメ監督と新人アニメ監督との対決を軸に描かれています。新人監督の斎藤瞳(吉岡里帆)は、中村さん演じるカリスマ・王子千晴に「絶対勝つ!」と挑んでいますが、自身が新人の頃を振り返るといかがですか? 瞳のような闘争心を持たれていましたか?

中村 たしかに新人の頃は「食ってやる」みたいな時期もありましたね。でも何の成果も得られず()。だから瞳の気持ちは分かるし、中堅と言われる年齢になった今は、王子の気持ちも分かります。もちろん僕は王子と違って天才ではないけど、ものを生み出すプレッシャーは同じだと思うんですよね。

――当時の自分に、今アドバイスをするなら何と言ってあげますか?

中村 作品中で、王子が瞳にアドバイスをするシーンがありますが、それは人を動かす監督という立場からのアドバイス。役者はあくまで作品の中のひとパーツなので、そこはちょっと重ねられないんですよね。

――中村さんは新人の頃、先輩にアドバイスを求めたりしていましたか?

中村 飲み屋で先輩たちにいろんな話を聞いてはいましたね。今は年下の役者さんも増えて、僕のほうが相談されることも増えてきたんですけど、難しいですよね、言葉って。良かれと思って言ったことが邪魔になってしまうかもしれないし、そそもそも自分の感性が正解とも限らないし。きっと僕が今そう感じているように、先輩たちも難しいと感じていたと思うんです。だから本当にしつこく聞かれないと、何か言う気にはなれないんですよね。だいたいは「大丈夫なんじゃない?」と言っています()

――王子のように、プレッシャーから逃げたいと思ったことはありますか?

中村 逃げ出したかったのは、20歳ぐらいの頃に蜷川幸雄さんの舞台に出演して毎日ボコスカにやられていたときですね()。当時は若かったので、本当に現場に行きたくなかったですし、「早く終わってくれ」と思ってました。あと、最近はないですけど、寝坊したとき()。もう逃げたいと言うか、消えたくなりますね。まあ、行くしかないし、謝るしかないんですけど。

――主人公の瞳は子供の頃に見たアニメが忘れられなくてアニメ監督を目指すわけですが、中村さんも俳優になるうえで影響を受けた作品はありますか?

中村 小さい頃見ていて、今でも見ている作品というと映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』と『セブン』がパッと思いつくぐらいです。アニメだとジブリ作品とか『ガンダム』シリーズとかかなあ。ただ、それらを見て俳優になりたいと思ったわけではないですね。

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―― 好きを貫く前に、自分が何を好きなのかまだ見つけられていない人もたくさんいると思うのですが、中村さんは何がきっかけで俳優になりたいと思うようになったのですか?

中村 僕、俳優になりたいと思ったことはないんですよね。ずっとやっていたサッカーをやめて、暇で何もなかったときに、ある出会いがあって「興味があったら俳優養成所に来てみない?」と誘われたんです。で、俳優になったらモテるかなと思ったのと、やることもなかったので通い出したら、だんだんと「意外と面白いかもな」と思うようになった。
でもそのときはまだ、ちゃんと役者を目指そうとか思っていたわけではなかったんです。だけどその養成所を卒業した後、ある作品のオーディションを受けたら落ちて。そしたら落とされたことが妙に悔しくて悔しくて。それで「次は絶対受かってやる!」と意気込んでのぞんだら、デビュー作になる映画への出演が決まったというわけなんです。

――やっているうちに好きになっていった、という感じなんですね。

中村 だから明確に「俳優になりたい」と思った時期もなくて。ただ何となく悔しかったのと、あと、サッカーをやめた挫折とか後悔の痛みを知っていたから、次に何か始めるきっかけが来たときに簡単に手放しちゃいけない、ということだけは感じていて。そういう衝動でしがみついてきたら、だんだん好きになって、今日まで来た、という感じです。意地と執念、と言ったらいいのかな。だからサッカーで挫折してなかったら、俳優にもなっていなかったかもしれないですね。変な感覚なんですけど。

――衝動で続けてきたところから、明確に「俳優としてやっていくんだ」と意識したのはいつ頃だったんですか?

