3月8日「国際女性デー」を記念して、Z世代ライター&ViViモデルの対談が実現! “Z世代的価値観”について綴られたエッセイ『世界と私のAtoZ』の著者であり、SNS上で自身の意見をはっきりと発言する姿勢にも注目を集める、アメリカ在住のZ世代・新星ライター竹田ダニエルさん。ダニエルさんと、ViViモデル・藤井サチさんに、社会との向き合い方・最近の気になる話題について語り合ってもらいました。
今回対談するふたりのPROFILE
竹田ダニエルさん(以下、ダニエル)
1997年生まれ、カリフォルニア州出身・在住。リアルな発言と視点が注目されている、Z世代の新星ライター。「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆中。実は、本職は理系研究者であり、日本と海外のアーティストを繋げるエージェントとしても活躍、そして実はViViを愛読していたという一面も。【Twitter:@daniel_takedaa】
藤井サチさん(以下、サチ)
1997年生まれ、東京出身・在住。2012年にモデルデビューし、2017年からViViモデルとして活動。食育インストラクター2級を取得したり、新書&ビジネス書を読んで知見を広げていたり、勤勉な一面も。【Instagram:@sachi.fujii.official】
そもそも「国際女性デー」とは、女性の社会的な権利や生き方について考えるきっかけとして国連が制定した記念日。すべての人たちが力を発揮でき、幸せに生きられるジェンダー平等社会の実現を目指して!
同世代でありつつも、住んでいる国・職業などバックグラウンドが異なるふたり、一体どんな対談になるのでしょう?第1回は、健全なライフスタイルをめざすために切っても切り離せない「セルフケア・セルフラブ」について。
vol.1 Talk about
『セルフラブ』
社会のために戦い続けられるように、そしてより多くの人にケアを届けられるように、まずは自分を愛する。自分をリスペクトすることと、常識とされている社会規範を疑うことは、一見関係ないように見えて、根本では深く結びついている
by竹田ダニエル(『世界と私のAtoZ』より)
【ダイエットとセルフラブの関係】
ダイエットで自分を傷つけないために
「私変わらなきゃ!」と焦る前に
いったん立ち止まって考えてみる
――ダニエルさんの著書にも登場する「セルフケア・セルフラブ」とは自分を愛し、大切にするという自己防衛に繋がるひとつの考え方。Z世代的価値観について考える中でもよく聞くこの言葉、シンプルなようで実践するのは意外と難しい。二人は自分自身を好きになれなかった経験はありますか?
サチ 私は10代の頃、自分の体型がコンプレックスだったんです。15歳の時にモデルデビューした途端、周りのモデルの子と自分の差に目がいっちゃって。「この子の方がお腹が凹んでる」とか、「足が細い」とか。それで「私、痩せないといけない」って思い込んじゃったんですよ。断食5日間したり、とにかくコールドプレスジュースを飲んだり、無理のあるダイエットで5キロぐらい痩せたんですけど、リバウンドして12キロも太って、心のバランスが取れなくなった時期があって。その後運動をしたりして2年ぐらいかけてやっと元に戻ったんですけど……苦い思い出です。
ダニエル アメリカでは、健康を害してまで「美しい」とされている体型にならなきゃいけないモデルの身体が不安視されたり、それをロールモデルにして若い世代が摂食障害に陥ったりすることが社会問題になりました。最近では、人間離れしたプロポーションのモデルではなく、様々な体型のモデルを起用しするブランドが出てきたり、変化が起きているなとは思います。
一方で、メディアの影響はやっぱり大きいですよね。私が10代の頃読んでいた雑誌は、「モデルの〇〇ちゃんみたいに45キロ台になるには」みたいな特集があったりしたんですよ。健康や栄養に関する知識が圧倒的に足りていない状態で、そのようなものを読んだら、やっぱり痩せないといけないんだと思い込んじゃう。
サチ そうなんです。「ウエストのサイズは、これぐらいじゃないと」とか、思い込んじゃうんですよ! 情報を受け取るときに、自分の中で「目にした情報=正解」だと変換されちゃうんですよね。
ダニエル メディアもそうですけど、資本主義社会では日々、「自分に足りていない部分」を突き付けられるんですよね。たとえば電車に乗ったら、ものすごい数の広告があって「脱毛して肌をツルツルにしないと」とか、男性に向けてだと「頭の毛を増やせ」などと訴えてくる。「あるがままの自分じゃいけない」って思わせる社会で私たちはずっと生きてきているわけなんです。だから、「私変わらなきゃ!」と焦る前に、「本当に、今の私じゃダメなの?」といったん立ち止まって考えるのってすごく大事だと思うんですよ。
サチ 私もダイエットに失敗して落ち込んでいる時、自分とすごく向き合ったんですよ。「自分をちゃんと大事にできているかな」と問いただす作業から始まって、「私は何をした時に嬉しくて、何をするとイヤな気持ちになるんだろう」っていうのを考え続けた。そうやって他人軸じゃなくて自分軸で生きることにフォーカスすると、思考もだんだん変わってくる。それで最終的に「自分が幸せなら別に痩せなくてもいい」って思えるようになって。
ダニエル まさに、セルフケア・セルフラブの考え方ですね!
