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【W杯】元ゲキサカ・プロデューサーに聞いた日本サッカーの強み&今注目の選手とは?

2022.12.06

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2022年12月6日。運命のクロアチア戦が開幕。今回は試合直前に元ゲキサカのプロデューサー・石井健太さんにこの試合の見どころを伺いました。そこで見えてきたのは、日本サッカーの特殊さと代表選手たちの強み。そのインタビュー内容の全貌をお届けします!

「代表招集された段階で、日本の戦い方は決まっていた」

――まず2022年のW杯で代表に選ばれた26人の選手を見た時どんなことを思いましたか?

7月と9月に代表が招集された段階で、ほぼ固まったんだなという印象だったので、正直そこまで驚きのないメンバーでした。森保監督はこれまでもサプライズで新しい人をたくさん呼ぶ選考はしてこなかったですし、トータルで120人ぐらい呼んだ中から選んだメンバーだったので、サプライズ感はないなと。

とはいえ、やはり巷でも言われているように、原口元気と大迫勇也に関しては、僕も外したことに驚きを隠せませんでした。その代わり、大迫選手を外した時点で戦い方は決まっているなと思いましたね。というのも、大迫選手がいるとそこにボールが集まるし、当たったボールをしっかりキープして、みんなが上がるまで時間作ってくれる、そして、他の選手が出てきたタイミングで周りにさばくことができたんです。そこを外したということは、ボールを収める前提ではない戦い方をするんだなと。結果論、ドイツ戦とかスペイン戦でのやり方のように、引き込む、とにかくプレッシャーをかける、走り回れるキャラクターはやっぱ必要で、そういう戦い方をすると腹を括ったんだなと思いました。

一方でメディアとしてはコスタリカ戦はどうするのかと注目されていたんですけど、案の定収める人間がいなくてああいう結果になってしまったので、それは森保監督の中でも想定内だったと思います。

――ということはコスタリカ戦では、その痛いところを突かれた結果になってしまったということでしょうか。

逆に言うと森保監督が抱え続けてきた悩みが、そのままW杯に出たなって感じでしたね。たぶんこれまでの過去のW杯のアジア予選の中で、相手が引きの状況の中でなかなか点が取れずに、なんとか勝ち抜いてきたのが日本代表だった。そんなピンチを救っていたのが大迫だったりするわけです。ボールを収めて伊東純也のところに出したり、それを伊東選手が抉って大迫選手が決めたり。それがあったからこそ、正直そこをどうするのかなと思いました。

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――今回のW杯で代表に選ばれた選手は、これまでもゲキサカで追ってきた選手が多かったと思うですが、その中でも特に成長を感じた選手はいましたか?

三笘薫は高校生くらいの時から見ていますし、東京五輪世代って言われるメンバーは、基本的にアマチュアのときにうちのスタッフが取材していますね。上田綺世とか相馬勇紀は、正直フル代表に選ばれるところまで、この4年で伸びたんだなと感動しました。三笘選手もそうですけど、上田選手も相馬選手もみんな大卒なんですよ。大卒でここまで伸びるのって日本サッカーの特殊な部分だなと思います。

――それはなぜですか?

海外では高校で部活をする文化がないんです。基本的にはクラブとか下部組織でエンジョイ含めて、みんなサッカーをやる!という文化なので。

というのも変な話、高校を卒業するU18を超えると、そういった教育機関として育てる場所がないんです。以前まではユニバーシティという世界大会があったのですが、去年、無くなってしまって。だから大学のカレッジリーグみたいな大会の存在って世界にはほぼないんです。そんな中で日本は上田選手みたいに、高卒でプロになれなくても、大学の途中で鹿島アントラーズに入団が決まるみたいなパターンもあるので、大学そのものがサッカーの選手を育てるためにものすごく機能しているんだなっていうのは、今回の大会で思い知らされました。今回、大卒の選手が相当多いんです。谷口彰悟と三笘選手は筑波大学、伊東選手は神奈川大学、上田選手が法政大学で、相馬選手は早稲田大学。古くは長友佑都が明治大学でしたし、守田英正は流通経済大学に在籍していました。

ここまで大卒の量が多いのは、Jリーグがはじまる前の日本代表くらいまで戻らないと無いですね。その時代はリーグがないぶん、大学スポーツが強かったので。大卒がこれだけ華々しく出ているのは、なかなかはすごいなと思います。

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「日本サッカーの強みは、“育成システム”にあり」

――それは指導者の力なのでしょうか?

指導者の力というのもありますし、やっぱり18歳でプロ入りを果たしても、いきなり試合に出て活躍するのはなかなか難しいのが現実ですよね。だけど大学に所属していたら、その4年間で経験が積めるんですよ。なんだかんだ試合に出ることで育つ部分はありますし。それが日本サッカーの特殊さというか、ある種、誇るべき育成システムです。たとえ高卒でプロになれなかったとしてもドロップアウトさせない。4年間を経てもう一回チャンスがあるのは、すごく良いシステムだなと思います。

――今日の対戦相手のクロアチアについて話を聞かせてください!

