神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動している芸人「9番街レトロ」の京極風斗(きょうごく・かざと)さんは、極端なほどに“0か100か”で生きている。そんな京極さんが学生時代に経験したことで、大人になった今、役立っていると思えることは? 勉強、イジメ、失敗……日々の問題との向き合い方や傷の治し方について、魂を込めてお届けします。
9番街レトロ・京極風斗
連載【0か100かで生きてゆく #21】
ー 中卒が学校で学んだこと。 ー

Illustration: Kazato Kyogoku
魂の授業
教育とは、学校で習ったすべてのことを忘れてしまった後に、自分の中に残るものをいう
アインシュタインの言葉です。
実際はたぶん英語かドイツ語で言ってるのでこのままではないのですが、大方こんな感じです。
いろんな解釈がありますが、「人に教えられたことの中でも、特に自分でしっかりと噛み砕いたものが記憶に残る」みたいなことだと思います。
この言葉を体現した男がここにいます。
九九が言えません。
漢字が書けません。
徳川は家康しか知りません。
ここに綴る文字はまさに、学校教育で教えられたことをすべて忘れた男。もとい、そもそもしっかりと聞いてこなかった男の言葉。
中卒による魂の授業です。
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■ 感情で喋る奴の話は聞かなくていい。
怒る時に声が大きい先生いましたよね。そういう人は言葉で伝える気がありません。
内容が薄いから声量で圧するしかないのです。
感情で喋っていますので、ダブルスタンダードは当たり前、場合によってはトリプルスタンダードまであり得ます。
そうなるともはや何も喋っていないのと同じですからね。
一切聞く必要はありません。
しかし、そういう人の扱いに慣れておくと将来役に立ちます。
■ 甲斐のないことは続かない。
クラス替えのように、環境が変わり、コミュニティが一新されると、初めの1〜2ヵ月間、僕は必ず嫌われていました。これはナルシストの宿命です。
中学生の頃、受け手によってはイジメと取ってもおかしくないようなことをされた時期がありましたが、とにかく勉強が嫌いな僕はその期間を「ボーナスタイム」と呼び、学校を休む大義名分にしていました。
ズル休みじゃないですよ。本当にクラス中の女子に無視されてましたからね。
その時一緒に休んでくれた小林くんは今でも親友です。
小林くんの部屋にあった『NARUTO-ナルト-』の最新巻までを読み終え、プレステ2の『喧嘩番長』を全クリした後、ワックスベタベタで学校に戻りました。
喧嘩番長の影響か、休む前よりイキリ度合いを上げて戻って来た僕を見たクラスメイトは、さぞガッカリしたと思います。
そこからは何の悪口も言われませんでした。
イジメる側からしても、イジメ甲斐のない奴を相手にしていても意味がないんですね。
ここで、自分を持ち続けることの大切さを学んだ気がします。
■ 学校は行った方がいい。
こういう話をしていると、「学校なんて行かなくていい」なんて極論に辿り着きがちですが、全くそんなことはありません。行くに越したことはないのです。
「学校は社会に出た時の練習」なんて表現をよく見ます。もちろん間違ってはいませんが、これって「社会で転けない方法を学ぶ」というニュアンスだと思います。
というよりは、「社会で転けた時の、傷の治し方を学ぶ場所」が学校だというのが、僕の解釈です。
学校で何を学ぼうが、社会に出てからじゃないと気付けなかった失敗なんていくらでもあります。
100%と言って間違いないほど、絶対に何かを失敗します。
その時に負った傷との向き合い方や、治し方を、学校で学ぶべきなのです。
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例えば、学校の花瓶を割った時、すぐに謝れば軽く怒られるだけで済んだものを、隠そうとするとかなりややこしい問題に発展しますよね。
社会に出た時に割る花瓶は数千万円だったりします。普通に事件です。
が、ここでも最小限の傷に抑える方法は同じで「すぐに謝る」です。
隠そうもんなら裁判です。
もう治りようのない傷になるかもしれません。
そういったことを学ぶ為に、学校という訓練所があるんだと思います。
そして、それがアインシュタインの言う「教育」なんだと思います。
僕が学校で学んだことはまだまだありますが、伝えるのはここまでにします。
人に何かを伝える時、一から十まで説明するのは一見優しいようでその人の為にはなってないんですね。自分で考えさせるための余白が必要です。
もしこの連載の読者の中に、今、学校に行けないでいる人がいるなら、それを確かめる為に一度学校へ赴いてみては。
行ってダメならまた家にいればいい。
自分の頭で考えて導き出した答えなら、それもまた学校で学べたことです。
最後に。綱吉ぐらいは言えた方がいいですよ。大人になってから恥かきます。

photo by: Ryo (Kotora)
連載『9番街レトロ・京極風斗の0か100かで生きてゆく』は第2・4水曜日に更新!
1995年8月9日生まれ。大阪府出身。吉本興業所属のお笑いコンビ。2019年4月1日に9番街レトロを結成。神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動中。
コンビのYouTubeチャンネルは毎日更新!
個人チャンネル「京極風斗の道楽ちゃんねる。」ではアートとインテリアを軸に、好きなことを週2(月・木曜)配信。
そのほか、絵が得意で自らデザインしたオリジナルグッズをSUZURIで販売している。
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Photo: Ryo (Kotora) Text & Illustration: Kazato Kyogoku