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推し活なみに政治は“沼る“。若者が声をあげるべき納得すぎる理由【Z世代対談:竹田ダニエル×藤井サチ】

2023.06.05

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“Z世代的価値観について綴られたエッセイ『世界と私のAtoZ』の著者であり、SNS上で自身の意見をはっきりと発言する姿勢にも注目を集める、アメリカ在住のZ世代・新星ライター竹田ダニエルさんとViViモデル・藤井サチさんに、社会との向き合い方・最近の気になる話題について語り合ってもらいました。

今回対談するふたりのPROFILE

竹田ダニエルさん(以下、ダニエル)
1997年生まれ、カリフォルニア州出身・在住。リアルな発言と視点が注目されている、Z世代の新星ライター。「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆中。実は、本職は理系研究者であり、日本と海外のアーティストを繋げるエージェントとしても活躍、そして実はViViを愛読していたという一面も。【Twitter:@daniel_takedaa

藤井サチさん(以下、サチ)
1997年生まれ、東京出身・在住。2012年にモデルデビューし、2017年からViViモデルとして活動。食育インストラクター2級を取得したり、新書&ビジネス書を読んで知見を広げていたり、勤勉な一面も。【Instagram:@sachi.fujii.official】

同世代でありつつも、住んでいる国・職業などバックグラウンドが異なるふたり、一体どんな対談になるのでしょう?第2回は自己投資、整形、セルフラブが勘違いされる理由……そして「キレイになりたい!」の真意について、ドキッとする言葉も出てきました。

vol.3 SNSと、Z世代の政治参加

社会のために戦い続けられるように、そしてより多くの人にケアを届けられるように、まずは自分を愛する。自分をリスペクトすることと、常識とされている社会規範を疑うことは、一見関係ないように見えて、根本では深く結びついている
by竹田ダニエル(『世界と私のAtoZ』より)

【SNSは使い方次第!】

――TwitterのようなSNSは匿名の世界ということもあって、発言が炎上したり、激しい言葉で誹謗中傷を受けたりすることもありがちです。世の中に発信したいことはあるのに、炎上するのが怖くてなかなか踏み出せないという人もいると思います。

サチ まさに私がそうなんですよ! いろいろ考えていることはあるんだけど、発信していないんです。叩かれるのはすごく怖いし、傷つくから……。

ダニエル たとえば芸能人が「選挙に行こう!」と呼びかけたりすると、「なんでお前なんかが選挙のこと言うんだよ?」みたいに叩かれたり、ネガティブなコメントが目立ちがちですよね。でも、ネガティブな人の声が目立つだけで、実際は90%ぐらいの人が賛同したり歓迎したりしているんじゃないかって思うんですよ。
同性婚や夫婦別姓についても、一部の保守的な人が猛反対していることで、その声が大きいように感じられてしまうけれど、世論調査などを見ると過半数の人たちが賛成していたりするんですよね。

サチ たしかにそうですね。反対派の人の意見って、すごく大きな声だと錯覚してしまう……。

ダニエル とはいえ、私も理不尽なコメントを浴びせられるのは堪えますよ。「コメントを見なければいい」っていうのも、現実的になかなか難しいし。だから、「叩かれるのなんて気にしないで、みんなが声を上げるべき!」とは言えないですね。ただ、「勇気をもって声を上げている人を抑圧するのだけはやめてほしい」というのは、ずっと言い続けてます。そういった人たちの発言を通して学びになっている人もたくさんいるから、声を上げる人を抑圧することは、多くの人の学びの機会を奪うことにもつながりかねないと思うんです。

サチ SNSでの誹謗中傷については、プラットフォーム側の責任もあると思います。SNSをめぐって、これまでにも様々な事件があり、問題視されて、プラットフォームの仕組みも変わりつつありますよね。
誹謗中傷した人だけでなく、誹謗中傷に「いいね」を押した人に対しても裁判で名誉棄損の判決が出たりしていることもあるので、そういった動きによって世の中の意識も変わってくるのかな。

ダニエル あと、政治的な発言をする芸能人を叩く背景には、「モデルや芸能人は社会や政治に関心を持っていない」という世間でのイメージが関係しているんだと思います。でも、それはメディアを通して出来上がったイメージで、本当は発言したくでもできる場が与えられていなかっただけ。だから、今回、こうやってメディアで対談できることは、すごく嬉しいし意義があることだと思います!

「発言しない=現状に満足している」と
認識されてしまうもの。
まずはパブリックコメントという選択肢も。

――ダニエルさんの著書『世界と私のAtoZ』によれば、アメリカでは、Z世代がSNSで政治についての意見を交わしたり、デモに参加してそれをストーリーにアップしたり……というのがごく当たり前に行われているそうですね。

ダニエル アメリカでは私生活で政治の話をするのが普通のことなんですよ。なんでそうするのかって言うと、アメリカでの生活って、いつも“ギリギリ”だから。いつ学校で襲撃事件が起きるか分からないし、人種差別も現実に起きている。環境問題や格差社会も毎日のように肌で実感するような社会なんですよね。常に危機感を持って生活しないといけないことが大きく影響しているのかもしれません。