クロアチアは、前回大会のロシアで準優勝したチームです。スペインやドイツの方が格上という意見もありますが、クロアチアは相当強いです。それとよく言われるのが、フランスとかスペインとか国ごとの民族が集まるナショナルチームってなかなか上手くいかないみたいな通説があるんですよ。そんな中でクロアチアは、恐らくヨーロッパの中でもトップクラスに愛国心の強い集団。

元々戦争があって旧ユーゴスラビアが解体されて、いくつかの国に分かれたうちの一つで……。そういう歴史的な背景もありますし、今回クロアチアのキャプテンを務める、10番のルカ・モドリッチも実際、幼少期に内戦を経験しているんです。

だからどの選手も各クラブチームでの試合より国家の代表として試合に出た方がパフォーマンスが上がる可能性が高い、珍しいパターンのチームなんです。ヨーロッパの中でも一番ハードワークするし、ある種、日本と似てるというかチームのために献身的なので結構やっかいだと思います。良くも悪くも国を背負って勝つことにこだわりが強いチームなんです。

対してこれまでのスペインやドイツは、ボールを握って、たくさんパスを繋いで、攻め続けることこそが一番良い守備だと思っていました。ボールを持っていれば絶対に点は取られないという嗜好を持っていたんです。クロアチアはそんなことは別に気にしないので コスタリカ戦みたいに、日本は持たせた方がやりやすいと思ったら持たせるだろうし、握ってショートカウンターを食らうよりは渡しちゃった方がいいって考える可能性もある。良くも悪くもこだわりがないところが難しいと考えている理由です。コスタリカ戦の時のように日本がボールを持つ場面も増えると思いますし、そうなったときに日本にはあまり策がないというのが正直なところです。

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「練習の初日から明らかに覚悟が違ったのは、堂安選手」

――クロアチアはこれまでの3試合ほぼ同じスタメンを起用していたのに対し、日本はコスタリア戦でガラッとメンバーを変えるなど、これまで体力を温存している印象がありました。それによる疲労感の差が、今日の試合の勝敗にも影響を与えるのでは?という話も出ていますが、どう思いますか?

あるとは思います。日本は良くも悪くもコスタリカ戦で半分人を変えてスタメンを組んでいましたよね。普通は勝ち点6をフルメンバーで取ってから、3試合目でターンーオーバーするんですけど(ちなみにフランスとかブラジルはそれをやって負けてしまいました)、それを二試合目でやるのは、前代未聞なんです。それをやったことがあるのは過去に1チームあるかないか。だから実はあのスタメンって、ものすごいギャンブルを打っていたんです。

森保監督はこれまでメンバーをあまりに変えてこなかったので、保守的なイメージがあったんですけど、こういう勝負どころで冴える人だったんだなって。ドイツ戦はカタールに完全プライベートで観に行ったのですが、あの時はスタジアムで「森保監督が動いた!でもこのタイミング動くの?」って驚きました。今までだったらスリーバックにして、その両サイドに酒井宏樹とか長友佑都とか、どちらかというとディフェンシブな選手を置いていたのに、あのウイニングイレブンでしか組まないような組み方で出してきたので(笑)。森保さんって実はものすごい勝負師なんだなって思いました。結果的にそれがどハマりしましたけどね。

――今日の試合の注目選手を教えてください!

遠藤航ですかね。特にクロアチア戦では、めちゃくちゃ能力が高い不動の中盤3人、10番のルカ・モドリッチ、8番のマテオ・コバチッチ、11番のマルセロ・ブロゾビッチという、不動の3人を自由にさせないっていうのが、今日の大会で一番大きいテーマになってくると思います。そこで、遠藤選手がどれだけ舵をとりながら地上戦で抑えることができるかというところで、前半凌げるかどうかが決まると思います。

あとは三笘選手と堂安律が入ってきた時にいかにブレイクさせてあげられるか、そしてそのためにどこまで遠藤選手が我慢できるかが注目ですね。

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――対策としてはその3人をいかに抑えるかにかかっている。

そうですね、一番大きいのはそこですね。あとはセンターバックに、20歳で20番のDFヨシュコ・グバルディオルという、バットマンみたいなマスクをしている選手がいるんですけど、彼がめちゃくちゃいい選手で、次の移籍の大目玉って言われているんです。高い・速い・強い・上手い、何でもできる選手。点を取るんだったらここを避けて勝負しなきゃいけないので、その片割れが誰になるか次第で、反対側の背後とかを狙うんだろうなと思うと、浅野選手ないしは伊東選手、三笘選手が抜けていくチャンスがあると思っています。

――これまで2得点を決めていた堂安選手はいかがでしょうか?

