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自作の人工言語で、小説と映画を創作しちゃう?【連載リベンジ東大生】

2019.11.13

みなさんは、東大生にどんなイメージを持っていますか? クイズ番組などで人気者が爆誕している一方で、超変人? ダサい? コミュ障? など、マイナスなイメージが広がっているかも……。現役東大生の永井志帆が“マイナスなイメージを持たれがちな“東大生”像にリベンジを果たすべく、気になる学生を紹介していくこの連載! 今回は、自作の言語で壮大なファンタジーを書き続け、映画まで作ってしまったという中野智宏(なかの ともひろ) さんに話を聞いてきました。そもそも自分で言語を作るってシンプルにすごすぎない!?

自分で言語を作るということ

――普段はどんなことを勉強しているんですか?

歴史言語学を勉強しています。歴史言語学というのはざっくりいうと「なぜ、どのように言語が変化してきたか」を勉強する学問で、特にラテン語やサンスクリット語などの印欧古典語やケルト語が好きですね。

――なぜ言語に興味を持つようになったんですか?

中学校の時に京都に修学旅行に行ったのがきっかけです。お寺の前にあった、謎の言語の札がかっこよくて気になって。それがサンスクリット語だということを知って、すぐに図書館で本を借りて勉強し始めました。自作の言語を作り出したのは高校2年生くらいでしたが、その前から言語の本は読み漁っていました。

――言語を作っている人に初めて会いました。どのように作っているんですか?

人工言語の作り方の本はそもそも世界に2冊くらいしかないんです。僕は海外ドラマの『ゲーム・オブ・スローンズ』にも登場する言語を製作している、有名な言語学者が書いている教科書のようなものを特に読んでいます。あとはネットで文献を探したりして学んでいます。もちろん大学で学んでいる言語の派生なども参考にしています。

――現実でもたくさんの言語を話せますか?

いえいえ。話せるのは日本語、英語、フランス語が少しという感じです。読むだけならサンスクリット語も。意外と身近なところにもサンスクリット語は存在していて、例えばシンガポール。「シンハ(सिंह siṃha)」というのが「ライオン」の意味なので、サンスクリット語にすると「シンガポール」は「ライオンの町」なんです。マーライオンが象徴になるのもわかりますよね。

――おもしろい……! 言語を覚えるコツってありますか?

好きなコンテンツを通して毎日アクセスすることです。僕はマイケル・ジャクソンのファンなんですが、歌詞に出てきた単語であれば絶対忘れません! 特に英語はコンテンツが豊富なので、好きなことを通して毎日触れているうちに覚えられると思いますよ。

――その自作の人工言語を使って小説や映画を作っているとお聞きしました。

小学5年生ごろからファンタジーを書いていて、その中で使われている言語として自作しました。小説の内容は、推敲を重ねるうちに大部分が変わりましたが登場人物だけは変わりません。好きな事を細かく考えていくのが昔から好きでずっと続けていることです。

――イラストが本格的ですね! 右のものは言語の派生図ですか?

そうです。地理も好きなので、自作小説の世界地図を書きながら、ここはこの言語で、こう伝わって、最終的にこの言語になって……と考えていくのも楽しいんです。今は失われている言語でも、民族の移動の動線や関連した民族の言語の変化をあわせて考えることで元々あった言語を想像することができます。それを物語に当てはめていく感じです。

――そういえば、さっきからノートに日本語がないんですが、メモも自作の人工言語で書いているんですか?

もちろん日本語で書くこともありますよ。でも自分で作った言語なのである程度スラスラ書けますし、確かにこのノートには日本語は使っていないかもしれない。そもそもカリグラフィーや書体など文字自体も好きで、かっこいい文字のほうを書きたくなるんです。

――カリグラフィーもプロレベルですね(絶句)。

外国の本屋さんにはカリグラフィーの棚があるくらい人気がありますし、一時期ハマってそういう本を買って練習していたら独学でも結構書けるようになりました。さっきもネットで文献を探しているという話をしたと思うんですが、ネットでも「カリグラフィー 書き方」と検索すればいろいろ出てくると思います。やっぱり独学を支えるのはネットと本ですね(笑)

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理解して、共感してくれる人のありがたさ。

――東大に入ろうと思ったのはなぜですか?