サチ 何年か前「若者が政治に関心がないのは、それだけ日本が平和だということ」と発言した日本の政治家がいました。たしかにアメリカに比べたら日本は平和かもしれないけれど、調べてみたり人の話を聞いていたりすると、日本にも困っている人はたくさんいるんですよね。今の社会システムの中で大変な思いをしている人もいて、知れば知るほど日本にもいろんな問題があるんだなって。Z世代の人たちでも、すでに発信して、声を上げている方もいるけど、一方で「日本って平和だから大丈夫なんじゃない?」みたいな声も、私の周りでは聞くことも多いので、色んな情報をまず自分で興味を持つ、知るっていうところなのかなって思ってて。実際にデモに参加して、その様子をInstagramのストーリーズに載せるという動きはアメリカに比べるとあまりないけれど、あと数年でそうなっていくのかなって思います。

ダニエル 日本ではZ世代の人口がすごく少ないから、高齢化社会の中で生き延びるには、大人に気に入られないといけないという前提ができてしまっている。その場所で生き延びるためには、角を立てるようなことをしちゃいけない。仮にそれを覚悟して声を上げても、人口が少ないから政治の中で若者の声が無視されてしまう。以前こんなことをツイートしたら色々な反応がありました。だからといって、諦めて何も発言しないでいると、「若者は満足している」と誤解されてしまうという悪循環なんですよね。

サチ だからこそ、「小さくてもいいから声を上げていかないと!」と思ってて。まずは知ることから始めようと思って、少しずつ勉強し始めました。たとえば、この前はアフターピル(緊急避妊薬)の市販薬化について厚生労働省がパブリックコメントを募集していたので、提出してみたんですよ。多くの先進国では風邪薬を買うのと同じようにアフターピルを薬局で手軽に買えるのに、日本ではまだ医師の処方箋が必要なんです。いろいろ自分なりに調べて、「これは絶対に市販薬化したほうがいい」と感じたので、意見を書いて送りました。SNSで大っぴらに発信する勇気はまだないし、ベイビーステップ(小さな一歩)だけど、こういうところから社会に参加して、いい意味で社会を変える一員になりたいなぁって。

ダニエル すごくそれを聞いて、嬉しいです! 「声を上げる=現政府に文句ばかり言っているアンチ」みたいに捉える人がいるんですが、それは違う。政治は国民のためにあるもので、国民の都合の良いように政治や社会が変わるべきだと思うんですよ。今まで社会が変わらなかったことで、たくさんの人の自由や人生が犠牲になってしまったこと、そして変わらなきゃいけない時代が来ていることも認識するべきなんですよね。

サチ この前も国会で同性婚について話し合われていた時に、首相が「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だから慎重にならないと」という趣旨の発言をしたんですよね。それを聞いて、「社会ってもう変わってるんだけどなぁ」って違和感を覚えて……。

ダニエル 本当にそう! 今の部分切り取って、みんなに聞いてもらいたいです!(笑)

政治=自分の生活と繋がっているもの
一度関心を持ったら“沼”!?

――意識が変わっている一方で、選挙での投票率も若い世代ほど低い傾向があるのも事実です。日本のZ世代は政治への関心が低いと言われているけれど、どう感じますか?
※令和47月に行われた第26回参議院議員通常選挙では、10歳代が35.42%、20歳代が33.99%、30歳代が44.80%となっています。(全年代を通じた投票率は52.05%)(参照:総務省HP「衆議院議員総選挙における年代別投票率(抽出)の推移https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

ダニエル 日本の若い人の政治参加が少ないのは、社会と自分の生活を切り離して「自分とは無関係」だと考えてしまうからなのかも。でも、本当は自分の生活と社会はすごく密接に関係しているんですよね。日本の友達の中には、大学時代は政治なんてまったく興味がなかったのに、「就職したらパワハラがすごくて会社を辞めて、社会や政治が間違っていることがたくさんあるって気づいた」という人もいますよ。そういった友達を見ていると、一度社会や政治に関心を持つと、いい意味で“沼”にハマるみたいで、次々と情報を集めて既存のシステムに問題を提起しています。

サチ まず知ることって重要なんですよね。問題意識ができるから。私は知る手段としてTwitterをよく使ってます。関心あるテーマを検索すると、いろんな意見が出てくるから、「この意見はどうなんだろう」って考えられる。SNSには弊害もあるかもしれないけれど、そういう使い方で情報を集めたり、考えを深められるのはSNSのすごくいいところだと思うんですよ。ハッシュタグで気になる話題について検索するだけでも本当に今って、いろんな意見の人がいるなって分かる。一方で、新聞はただ情報が入ってくるだけなので、「自分はどう思んだろう?」と考える時間を設けられるので、新聞とSNSをうまく使うことは(「知る」ために)すごく有効的なんじゃないかな。

2人の対談トーク、いかがでしたか?
発言することの重要さや
自分なりの考えの深め方について
皆さんはどう感じましたか?
一つの考え方としてぜひ皆さんの
日常に活かしてみてください!

vol.2を読む
『セルフケア=わがまま!?』⁉

info
『世界と私のA to Z』著者:竹田ダニエル
Z世代って何を考えてるの? 
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2022年11月24日発売
定価:1650円(税込)

Interview&Text:Miho Otobe Illustration:HARUNA MAEDA