世界が認めたガールズバンド”CHAI(チャイ)”。「NEOかわいい」「コンプレックスはアートなり」というメッセージをグルーヴ抜群の音に乗せて届ける彼女たちが、ニューアルバム「PUNK」を発表。実はemmaが好きで、ViViを読んでくれているというCHAI。コンプレックスも愛しながら、自分なりのスタイルを追求して、自身を肯定して生きるCHAIのインタビューをお届けします♡
ニューアルバム『PUNK』には、「ファッショニスタ」という曲があります。これは、どういう想いから生まれたものですか?

CHAIはファッションがすごく好き! 私たちがモデルみたいに完璧じゃないのはもちろん分かってるんだけど、だからこそ余計に、自分に似合うものを見つけて楽しんでる。「こういうときはこれを着なきゃいけない」「こういう服を着たらモテる」みたいに正しいとされているものとか、流行りに左右されるんじゃなくて、自分なりのファッションの楽しみ方をみんなが持てたらいいなと思うんだよね。そういう楽しみ方を私たちが堂々と言いたいなと思ってできた曲。
自分に似合うファッションを理解するのって、簡単なことではないなって思うのですが、CHAIの4人はどうやって見つけていますか?

めっちゃ間違うよ。やってみて、失敗だなって。でも、なんでもやってみるかな。まずは真似から入ったらいいと思う。私には似合わないとか考えないで、体型や見た目関係なくオシャレを楽しんでほしい。
普段、ファッション雑誌は見ますか?

見る見る、『ViVi』もめっちゃ見る! 私はemmaちゃんのセンスが大好きで影響を受けてる。emmaちゃんは、普段の私服も本当にセンスがいいんだよね。男っぽいし、クールだし、でもかわいいものも似合うし、ピンクも着るし。私はemmaちゃんみたいに細くないけど、emmaちゃんに憧れてキャミソールを着たりする。それは、自分の体には全然自信がないけど、こういう体でも見せていいんだよっていう自信を出したいと思うから。
CHAIにとってファッションとは?

音楽とファッションは一緒だよね。すごく連携してると思う。私たちは聴いたことない、見たことないものが好きだから、CHAIの音楽はひとつのジャンルで表せるものじゃないし、一点しかない古着とかに惹かれるんだと思う。

音楽もファッションも、ちょっと違和感があるくらいのものが好きだもんね。

ファッションは、自分がより輝けて、よりハッピーになれるもの。着る服によって、より自信が出るもんね。だからなくてはならないね。
カナさんが言ってくれたように、今回のアルバムもひとつのジャンルで表せるものではなくて、タイトルは『PUNK』ですが、いわゆる音楽ジャンルの「パンク」のサウンドではないですよね。アルバムタイトルの『PUNK』には、どういう想いが込められていますか?

去年、海外メディアの人たちがCHAIの記事を書いてくれたときに、みんな「JAPANESE PUNK BAND」と表現してたの。最初は「なんで『パンク』なんだろう?」って疑問で。音楽はパンクじゃないし、勘違いされたなとも思った。でもよく読んでみたら、「世の中の価値観を変えたい」という精神性とか、「NEOかわいい」「コンプレックスは個性だよ」というCHAIのコンセプトがパンクだという意味で、「パンクバンド」と言ってくれていることがわかって。そこから「パンク」ってすごくいい言葉だなと思って、意識するようになったの。去年Superorganismと一緒に海外ツアーを回ったんだけど、そのときの刺激が本当に強くて。気持ちの面でより強くなりたいし、なりたい自分になりたいし、もっとわがままに生きたいし、CHAIがなりたい方向に自分たちでなる! という想いで『PUNK』にした。

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「パンク」という言葉には、社会に抗ったりアンチテーゼを掲げたりする姿勢のイメージもあるけれど、CHAIが言う「パンク」は、それとはまた少し違う?

