累計発行部数100万部を突破した大人気コミック『少年のアビス』が実写ドラマ化! 主人公・黒瀬令児を演じる荒木飛羽さんは、もともと原作の熱烈なファンだったとか。16歳にして数々の作品で存在感を示してきた大注目の新星に、作品への愛情や役づくりで工夫していることを語ってもらいました。
——まずはドラマ『少年のアビス』で演じる黒瀬令児の紹介をしてください。
令児は田舎町に暮らす高校生なのですが、認知症のお婆ちゃんがいて、母親は看病で疲れ果てていて、引きこもりの兄もいて、4人で暮らしています。そんな閉塞的な状況から抜け出すことができず絶望感を抱いているのですが、原作漫画の絵がすごく繊細で美しいので、全体的に儚い世界観が漂っているんですよ。もともと僕は原作漫画好きでしたし、映像化されることがあるなら絶対に演じてみたいと思っていたので、出演が決まったときは本当に嬉しかったです。
——難しい役柄だと思いますが、演じるうえで大切にしていることは?
どんなシーンでも頭の片隅に母親の存在を置くことを心がけています。令児と母親のいびつな親子関係が物語の軸になっていますし、一緒じゃないシーンでも母親のことを少し考えながら演じたほうが、令児の言動ひとつひとつに説得力が生まれてくるのではないかと。かとうみさと監督は細かな息づかいや手の震えまで丁寧に映し出してくださるので、それこそ全身全霊で令児を演じ切りたいと思っています。
——ドラマ初主演というプレッシャーもあると思いますが、撮影現場ではどのように過ごしていますか?
大好きな作品だからこそ、肩に力が入りすぎて空回ってしまったら嫌なんですよ。だから現場ではなるべくリラックスするようにしていて、共演者の方々にとの会話を楽しんでいます。令児を心中に誘う青江ナギを演じる北野日奈子さんとは、ロケ先の川原で一緒に撮影用の笹舟を作って打ち解けることができました(笑)。重いムードの作品だからといって、よそよそしくしていたら共演者の方々と信頼関係が築けないような気がするので。本当は少し人見知りなのですが、頑張って自分から話しかけています。
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——重いシーンの感情をプライベートに引きずらないために、オンとオフを切り替えるためのリフレッシュ法はありますか?
もともと僕はスタジオを出たら自動的に普段の自分に戻れるタイプなので、特別なリフレッシュ法は持っていないんですよ。ただ、休憩時間が長かったりすると気持ちが途切れそうになることがあるので、そういう時は香水の香りに頼っています。日頃から大好きな香水を4種類くらい持ち歩いていて、例えば自分の中で青江ナギの香りを割り当てておくんですよ。そうすると、ブレそうになったときにその香りを嗅ぐと、自然と気持ちが元に戻るんです。
——すごいですね。嗅覚と感情を紐づける役づくりは初めて聞いたアプローチです。
僕もこうしたインタビューの場で初めて言いました(笑)。五感の影響を受けやすいので、香水以外にも音楽を役づくりに活用することが多いです。
ちなみに、荒木さんのなかで青江ナギはどんな香りなんですか?
SHIROのホワイトリリーです。穏やかで甘い香りがして、大好きな香水のひとつなのですが、この香りを嗅ぐと令児がナギに抱く感情を作りやすいんですよね。毎シーンで頼るわけではないのですが、本当にお世話になっている香りです。
——もし街中でホワイトリリーをつけている女性がいたら?
嬉しいですね。ドキっとして振り返ってしまうかもしれません(笑)


Photo:Keisei Arai Styiling:Yoh U Hair&Make-up:yayoi handa Composition&Text:Satoshi Asahara