神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動している芸人「9番街レトロ」の京極風斗(きょうごく・かざと)さんは、極端なほどに“0か100か”で生きている。そんな京極さんは、“0”であるはずの何気ない日常ですら、楽しいことやラッキーなことに変換できる人。きっと誰でも、何かしらの選択肢にぶつかったとき「感覚距離」を基準に考えれば、おのずとハプニングがハッピーへと変わるのかも!? 今日の帰り道にぜひやってみて!
9番街レトロ・京極風斗
連載【0か100かで生きてゆく #43】
ー 感覚距離 ー

Illustration: Kazato Kyogoku
ハプニングをラッキーにする考え方
帰り道。
最寄り駅から自宅までのルートが2本あるとします。
一方は自宅まで徒歩5分。街灯が照らす、ほぼ直線の静かな普通の道。
もう一方は自宅まで徒歩10分。まだ灯りのついた店が建ち並ぶ商店街。
僕は、よほど急いでいない限りは後者を選びます。
芸人として何かしらのハプニングを期待している側面もあると言えばあるのですが、理由としてはそれよりも、帰り道が「ただの帰り道」になる方が甲斐が無くて疲れるからです。
例えば、徒歩5分の普通の道と、徒歩10分のイルミネーションのある道なら、後者を選ぶ人はグンと増えると思うんですね。
むしろイルミネーションを抜ける頃には、「もう少し続けばいいのに」とすら思うはずです。
楽しい時間が早く過ぎるように、楽しい道も早く過ぎます。
つまり僕は、実際の距離よりも、体感の距離で道を選んでいます。
これは道に限りません。
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1000円のお店のラーメンより、500円のカップ麺の方が、「高い」と感じます。
好きな仕事の10個のタスクより、嫌いな仕事の3個のタスクの方が、「多い」と感じます。
面白い1時間の漫才より、つまらない10分の漫才の方が、「長い」と感じます。
この感覚は皆さんも持っているのでは。
僕は何においても、この感覚に従って選択をします。
合理的な選択ではないので、損することや無駄な労力になることも多いです。しかし、ストレスは溜まりにくいです。
最短ルートは上手くいけば素晴らしいものですが、それにこだわりすぎると、何か障害があった時に本当にムカつきます。
冒頭の帰り道の話で言うと、一番早いからという理由で選んだ徒歩5分のただの道がもし、真ん中ほどまで進んだ場所で道路工事をしていて、迂回しなければならないとなった場合、その道は「早い」という唯一のメリットを奪われた最悪のルートになります。
一方で徒歩10分の道で道路工事にぶつかった場合、同じく迂回は面倒ですが、元々早く帰りたくて選んだ道ではないので、そんなにムカつかないですよね。なんなら僕は「レアな光景に出会えた」と思えます。
これは元の「余裕」の違いです。
余裕がない時に、物事をポジティブに捉えるのはなかなか難しいですよね。
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お腹がすいている時は「何か食べたい」しか考えられないですし、眠たい時は「寝たい」しか考えられないように、駅から家までの最短ルートの道中で考えていることって、「早く帰りたい」にフォーカスしすぎて、余裕がない感じがするんですよね。
疲れないように選んだはずの合理的な道が、結果的に人を疲れさせているような気がするのです。
余裕がないなら、遠回りすればいいじゃない。
僕の中のマリー・アントワネットもそう言ってます。
余裕は意外と簡単に作り出せるものではありませんか。
騙されたと思って、今日の帰り道迂回してみてください。
デカイ犬とか見られるかもよ。

photo by: Ryo (Kotora)
連載『9番街レトロ・京極風斗の0か100かで生きてゆく』は第2・4水曜日に更新!
1995年8月9日生まれ。大阪府出身。吉本興業所属のお笑いコンビ。2019年4月1日に9番街レトロを結成。神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動中。
個人チャンネル「京極風斗の道楽ちゃんねる。」ではアートとインテリアを軸に、好きなことを配信。
コンビのYouTubeチャンネルでは日々の出来事やネタの動画を配信。
そのほか、絵が得意で自らデザインしたオリジナルグッズをSUZURIで販売している。
Twitter @9th_kyogoku
Instagram @9th.kyogoku
9番街レトロってどんなコンビ?
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Photo: Ryo (Kotora) Text & Illustration: Kazato Kyogoku