神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動している芸人「9番街レトロ」の京極風斗(きょうごく・かざと)さんは、極端なほどに“0か100か”で生きている。そんな京極さんが見ている未来って、どんな感じ? 頭の中をちらっと見せてもらったら、ちょっと怖いホラーな話になっちゃいました。
9番街レトロ・京極風斗
連載【0か100かで生きてゆく #19】
ー 怖い未来が近くまで来てる。ー

Illustration: Kazato Kyogoku
「何言ってんだコイツ」側
今回は未来の話をします。
ジャンルはホラーです。
YouTubeで自分のチャンネルを持ち、それが世界中に公開されていることが当たり前のこの世界が、ふと怖いなと思う瞬間があります。
たった数百年前まで刀で斬り合っていたことを考えると怖くないですか?
技術の進化、怖くないですか?
例えば織田信長は、世界中が映像で繋がる未来を予想できたでしょうか。
大坂、江戸間を2時間半で移動する未来を予想できたでしょうか。
自分の子孫が、氷の上を滑ることで生計を立てていることを予想できたでしょうか。
きっと、現代から安土桃山まで伺って直接伝えたって信じないでしょう。
織田信長に「何言ってんだコイツ」みたいな顔されたら嫌ですね。
スベり打ち首なんて恥辱も恥辱ですよ。
とにかく、それぐらい、世の中の進化っていうのは我々の想像を優に超えるということです。
いつか我々も「何言ってんだコイツ」側に回ることになるんです。
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「空間の壁」が無い未来
みなさんは「メタバース」ってご存じですか?
簡単に言うと仮想空間なんですが、同じ仮想空間でも「VR」の方はだいぶ定着しましたよね。それの進化系です。
仮想空間にアバターを作り、その世界で他のアバターと経済活動ができます。
ちょっと難しいですかね。
ごめんよ説明が下手で。
そっちも謝れよ。
「受け取るのが下手でごめんね」って。
例えば会社でやっていた会議がコロナの影響でZoomに変わりましたよね。その方法も最近ではだいぶ定着したと思います。
ウイルスこそ憎いですが、正直その習慣は有り難い部分があるのではないでしょうか。通勤がないほど楽なことはないですからね。
では、そのZoomでやっていた会議が、アバターを介して、まるで直接会ってやりとりしているかのようにできたら、効率が上がるような気がしませんか。
「これ」とか「あれ」みたいな、同じ空間に居ないと伝わりづらい言葉ってありますよね。
その「空間の壁」が無くなる未来が近くまで来ているのかもしれません。
仕事を例に出しましたが、メタバースのクオリティが上がると、それ以外の用途も出てきます。
デートだったり、同窓会だったり、結婚式だったり。
倫理の部分さえクリアすれば、ほぼ全てのことが、メタバースでできてしまうようになります。
ここまでは全然あり得そうな話。
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どっちが仮想世界?
ここからは全部僕の妄想です。
「教室にテロリストが入ってきたらどうやって撃退するか」ばかり考えていた頃から何も成長していない、中二脳の僕が捻り出した考えです。
なので、話半分で聞いて頂きたいのですが、メタバースが更に簡単なものになると、アバターとして参加する側から、自分で仮想空間そのものを創造するようになると思います。
まるで自分のYouTubeチャンネルを立ち上げるぐらいの感覚で。
その世界が魅力的なら、そこに住む人間が現れます。それが広がり、村になり、街になり、国になります。
その世界でしか使えない通貨や、その世界の言語なんかも生まれるかもしれません。
1人の人間が、ある世界の神になるのです。
仮想空間に、人の数だけユートピアが生まれるのです。
アバターでの活動ですから、容姿だったり、運動能力だったりのコンプレックスも関係ありません。
その代わりに、もっと深い部分での差別が生まれるのかもしれません。
互いにメタバース上でしか知らない人と結婚なんかもあり得るかもしれません。
その2人が育てる子供は、メタバース内にしか存在しない、仮想人間なのかもしれません。
仮想人間同士が結婚して、また仮想人間が生まれて、そうやってシンギュラリティが起こるのかもしれません。
そうなると現実世界はどうなるんでしょうね。
現実世界は、仮想空間で成功した人間だけが楽しめるものになるのではないでしょうか。
メタバースが現実世界になり、今住んでいるこの世界は神同士の交流場に。
あー怖い怖い。
僕自身も突飛なことを言っている自覚はあります。
でも、人が想像し得ることは全て現実に起こり得るなんて話もありますからね。
実際、織田信長が「何言ってんだコイツ」と思うようなことが現実に起こっています。
想定しておいて損はないのでは。
スベり打ち首だけは勘弁してくださいね。

photo by: Ryo (Kotora)
連載『9番街レトロ・京極風斗の0か100かで生きてゆく』は第2・4水曜日に更新!
1995年8月9日生まれ。大阪府出身。吉本興業所属のお笑いコンビ。2019年4月1日に9番街レトロを結成。神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動中。
コンビのYouTubeチャンネルは毎日更新!
個人チャンネル「京極風斗の道楽ちゃんねる。」ではアートとインテリアを軸に、好きなことを週2(月・木曜)配信。
そのほか、絵が得意で自らデザインしたオリジナルグッズをSUZURIで販売している。
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Photo: Ryo (Kotora) Text & Illustration: Kazato Kyogoku