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Z世代作家として話題沸騰中の荒木あかね 最新作『此の世の果ての殺人』創作の裏側をインタビュー!

2023.01.21

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江戸川乱歩賞を史上最年少で受賞し、同賞初のZ世代作家として話題沸騰中の荒木あかねさん。滅亡する世界で起きた、ある事件を描いた『此の世の果ての殺人』は仕事をしながら書いたといいます。創作の裏側を、『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』著者の神田桂一さんがインタビュー!

左・有栖川有栖氏、右・荒木あかね氏(江戸川乱歩賞贈呈式)

――『此の世の果ての殺人』を面白く読ませていただきました。どきどきしながら読みました。まずは物語の着想からお聞かせ願えればと思います。

荒木:ありがとうございます。『この世の果ての殺人』を最初に思いついたきっかけは、わたしが自動車学校に通い始めたのがきっかけなんです。
わたしはとても運動神経が悪くて、人見知りだったので、自動車講習所に通うのが、いつも緊張していて辛いな、という気持ちがあって。

――はい。

もし、この自動車学校を舞台にミステリーを書くとしたら、どんなものがいいかなと考えて気を紛らわせるようにしていたんです。そうして、自動車学校の先生と生徒を主人公にした小説を書きたいなと思うようになっていきました。それで、物語を考えていたんですけど、自動車学校で殺人事件が起きるシチュエーションになったら自動車学校の先生と生徒が事件を捜査することは普通にありえなくて、絶対に警察が介入してしまう。
そこをどうにか先生と生徒が主体的に捜査できるような状況を作れないかなと思って、人類が滅亡するという設定を思いつきました。

――僕が最初から読んだとき、イサガワ先生が女性だと気づくのに少し時間がかかったんです。自動車学校の先生は男性だらけのイメージがあって、男性が話しているんだと勝手に思い込んでいて。先生は、最初から女性でいこうと思っていたんですか。

荒木:最初から主人公の二人は女性にしたいなという気持ちが強かったです。

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――主人公を二人にしようと思った理由はなんですか?

荒木:私自身が本を読んでいるときに魅力的な女性キャラクターがたくさん出てくると嬉しいので、自分でも魅力的な女性キャラクターを書きたいなというのもありますし、今回の作品の中では主人公の女性二人が連帯する姿を描きたいなと思って、絶対に主人公は女性二人でと決めて書きました。

――いまシスターフッドを描いた作品が注目されてますけど、意識せずに昔から女性二人というのは頭の中にあったんですか。

荒木:大学時代に『文藝』(河出書房新社)の「覚醒するシスターフッド」特集で、掲載されている作家さんたちのシスターフッドをテーマにした作品を読んだときに、自分でもこんな作品を書いてみたいという思いがあったので。意識して書いています。

――荒木さんはお仕事をしながら作品を書いていると聞いたんですけど、そうなんですか。

荒木:はい。働き始めてから書き始めました。

――どういう生活サイクルで書いていたのか教えてもらえますか。

荒木:通勤の電車の中と、退勤の電車の中と、会社の休憩時間にスマートフォンのメモ帳機能で執筆して、家に帰ってからは空いている時間でスマートフォンで書いた文章をパソコンに転送して、パソコンでまた書いて、というのを毎日繰り返していました。

――いままで読んできた作家さん、小説家さんとかで特別好きな方はいらっしゃいますか。

荒木:わたしがミステリー作家になりたいと思ったきっかけの作家さんは有栖川有栖さんです。中学3年生のときに有栖川有栖さんの本を読んでから自分も小説を書きたいなと思うようになりました。有栖川有栖さんの作品が大好きです。

――中学生の頃はどんな子だったんですか。

荒木:本はすごく好きだったんですけど、それまであまりミステリーを読んだことがなくて。外でスポーツして遊ぶみたいなよりは引きこもっているほうが好きでした。体育会系のクラブもやったことがないです。

――文学少女みたいな感じだったんですね?

