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【セルフケアと人間関係】上手なバランスの取り方って?竹田ダニエル×藤井サチのZ世代スペシャル対談

2023.03.07

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3月8日「国際女性デー」を記念して、Z世代ライター&ViViモデルの対談が実現! “Z世代的価値観について綴られたエッセイ『世界と私のAtoZ』の著者であり、SNS上で自身の意見をはっきりと発言する姿勢にも注目を集める、アメリカ在住のZ世代・新星ライター竹田ダニエルさんとViViモデル・藤井サチさんに、社会との向き合い方・最近の気になる話題について語り合ってもらいました。

今回対談するふたりのPROFILE

竹田ダニエルさん(以下、ダニエル)
1997年生まれ、カリフォルニア州出身・在住。リアルな発言と視点が注目されている、Z世代の新星ライター。「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆中。実は、本職は理系研究者であり、日本と海外のアーティストを繋げるエージェントとしても活躍、そして実はViViを愛読していたという一面も。【Twitter:@daniel_takedaa

藤井サチさん(以下、サチ)
1997年生まれ、東京出身・在住。2012年にモデルデビューし、2017年からViViモデルとして活動。食育インストラクター2級を取得したり、新書&ビジネス書を読んで知見を広げていたり、勤勉な一面も。【Instagram:@sachi.fujii.official】

そもそも「国際女性デー」とは、女性の社会的な権利や生き方について考えるきっかけとして国連が制定した記念日。すべての人たちが力を発揮でき、幸せに生きられるジェンダー平等社会の実現を目指して!
同世代でありつつも、住んでいる国・職業などバックグラウンドが異なるふたり、一体どんな対談になるのでしょう?第2回は自己投資、整形、セルフラブが勘違いされる理由……そして「キレイになりたい!」の真意について、ドキッとする言葉も出てきました。

vol.2 Talk about
『セルフケア&セルフラブ』

社会のために戦い続けられるように、そしてより多くの人にケアを届けられるように、まずは自分を愛する。自分をリスペクトすることと、常識とされている社会規範を疑うことは、一見関係ないように見えて、根本では深く結びついている
by竹田ダニエル(『世界と私のAtoZ』より)

【セルフケアと自己投資の関係】

自分へのご褒美=お金を使うだけじゃない

「最低限食べること」「お風呂に入ること」
も立派なセルフケアのひとつ

――SNSで流れてくる他人の「セルフケア・セルフラブ」と自分を比較してしまって落ち込んで負のループに陥ることもあるのでは?と思うけれど、ふたりはどう思いますか?

ダニエル 何も贅沢なスパでマッサージを受けたり、高級な化粧品を使ったりすることだけがセルフケア・セルフラブじゃない。ささやかでも健康的な料理を作ったり、帰宅したらすぐお風呂に入ったりとか、一見当たり前のようなことの積み重ねが、長い目で見た時に自分をケアしたり自分が成長したりすることにつながっていると思うんです。アメリカのZ世代インフルエンサーとして人気があるエマ・チェンバレンがポッドキャストでこう話していたんですよ。「本当に体や心がしんどいときに必要なことは、15ステップもあるスキンケアのルーティンじゃなくて、最低限食べたりお風呂に入ったりすること。生存することが最重要」って。だから、(他人と)比べてる場合じゃないいよね、って考えも。

サチ いや、ほんとその通りですよね。しんどい時に15ステップもあるスキンケアなんて、出来ない!(笑)

ダニエル それに、他人と比べるって本当にキリがないですよね。例えばSNSには、「朝5時に起きて、上下セットの流行りのウェア着てヨガとかピラティスやって、シャワーして、手作りのグリーンスムージー飲んで、パリッとした私服に着替えて出勤……」みたいな他人のモーニングルーティンが流れてきたりしますよね。そういうものを見て、「こんなにちゃんとしている人もいるのに、私、マジでダメじゃん……」ってなるのは良くないなって。

サチ 本当にそう! 私もTikTokで似た動画をよく見かけるんですよ。昔の自分だったら、「私もこんなふうになったほうがいいんだ!」なんて考えたりしたけど、今は「たしかにこの人はすごいな、これをやってるのが幸せなんだろうな、でも自分とは違うな」って切り離せるようになったんです。自分軸で生きると楽になれるんですよね。

整形肯定派が増えている現状、
どう思う?

“本当に自分が望んでいることなのか”考えたい

――他人との比較で悩むという点でいえば、容姿もそうですね。日本では若い人の間で「ポジティブになれるんだったら、整形でかわいくなるのもアリ」と整形肯定派が増えていますが、どう感じますか?

サチ 私は、自分がよければ(整形すること自体は)いいとは思います。でも、影響力のあるインフルエンサーが「このパーツを整形しました! 〇〇クリニックです!」とSNSで宣伝するのは、ちょっと……。まだ自分で判断ができない世代の子に対して、良くない影響があるんじゃないかなって懸念はあるかな。ダニエルさんはどうですか?

