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辛いのはあなたのせいではない!理不尽な社会を生き抜く“知っておきたい話“【Z世代対談:竹田ダニエル×藤井サチ】

2023.06.06

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“Z世代的価値観について綴られたエッセイ『世界と私のAtoZ』の著者であり、SNS上で自身の意見をはっきりと発言する姿勢にも注目を集めるアメリカ在住の新星ライター・竹田ダニエルさんとViViモデル・藤井サチさんに、社会との向き合い方・最近の気になる話題について語り合ってもらいました。所謂「Z世代」生まれで同世代でありつつも、住んでいる国・職業などバックグラウンドが異なるふたり。一体どんな対談になるのでしょう? 第4回は、生きていくうえで切っても切れない「お金と仕事」の話。

今回対談するふたりのPROFILE

竹田ダニエルさん(以下、ダニエル)
1997年生まれ、カリフォルニア州出身・在住。リアルな発言と視点が注目されている、Z世代の新星ライター。「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆中。実は、本職は理系研究者であり、日本と海外のアーティストを繋げるエージェントとしても活躍、そして実はViViを愛読していたという一面も。【Twitter:@daniel_takedaa

藤井サチさん(以下、サチ)
1997年生まれ、東京出身・在住。2012年にモデルデビューし、2017年からViViモデルとして活動。食育インストラクター2級を取得したり、新書&ビジネス書を読んで知見を広げていたり、勤勉な一面も。【Instagram:@sachi.fujii.official】

vol.4 お金と仕事、将来の話。 

“知らない=自己責任”ではなく
みんなで学んでいきたい

――日本の景気が悪いのは今に始まったことではないけれど、最近は特に経済的な不安を訴える声を見かけることが増えた気がします。2人の周りはどうですか?

サチ 実際、私のまわりにも「自分で今生活しているだけでいっぱいいっぱい」「子どもを持てる経済力もない」と話している友人がいます。

ダニエル アメリカでも経済的な面での共通点はありますね。物価はめちゃくちゃ上がっているのに賃金は上がらない。一部の大金持ちはものすごく富を蓄えているけれど、一方で明日の生活に困っている人もたくさんいる。労働者が組合を作って「雇用条件を改善してくれ!」と声を上げても、1ドルしか賃上げしてもらえなかった……といったことも話題になっています。

さらに言えば、Z世代が親世代よりも裕福になる可能性はものすごく低い。だからアメリカでは、「大人は、私たちの苦しみや不安をよそにいい暮らしをしているなんて、許せない!」といった怒りや絶望から声を上げている若者が多いんですよ。でも大人たちは、従来は当たり前だった「結婚して家を買って子どもを二人持つこと」が今のZ世代にとって“贅沢”になっている実感がないんですよね。声を上げている若者への大人たちの反論としてよくあるのが、「今の若い子は文句ばかり。あなたたちがコーヒーに週10ドル使っているお金を貯金したら家が買えるでしょ」。やっぱり、全然理解できてないんだなぁって……。

サチ そういう社会を作ったのは、上の年代の大人たちなんだけどなぁって思っちゃう。もし、結婚して子どもが欲しいのに経済的な理由でそれが叶わないのだとしたら、それは社会がおかしいからだと思うんだけど、そう言ってくれる人っていないんですよね。

ダニエル そうなんです。毎日会社で嫌な思いをしたり、生活がすごく苦しかったり、時給が上がらないのも全部社会のせいなのに、「あなたが怠惰だからでしょ?」と自己責任にされてしまう。「若い世代に今降りかかっている人生の困難は、社会が悪いせいなんだよ」っていうのを大人が誰も言ってくれないのは、若者にとって本当につらいことだと思うんですよ。

サチ 経済的なことでいえば、お金について学校で学ぶ授業もなかったし、投資や保険についても自分で勉強するしかない。今自分が何ができるかって考えたら、情報を集めることなのかなって思うんです。YouTubeでお金の授業を見ることも一つの方法じゃないかって。中田敦彦さんが今、YouTubeで配信しているお金の授業とか、すごくわかりやすいんですよ。会社に属してお給料をもらう働き方だけじゃなくて、自分でモノを作って売る方法もあるし、今ってSNSがあるからこそ選択肢も広がる。教えてくれる人がいないから、情報をキャッチしながら、自分でサバイブするしかないですよね……。

ダニエル お金について気楽に話せるような環境を作るのも大事だと思う。「お金のことについて知らない=勉強不足=自己責任」みたいなムードになって、知らないことを言い出せない雰囲気になるのも何か違う気がするんですよね。だから、お金についてみんなで疑問を持ちながら学ぼうというトーンを作っていけたらすごくいいなぁって思います。

「仕事=好きなこと」である
必要はない

――今回実施したアンケートで、「将来やりたいことがなくて、どうしたらいいのか分からない」と悩んでいる声が大学生から多く編集部に寄せられました。ダニエルさんは10代の頃からやりたいことは決まっていましたか?

ダニエル 全然決まっていなかったですね。実は、医師や弁護士になってほしいという親からのプレッシャーがすごかったんですよ。でも、私はそういった職業には興味が持てなくて(笑)。子どものころから文章を書いたりするのが好きで、自分が感じたことを発信しているうちに、たまたま今につながった感じなんです。だから私の場合は、好きなことが仕事にもつながっていますが、アメリカでは今、「好きなことを仕事にしなきゃいけないという発想自体が違うんじゃないの?」という考えが広まっていて。大人は子どもに「“dream job”(=夢の仕事)ってなんですか?」と聞くんですが、そもそも労働すること自体が夢になってしまっていることがおかしい、と。別に好きなことじゃなくても、生きるために決まった時間頑張って働いてお金を稼ぐのも、それはそれで充分な生活なんですよね。

サチ たしかに、「好きなこと=仕事」という考えがプレッシャーにつながることもあるかも。あと、なんでもやってみるっていうのも必要かな。私の場合は、15歳のときにスカウトされてモデルになったんだけど、正直、こんなに続くと思わなかったんですよ。いろいろ迷ったんですけど「いつ辞めてもいいんだから、とりあえずやってみれば?」という親の一言に背中を押されて、幸運なことにたまたまそれが自分に向いていたという感じでした。

ダニエル そうそう、とりあえずやってみるって大事。仕事は別に好きじゃなくても、もう最低限のお金の収入のために9時~17時で頑張ってお金を稼いで生存する、でもOK。それ以外の時間で趣味に投資したりとか、時間を使って旅行行ったりとか……充分な生活ですよね。アメリカで広がっている“仕事=好きなことじゃなくていい”というこの考え、すごくエンパワーメントだなと思います。

vol.1
「本当に、今の自分じゃダメ?」
~ダイエットとセルフラブ~⁉

vol.2
「ずるい!」ベースの考え方って……
~人間関係とセルフラブ~

info
『世界と私のA to Z』著者:竹田ダニエル
Z世代って何を考えてるの? 
SNS、音楽、映画、食、ファッション……Z世代当事者がアメリカと日本のカルチャーからいまを読み解く画期的エッセイ!
▶もっと詳しく見る
2022年11月24日発売
定価:1650円(税込)

Interview&Text:Miho Otobe Illustration:HARUNA MAEDA