荒木:まあ、外よりは中のほうが好きという感じでした。

――有栖川有栖さんと出会ってからはミステリー一辺倒という感じなんですか。

荒木:中高生のときはミステリー一辺倒だったんですけど、大学生ぐらいになってから古典ミステリーを読んでいる中で、アガサ・クリスティーの『五匹の子豚』を読んだときに女性の登場人物が魅力的で、こういう作品をもっと読んでみたいなと思いました。それでシスターフッドをテーマにした小説を読むのも好きになっていったんです。そこからはミステリーだけではなくて、女性の登場人物が魅力的で活躍する小説を読みたいという気持ちが強くなって、そこから読書の幅も広がったのかなと思っています。

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――そこからいまに繋がる感じで実際に書き始めたのはいつぐらいなんですか。

荒木:書き始めたのは中学3年生からなので、有栖川有栖さんの本を読んだ直後ぐらいから自分でも書き始めていて。新人賞に投稿し始めたのは大学生になってからです。

――大学時代のことを聞きたいんですけど、どういうことを学んでいたんですか。

荒木:学問は、美学美術史の中でも日本美術史を専攻していて、わたしが卒業論文のテーマにしたのは仏教美術の地獄絵です。

――小説の中の自殺する人たちの描写は地獄絵から着想していたんですか。

荒木:あんまり意識していなかったんですけど、大学時代の先生がこの間「江戸川乱歩賞受賞おめでとう」と連絡をくださって、そのときに先生が読んだことを伝えてくださって、人がいっぱい死んだりする描写はあのときの研究が関係しているのかな、と考えたと話がありました。

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――音楽とか聴かれます?

荒木:音楽はめちゃくちゃ疎いですね。

――もしかしてと思ったんですけど、二章の名前である「兄弟船」は鳥羽一郎の歌からとったんですか。

荒木:はい、もちろんです(笑)。

――推理は当たってたんですね(笑)。唐突に「兄弟船」が出てきたんで。荒木さんは福岡県だし鳥羽一郎は三重県だし、これ関係あるのかな?と思って。

荒木:わたしは演歌も全然知らないんですが、家族が鳥羽一郎さんの「兄弟船」を家で歌っていて、それを聴いて「兄弟船」という曲を知って、そのときに家族が鳥羽一郎には兄弟がいらっしゃって山川豊さんも歌手なんだよ、と。そのときに、実際に兄弟がいる人が歌う「兄弟船」っていいなと思ったんです。「兄弟船」というタイトルもかっこいいし、使いたいなとずっと思っていて、今回、この話を思いついたときにそういえば船で逃げそうな人もいそうだなと思って、了道兄弟の設定も生まれて。

――「兄弟船」ありきで設定が生まれたんですね!これはもう、鳥羽一郎と対談するしかなさそうですね(笑)。では、最後に次回作の意気込みをお聞かせ願えればと。

荒木:いま次回作のプロットを書かせてもらっているところなんですが、自分がいままで女性が連帯する作品に勇気づけられてきたので、そういう話を書きたいなとずっと思ってきました。今回の作品も女性二人のバディものの話なんですけど、次回も女性二人のバディものでミステリーを書こうと思っています。頑張ります。

INFORMATION

此の世の果ての殺人

小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり太宰府で自動車の教習を受け続けている。小さな夢を叶えるために。年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める――。
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PROFILE
神田桂一  ’78年大阪府生まれ。『FLASH』などの記者を経て、フリーランスに。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(共著)、『台湾対抗文化紀行』など。最新作は原作を担当している『めぞん文豪〈2〉』(共著)。
荒木あかね ’98年福岡県生まれ。九州大学文学部卒。’22年『此の世の果ての殺人』で史上最年少、かつ選考委員満場一致で江戸川乱歩賞を受賞。同作は週刊文春ミステリーベスト10で5位、MRC大賞で7位、このミステリーがすごい!で11位にも輝いた。