ダニエル そうなんですよね。一方で難しい問題もあるかなぁ。
アメリカで、どう見ても整形しているであろうセレブが「していない」と言い張る例はあるんですけど(笑)、それもそれでちょっと違うかなと、私は思ってて。というのも、「整形せずに、この人たちは努力でこんなに美しくなった」と間違った情報が広まると、「私があの人みたいにキレイになれないのは、自分がダメだからだ」と、自分を責めることにつながってしまいそうで。

サチ なるほど。そういう側面もありますね。

ダニエル それに、見た目って流行があるんですよね。たとえばハリウッドでは最近、「バッカル脂肪」という頬の内側にある脂肪を抜くのが流行ってるんですよ。頬のふっくら感がなくなってげっそりした顔になるんですが、その流行もいつか終わるわけで。しかもSNSによって流行のサイクルはどんどん早くなっていく。その流行を追わなきゃいけない環境ができてしまっていること自体が不健全な気がするんです。

サチ キレイになるって楽しいことだとは思うけど……う~ん、本当に難しい。

ダニエル 今の日本社会って、キレイになるとお得が多いんですよね。みんなにチヤホヤされたり、就職でも有利かもしれない。「かわいい=絶対的に良いこと」という短絡的な思考が世の中に広まってしまっているじゃないですか。そうなると、「本当に自分の意志でキレイになりたい」のか「今の顔だと損をするから、キレイになりたいのか」が、見えなくなってしまってるんじゃないかなって。今の自分を好きになれないままで整形しても、結局、いくら整形してもし足りなくてキリがないんじゃないかなって。

サチ 整形するしないの問題にかかわらず、「本当に自分が望んでいることなのか」と考えるプロセスが大事なのかもしれないですね。

 

【セルフケアと社会のバランス】

自分を最優先、ではなく
そのコミュニティで活動を
続けるために必要なこと

「ズルい!ベース」の考え方は
いつか自分にも返ってくる

――セルフケア・セルフラブは、上の世代から「わがまま」とか「向上心がない人」と誤解されがちな現実もあります。社会に出た時に疲弊する原因のひとつになっているのかもしれません。

ダニエル 上の年代の人たちがそういう批判をすると、若者は委縮してしまう。日本では特に、「周りに迷惑をかけないこと」が善とされていますよね。その文化を否定したいわけではないのですが、その文化の前にたくさんの人の自己評価が犠牲になってしまっているという側面は否めないと思う。「人に迷惑かけてはいけない」「そんなことぐらい我慢しろ」といったことを子どもの頃からずっと言われ続けてきていると、何かあった時に「私は皆んなに迷惑をかけてるダメな人間」というネガティブな思考に陥ってしまう。日本の若い人を見ているとそう感じることがあります。

サチ たしかに、そういう面はすごくありますね。

ダニエル セルフケア・セルフラブが”自己愛”とか”自分勝手”という風にとらえられてしまうということが、紙一重の問題としてあるのも事実。「自分を最優先するあまりに周りの和を乱すのは良いのか?」みたいな。そういうわけではなくて、「活動を持続するために必要なもの」だと自分は思っていて。体力やメンタルを維持するためにもセルフケアは大事。無理して走り続けると燃え尽き症候群になってしまって、結果的に長く続けられないから。

――2021年、Z世代のテニスプレーヤーである大坂なおみ選手がうつ病を告白し、精神的な不安を理由に記者会見を欠席した際、「プロとしてどうなんだ?」といった批判が起きました。一方、ダニエルさんは「セルフケアの一環として自分のメンタルの状態を優先するのは当たり前のこと」といった趣旨をSNSで発信し続けていましたよね。

ダニエル アスリートともなれば肉体面だけでなくメンタル面もとても大事なはず。それなのに、世間の空気に逆らって自分を大切にするのが「輪を乱す悪い行為」と捉えられてしまうのは残念だなと思うんですよね。

サチ メンタルを良い状態で保つってすごく大事で、そしてとても難しいんですよね。大坂なおみさんの場合も自分のメンタルを大事にした結果の判断だから、尊重したいと思う。それに、自分のメンタルの状態が良くて心に余裕があると、人にやさしくできるんですよね。その輪が広がっていったら世の中がもっとハッピーになるのになって思いました。

ダニエル まさにそれ! 裏を返せば、他人のセルフケア・セルフラブを批判する人って、「ズルい!ベース」の考え方なんじゃないかな。「私はこれだけ自己を抑圧して嫌なことを耐えているのに」という思いから「そんなに自分を優先するなんて甘えだ。ズルい」という発想になってしまう。「大坂なおみさんは有名人だから、何を言われても仕方ない」と思う人もいるかもしれないけれど、そうじゃない。大坂さんにぶつけた言葉って、自分の身近な人にも届いているわけで、最終的に自分自身にも返ってくる。他の誰かのセルフケア・セルフラブを批判ばかりしていると、結果的にますます自分が苦しい状況に追い込まれるってことを忘れちゃいけないと思っています。

vol.1を読む
『本当に、今の自分じゃダメ?』
~ダイエットとセルフラブ~

info
『世界と私のA to Z』著者:竹田ダニエル
Z世代って何を考えてるの? 
SNS、音楽、映画、食、ファッション……Z世代当事者がアメリカと日本のカルチャーからいまを読み解く画期的エッセイ!
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2022年11月24日発売
定価:1650円(税込)

Interview&Text/Miho Otobe  Illustration/Haruna Maeda