しっかり学べる環境があること。勉強をしたい人が集まっているところだから、きっと面白い、共感してくれる人がいるだろうと思いました。実際、これまでは創作=地に足が付いていない、みたいな感じで馬鹿にされたこともあったんです。でも東大に入ってからはほとんどなくて。共感してくれる人がいたからこそ、自作の映画も作れましたし、やはりやりたいことがある人はそれを受け入れてくれる空間に行くべきだと思います。

あとは言語全般が好きすぎて、比較言語なのか認知言語なのか、何を専門にするのか選ぶのが怖かったんです。でも東大の場合、最初の2年は教養を学んで、あとの2年で専門を学ぶので選べないでいる僕にはピッタリだと思ったんです!

――映画の中に出てくるものはほとんど自作だとか?

恥ずかしいのですが、映画のための動画編集や音楽の作曲、演奏、時には歌まで自分でやっています(笑)。演奏はバイオリンを3歳から習っているのでまだいいのですが、今までやったことのないものもたくさんあったので疲れ切ってしまい、不眠症になってしまうこともありました。

例えばどうしても映画の中でホログラムを加工して入れたいとなると、YouTubeでやり方を学びながら進めていくので何時間もパソコンと向き合っています。好きなことと必要性が掛け合わさると人ってなんでもできるんですね(笑)。

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――言語に関連して、日本語のおもしろ裏話はありますか?

例えば、平安時代は今と発音が違った、という話はご存知ですか? 今の“ハ行”は“ファ行”ともいうべき発音で、しかもゆっくり発音していたそうです。その前は“パ行”ともいうべき発音で、「ぷ」と発音するときにすぼめた口が弱くなって「ふ」と発音するようになっていったと言われています。そもそも、ひらがなの表記も今とは違ったので同じ言語でも大きな違いがあるのがわかりますよね。

あとは、日本語で「はなから相手にしない」というときの「はな」は韓国語で「1」を意味する「ハナ」から来ているという説もあります。大陸の言語と違って、日本語はこの言語から生まれたという親戚関係のようなものがあまりわからないのですが、現在の形だけを見ると、日本語と韓国語の構造上の類似点は確かにあって、結構似ているんですよ。

――確かに考えてみると「はな」ってなんだろう? という思いになりますね。

僕もそうやって不思議に思ったときに、すぐ調べるようにしているんです。あとは、普段私たちが使う日本語の単語にもサンスクリット語由来のものがあるんです! 「旦那」とか「シャンプー」とかもサンスクリット語由来のものです(ただし、「シャンプー」は、サンスクリット由来ではあるものの、ヒンディー語の形になったものが借用されたようです。)。全然そんな感じがしないですよね(笑)?

――すらすら出てくる例が意外でとても面白いです! 私も興味が湧いてきました!

最近は大好きな言語の話をしていると「面白い!」と言ってくれることが増えてきて嬉しいです。実は自分がつくる映画や小説でもこのような楽しさを感じてもらいたいと思って、言語を作り込んでいるんです。

――そうなんですね。私は少し話を聞いただけですが、言語の変化や発音などはどこまででも遡っていけそうな、すごく広くておもしろい世界だと感じました。将来はどのような道を考えていますか?

やはりもっと言語のことを勉強したい! 言語学者になりたい! という思いはあります。だから大学院に進もうと思っています。一方で小説は小学校から書いているし、映画も今は続編を制作中という感じなので、今後もやり続けるつもりです。ただ創作をするだけではなく、言語という自分ならではのエッセンスを加えることでより、多くの人に楽しんでもらえるようなものにしたいので、これからどちらも頑張っていきたいですね。

――様々な言語をスラスラと発音し、その成り立ちや裏話を語ってくださる姿が印象的でした。好きなことをやり遂げるために、様々な知識を身につけていってしまうなんて素敵です! 文化祭で自作の映画を見た時も、クオリティーの高さにびっくりしました! 今後も頑張ってください! ありがとうございました。

PROFILE

中野智宏(なかの・ともひろ)自分で作った人工言語を使った小説と映画を創作。記事中にも出てきた人工世界フィラクスナーレ(http://firraksnarre.com/)を舞台にした現在制作中の長編映画の公式Twitter(@sekai_no_aida)では公演情報を配信中です。 もちろん東大の文化祭でも見れますよ。音楽など様々な活動をまとめた中野さんの個人サイトはこちらから。(https://tomohironakano.com/

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Photos: Tohru Daimon Text: Shiho Nagai(ViVi Creator)