中村 ちゃんと腹が決まったのは25歳ぐらいのときですね。それこそ、ViVi世代の頃ですかね?() 演じることが楽しいな、と思っていたんだけど、それで食っていけるわけでもない時期が続いて。「どうするんだよ、お前」って。そういう意味ではやめるタイミングなんていくらでもあったし、実際、何回も考えましたね。

全部を手に入れることは不可能。評価よりみんなで作り上げたものを信じたい

―― 一方で、評価を得たら得たで立ちはだかってくる壁もあると思います。とくに今はSNSでいろんなことを言われてしまう時代。何が正解か見つけにくくなっていますが、中村さんは「いい仕事ができた」と評価する自分の基準のようなものは持たれていますか?

中村 けっこう明確にあって。まず、現場が楽しいことと、作品として面白いか、ということが僕にとっては一番重要なんです。そのうえでクチコミや興行収入も伴えばいいな、とは思いますけど、軸は最初の2つ。だから僕、エゴサーチもしないんです。もちろん気になりますけど、評価なんて人の数だけありますからね。全部が手に入るわけじゃないから判断基準は自分が持つべき。エゴサして落ち込んでいる人を見ると、不思議でたまらないんですよ。

――エゴサってやらないほうがいいと分かっていても、多くの人はどうしてもやってしまうんですよね……

中村 その点僕は、演劇をやっていたことが影響していると思います。演劇って毎日いろんなお客さんが来て、毎日違うことを言われるわけですよ。あのシーンがどうこうとか、あのセリフはこう言ったほうが良かったとか。そこに左右されていたら、キリがない。それよりも、長い期間みんなで稽古して作り上げてきたものを信じないと。それが暗黙のルールとしてあったので、小綺麗に評価を得ようとしなくなったんだと思います。

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――今、抱えている悩みとか葛藤していることってありますか?

中村 今、すごい毎日楽しいんですよ。だって本当にあの頃に比べたら……。仕事もいただけて、飯も食えて、暖房と冷房を入れられる家があって、いいことしかないです()
もちろん、先のことは分かんないですけどね。それこそ需要と直結する仕事なので、需要がなくなったらそれまでなんでしょうけど。でもそういう意味では、あんまり先のことを考えすぎなくなったかもしれない。
目の前のやるべきこととと、目の前の不安に、都度都度向き合っていくだけになったというか。若い頃みたいに漠然と全てを敵視ししたり、漠然と先のこと考えて勝手に落ち込んで病んでいったりとか、そういうのはどんどんなくなってきていますね。年々、考え方がシンプルになってきています。悩みってこんがらがるからややこしいのであって、早めに紐をほどくことが一番。そのほどき方を、経験とともに学んできた感じはあって、どんどんほどき上手くなっているのかなあという気はしますね。

『ハケンアニメ!』
直木賞作家・辻村深月の胸熱お仕事小説が遂に映像化! 連続アニメでの監督デビューが決まった斉藤瞳(吉岡里帆)だが、気合いが空回りして思うように仕事が進まない。そんな瞳のライバルは、天才アニメ監督・王子千晴(中村倫也)。そして瞳をイラ立たせるビジネスライクなプロデューサー・行城理(柄本佑)、王子に振り回される優秀なプロデューサー・有科香屋子(尾野真千子)。皆がそれぞれの熱い思いをぶつけながら、ハケン=覇権を争う戦いを繰り広げる! 520より全国公開。

中村倫也

19861224日生まれ。東京都出身。2005年、俳優デビュー。映画『水曜日が消えた』、ドラマ『珈琲いかがでしょう』など主演作多数。現在、「中村倫也のやんごとなき雑炊」を連載中。今年は「仮面ライダーBLACKSUN」(秋配信)、主演ミュージカル『ルートヴィヒ~Veethove The Piano~』などが控えている。

 前編はこちら

中村倫也、初共演の吉岡里帆は「世間が思っている以上に執念がある」

Photos:Tohru Daimon
HairMake:Emiy
Styling:Arata Kobayashi
Interview&Text:Naoko Yamamoto

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