堂安選手も3点目がある気がします。これは現地にいる記者から聞いた話ですけど、練習の初日から明らかに覚悟が違ったのが堂安選手だと聞きました。というのも、これは現地にいる記者から聞いた話で、「練習の初日から明らかに覚悟が違ったのが堂安選手」。最初から他の選手とは気合の入り方が違い、「ここで結果を出せなかったら死ぬ」くらいの覚悟が決まっていたという話を聞きました。だから今回のW杯で2得点を決めたというのも納得の結果だったんだなと思います。

もし1大会で3点とったら日本人初なんです。過去にも1大会で2得点を決めた選手がいます。一人は2002年の日韓W杯での稲本潤一、二人目は2010年の南アフリカW杯で本田圭佑、そして2018年ロシアW杯の乾貴士の3人です。本大会で堂安選手は、彼らと並ぶ結果となりました。この3人の記録を越える可能性は十分あると思っています。

「三苫選手は、今まで取材した中で一番頭が良いと思った選手」

――ちなみに、ゲキサカにいた石井さんだからこそ知っている選手の裏話やエピソードはありますか?

今大会でもスターになった三笘選手は、本当にライトファンが見ても分かりやすい派手なプレーヤーですよね。

以前、ゲキサカで10分くらいの尺の動画を作りたいなと思って取材に挑んだことがあります。ゲキサカ読者はサッカーをやっている子が多いので、彼の特徴的なドリブルについて、「あのドリブルはどうやっているのか?」「どういう思考をめぐらしているのか?」など事前に考えた質問を伺いました。

他の選手が時間をかけて考えながら喋る中、三笘選手は投げた質問1に対して平気で5~6個、答えを出してくれたんです。しかも内容もすごく端的にまとまっていて、あっという間に質問し終わってしまって(笑)。あまりそういう経験をしたことがなかったので、尺が余っちゃてどうしようと慌てて追加質問をすることになったことがありました。

普段からすごく色々なことを考えていて、尚且つ思考が整理されるから、投げた質問一つに対して何個も答えを返すことができたんだと思うんです。もちろん彼には、フィジカル的なものやセンスといった才能もあるとは思うんですけど、相当考え抜いてあのプレーをしているんだろうなと。才能だけに頼らず、相当試行錯誤をしてあのドリブルまで辿り着いているし、これからは更に進化するんだろうなという印象が三笘選手にはありました。

それにスペイン戦では、ディフェンスもすごかったんです。ディフェンスが出来る選手というイメージは意外と持たれていないと思うんですけど、その部分はベルギーに行って相当鍛えられたんだと思います。そこも頭を使って考えながら努力しているんだろうなと。

ドイツ戦では三笘選手と浅野選手が同時に選手交代になった時、現地のサポーターの歓声がすごかったです。日本サポーターのボルテージが一気に上がったなと感じましたし、それと同時に、三笘選手に課せられている期待感が高いんだなという印象を受けました。

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「川島選手は絶対に外れることはない」

それと試合だけを見ている皆さんに伝わらないのは川島永嗣のすごさ。一番のベテラン選手なので、最初のメンバーを発表する時には、彼を呼ぶか呼ばないかに注目が集まっていました。本当なら湘南の谷晃生や浦和の鈴木彩艶といった、20歳前後の若い子のほうがいいんじゃないかみたいな話もありました。だけど、これはうちの記者もすごく言っていたのですが「川島選手は絶対に外れることはない」。

というのも川島選手がいるのといないのとで、練習の強度が全く違うんです。誰よりも激しく、クオリティーの高い練習をするし、練習中にすごく声を出すから、チーム内に危機感が迫っている感じというか、異常な緊張感が生まれるというか……。川島選手がいる練習はちょっとえげつないぐらい(笑)。それを作り出してきた、影のキーパーソンなんです。

キーパーソンといえば、長友選手も。派手なパフォーマンスをするだけでなく、これまでの彼の姿を見ても試合中、誰よりも声を出しているかと思います。その存在ってやっぱりデカくて、4大会目で川島選手と長友選手のコンビっていうのはすごいですよ。

最後に吉田麻也。吉田選手といえば、長友選手みたいに派手にパフォーマンスして盛り上げるタイプではないんですけど、ロシアワールドカップが終わり、キャプテンに任命されて以降、振る舞いが結構変わったんです。長谷部誠も2010~2018年まで8年間キャプテンやっていましたが、元々はやんちゃな性格だったってみんな言いますね。

やっぱり立場が人を作るみたいなのはあるみたいで、吉田選手もある程度は影響を受けたんじゃないですかね。彼もキャプテンじゃなかった時の方がそういう側面もあったかなと……。吉田選手は今34歳で、年齢的に今年のW杯が最後じゃないかと言われています。だから今後は、次のキャプテンとも言われている遠藤選手にも注目です。実際吉田選手がアジア予選に出てなかった時は、彼がキャプテンマークをつけていました。

What is ゲキサカ ?

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Photos: Kaoru Watanabe Text: Arisa Uchida

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