サチ 私、「モデルはこうでなければいけない」みたいな「べき論」を勝手に自分で作り上げていたんです。それは、もっと成長したいという向上心の表れでもあると思っていて。でも、それを追い求めすぎちゃうと今に集中できなくなる。先の理想を追い求めて今の自分を大切にできなかったら意味がないですよね。
だから「痩せるために、今日どれだけ我慢をするべきか」から、「今日は、自分の体にとってどんないいものを食べようかな」という思考に変わっていったんです。

痩せるための努力=悪ではない
ありのままの自分を好きになれなくてもいい。
欠点や失敗も含めて
自分を「許す」ことこそが、セルフラブ
ダニエル セルフケア・セルフラブについてツイッターで発信すると様々な反応があるんですが、「努力しているという実感があることによって自分を好きになれる」という人もいるんですよね。
サチ すごく分かります。私も、「今日も頑張ったな」っていう達成感が自己肯定感につながることもあると思っているから。
ダニエル この時、「努力するのは何のためか」を考えてみることが大事かなと私は思っていて。その理由が「努力すれば、みんなに愛される」とか「きれいになればモテる」とかだとしたら、それは結局、セルフケア・セルフラブではないんじゃないかなと思って。セルフケア・セルフラブの基本は、「自分は大切で愛されるべき存在だから、まず自分で自分を大切にしよう」ということなのに、「他人に愛されるために」とか「モテるために」が目的になっちゃってる。
サチ 自分軸じゃなくて、他人軸になっちゃってるってことですね。
ダニエル そう。でも、他人って流動的なんですよ。今日100人にモテても、明日その人たちの気が変わって突然モテなくなるかもしれない。だからまず自分を愛さなければ、一生動き続けるゴールラインを追いかけて走り続けるだけの虚無な生活になっちゃう気がします。
サチ 「セルフラブ=本当にありのままの自分を愛する」っていうことができたら、そこが究極だとは思うんですけど、なかなか難しいと思うんです。いきなり「ありのままの自分」を好きになるのは難しくても、「一応なんとかやれてるし、まあいっか」ぐらいに考えられるようになったらいいのかもしれないですね。あと、「世界の全員に愛されたい」はムリだけど、親友であれ、パートナーであれ、「自分にとってかけがえのない人から大切にしてもらえている」って実感できることも大事ですよね。
ダニエル そうそう! もっといえば、自分にとってネガティブな影響を与える人間関係を断ち切ることもセルフケア・セルフラブだったりする。「自分は愛されるべき存在なのだから、自分を雑に扱う人や自分を大切にしてくれない人はシャットアウトする」っていうのも必要なことなんですよね。
サチ ただ、自分にネガティブな影響を与えてくる人ってシャットアウトするのが意外と難しくないですか? 特に「自分は未熟者だ」って思っている状況だと、「この人に認められるぐらいにならないといけないんだ」という思考回路になっちゃって。
ダニエル それってある意味、自分を罰している状態なんじゃないかな。こう考えると分かりやすいかも。
たとえば、毎日運動しようと決めていたのにサボっちゃったとき、「自分はダメ人間だから、今日は罰としていつもの倍の10㎞走らないと」って自分に罰ゲームを与えてしまったりしがちですよね。でも冷静になって考えると、運動ができるほど健康な身体があること自体が感謝すべきこと。それに、そもそも自分は愛されるべき大切な存在なのだから、罰を与えなくてもいいはず。欠点や失敗も含めて自分を「許す」ことこそが、セルフラブなんじゃないかと思うんです。
サチ ホントにそうですね。「罰」っていう言葉、すごくしっくりきました。真面目だからこそ、自分を罰するようなマインドになってしまうって人もきっと多いんでしょうね。それこそ、私が12キロ太った時に運動が続けられたのは、「自分への罰」じゃなくて、運動するとなんだか心が元気になるなって感じられたから。それに、運動ができるだけの健康な身体を持っていることがまず奇跡的なんだから、この身体を大事にしようって。ただ、こういう気持ちって、日常の忙しさに紛れて忘れてしまいがち。だから、何か壁にぶつかったら、原点を、あの時の気持ちを思い出せるようにしたいな。

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2022年11月24日発売
定価:1650円(税込)
Interview&Text/Miho Otobe Illustration/Haruna Maeda