ストレスを感じたり、環境が変化したとき、一時的に生理のリズムが乱れたことはありませんか? 実は、放っておくほど、もとのリズムに戻りにくくなってしまう「生理不順」。今回は婦人科医の福山千代子先生に、生理不順の対策から対処法までを教えて頂きました!【ViViフェムケア通信#3】

金沢医科大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医。女性が抱える体のお悩みや不調に対し、20年以上真摯に向き合っている。丁寧なカウンセリングと診察に定評があり、更年期障害、月経痛や月経前症候群(PMS)などの治療も行う。
生理不順のときどうする?「特に何もしない」人が80%
前回の記事で紹介した通り、ViVi読者で生理不順を経験したことがあると答えた人は約71%と、全体の約7割もの人が生理のリズムが乱れた経験がありました。では生理不順に陥ったとき、何か対策をしていたのでしょうか?

ViVi公式Instagramにてアンケートを実施。有効回答数852人。
アンケートの結果は、「特になにもしなかった」が約80%。「対策をした」と答えた人に、具体的に何をしたのか?聞いたところ「婦人科に行く」という回答が多数を占め、次に「生活習慣を見直す」が多くあがりました。
Q.「何か対策をした」と答えた人へ、 具体的に何をしましたか?(自由回答)
「婦人科に行った」、「とりあえず病院に行く」、「婦人科に行って薬をもらった」、「婦人科で検査をして、ピルを処方してもらいました」、「睡眠時間を増やした」、「しっかり食べて寝る」、「生活習慣の改善!ストレス解消!」
「生理周期が乱れた場合、1~2ヵ月様子を見ていると自然にもとのリズムに戻ることもあります。しかし、症状によっては、早めに受診していただきたいケースもあるんです」(福山先生)
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婦人科に行くべき生理不順のサインとは?
生理不順は大きく分けると、2パターンあります。
【生理不順の主なパターン】
①「周期が遅くなり、なかなか生理がこない」
②「周期が早くなり、ひと月に何度もくる」
「このうち②の頻繁にくるケースの場合は、早めの受診をおすすめします。本来1週間で終わるはずの生理が月に数回続くと、たとえ少量の経血でも貧血になりやすいからです」(福山先生)
①の生理周期が遅い「稀発性月経」の場合、様子を見ることもあるそう。その一方で、婦人科を受診したほうがよいケースとは……?

パートナーがいる方は、まず妊娠の可能性があります。そうでない方も“ホルモンバランスの乱れ”が生じているケースが少なくありません。稀発性月経は放っておくほど治療が長引くので、3ヵ月生理がこなかったら、婦人科を受診して頂きたいです!
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婦人科で原因を検査した場合、どんなことをしてもらえるの?
①症状によってはホルモン剤を処方することも!
「生理のリズムに悩んで婦人科を受診した場合、まずはカウンセリングで普段の生活習慣をうかがったり、血液検査でホルモン数値を計測したりして、生理不順の原因を探っていきます」(福山先生)
特にポイントとなるのが「女性ホルモンのバランス」。生理周期は2つの女性ホルモンが関与しているからです。

①受精卵が着床しなかった場合は、子宮内膜が剥がれ落ちて経血として排出されます。②生理後から卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が増加し、子宮内膜が厚みを増します。③卵胞ホルモンの分泌がピークになると、排卵が起こります。④排卵後から黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増加し、子宮内膜はさらに厚みを増して受精卵が着床しやすい状態に整えます。
「排卵がうまく行われず、黄体ホルモンが十分に分泌されていないと、子宮内膜が卵胞ホルモンのみで厚さを増してからようやく剥がれ落ちるため、生理の周期が遅れやすいんです。その場合は、黄体ホルモンを薬として処方します」(福山先生)
また、卵胞ホルモンと黄体ホルモンがともに足りていない場合は、両方を補充するそう。ホルモン剤は、子宮内膜が成熟して剥がれ落ちる生理のプロセスをサポートするんですね。
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②低用量ピルや漢方薬が処方される場合も
月に何度も生理がくる場合は、子宮内膜が成熟してから剥がれ落ちるプロセスにエラーが生じ、“ 頻繁に剥がれ落ちている状態 ” と考えられます。この場合は、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの両方を含む中程度のピルを処方します。子宮内膜の成熟をコントロールすることで数日後にきちんとした生理がやってきて、そこから周期が整う方が多いです
また、パートナーがいる場合、避妊と生理周期の安定のために、低用量ピルを処方するケースもあるそう。「ホルモン剤やピルはちょっと……」という人は、漢方薬という選択肢もあるそうです!

漢方薬の場合は、ほてりが気になるとか、落ち込みやすいなど、体質や心理的な傾向をお伺いしながら、その方に合ったものを処方していきます
【婦人科で処方される代表的な漢方薬】
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血液の巡りを促し、身体を温める。生理不順や産後の不調、更年期障害等に用いられる
・桂皮茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血流の滞りを改善し、月経異常のほかに、ニキビや湿疹などの肌トラブルにも用いられる
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
血流の滞りを改善し、月経異常のほかに、神経の高ぶりや落ち込みなど心身の不調にも用いられる
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自分でできる生理不順の対策は?
生理周期が乱れた場合、婦人科に行く前に、自分でできる対策はあるのでしょうか?

排卵の有無や、ホルモンバランスの乱れを知る手がかりとなる “ 基礎体温 ” を測っていただくのが一番です!
【基礎体温とは?】
朝、目が覚めた直後、安静状態にあるときの体温のこと。月経中から排卵までは卵胞ホルモンの影響で低くなり(低温期)、排卵後次の生理までは黄体ホルモンの影響で高くなります(高温期)。

「基礎体温が2相に分かれていない場合、排卵していない可能性があります。また黄体ホルモン、もしくは卵胞ホルモンの分泌がうまくいっていない可能性も」(福山先生)
【計測時のポイントは?】
・起床して身体を動かす前に、ベッドの中で測りましょう。
・高温相と低温相の差は0.4~0.5度とごくわずかなので、精密に計測できる「基礎体温計(婦人体温計)」を使います。
最近では直接スマホやパソコンにデータが飛んで、自動的にグラフを作成してくれる基礎体温計もあるそう。婦人科を受診する場合も、この基礎体温のデータがあると診断しやすいため、生理不順が気になる人は測っておくとよさそう!
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まじめな人ほど、実は「生理不順予備軍」
前回の記事でお伝えした通り、生理不順の大きな原因の1つはストレスです。生活のベースとなる「睡眠」や「食生活」に関しては、自分でできることから改善を。日付の変わる前にベッドに入る、外食の時に野菜の小皿を一品追加するなど、可能な範囲で工夫してみましょう!

まじめな方ほど、ご飯を玄米にしたりジムに通ったり、ご自身の健康に気をつけているんですね。それでも、生理不順に陥ってしまうことはあります
まじめでがんばりやの人ほど、気づかぬうちにストレスを溜めてしまいがち! 自分で意識していなかったストレス要因をはじめ、ホルモンバランスや体質など生理不順の原因を多面的に調べ、自分に合った治療法を専門医に相談できるのが婦人科の利点です。
「薬の処方によって数ヵ月から半年くらいで落ちつく方もいれば、色々な方法を試しながら、1年以上かかることもあります。前述の通り、生理不順は放っておくほど治療が長引くため、ぜひ気軽にご相談頂けたらと思います」(福山先生)
Text: Namiko Uno