窮屈なことなんてめちゃくちゃあるんだけど、でも戦いたくはないんだよね。

うん、攻撃とか、そういうことじゃないよね。

相手はいらないし、戦わなくていい。誰かと比べるわけではないから。そもそも比べた時点で終わりだって思うしね。
「戦わない」というのは、CHAIが最初から大事にしていたことですか? それとも最近思うこと?

最初から戦う気はなかったかな。戦ってハッピーになることはないよねって、最初から思ってた。
CHAIの知名度が上がれば上がるほど、CHAIに対する攻撃的・批判的な言葉が耳に入ってくることもあると思うのですが、そういうときはどういう気持ちになりますか?

気にしない! 言いたい人には言わせとけ、みたいな。

4人でいるからね。「気にしないでいいよ」って言い合えるし、それはやっぱり心強い。

うん。4人だからいろいろしゃべれるし、守り合えるし。
さきほど「窮屈なことはめちゃくちゃある」と言ってましたが、どういうことに対して感じますか?

毎日悩むことはいっぱいある。やっぱり、どうしても「カワイイ」という言葉に対しての窮屈さは日々感じるかなぁ。誰も決めつける権利なんてないのに、「細くなきゃ」とか、いろんな固定概念があるから。「カワイイ」の価値観を変えるには、私たちが私たちのやりたい音楽をやって、認めてもらうことが重要だなって、去年はより強く思った。

去年いろんな国に行って実感したよね、「世界中みんなコンプレックスがあるんだ」「完璧な人はいない」って。だからこそ、私たちは間違ってない、合ってる! とも思った。

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年明けには、中国&台湾ツアーに行っていましたね。『ViVi』は、中国・台湾・香港にも読者がいるのですが、中国はどんな印象でしたか?

中国人は、すっごくエネルギッシュだった。

同じアジアなのに、日本人とは全然違うなと思った。「自分はこれ」という気持ちがあって、我が道を行ってた。人にどう見られても平気で、自分のやりたいことをやりたい方法でやるから、強いなって思ったな。ライブの盛り上がり方も、欧米に近かったよね。

いろんな国でライブをしていると、やっぱり日本って島国だなと感じることはあって。日本人はライブでおとなしく聴く人が多いでしょ。それがいいところでもあるんだけど、日本から飛び出たら、どこでやっても超盛り上がるんだよね。
ニューアルバムの1曲目「CHOOSE GO!」は、中条あやみさんが出演するGUのキャンペーン「GU CHANGE」のテーマ曲です。この曲にはCHAI自身の「変わりたい」という気持ちが溢れていながらも、その歌い出し<HEY! DO YOU KNOW WHAT’S THE REASON? 強気にステップふめるわけは HEY! DO YOU KNOW WHAT’S THE REASON? 無敵にスマイルできるわけは>は、アルバム全体の問いかけを表しているようにも思いました。

うん、そうなってる。

なったねえ。
そこでCHAIに聞きたいのは……CHAI自身が窮屈さやコンプレックスを抱えながらも、強気なステップ&無敵なスマイルを手にできている理由はなんですか?

CHAIがおるし音楽があるから。

本当にそう、CHAIがおるから。CHAIのいない場所にいると、不安になったり気持ちが揺らいだりする場面はいっぱいある。CHAIがおらんと、強くはなれないんだなって。

アルバムには「FAMILY MEMBER」という曲がありますが、それはCHAIの4人の関係性を表す言葉だとも言えそうですね。

CHAIは、女同士だから、同世代だから、仲がいいというのもあるんだけど、それ以上に「人間同士」という感じで。人間としてのいいところをお互い認め合ってるからこそ任せられる、という関係なんだよね。
<大人になるって もっと自分とちがう人とふざけ合える そうなればいいな>という歌詞は、パンチラインだと思いました。

ありがとう! CHAIのチームには、年下から、お父さんお母さんより年上の人もいて。でも、みんな本当にフラットでいい関係なんだよね。一緒にふざけて、馬鹿話して、「わー!」って言える。しかも去年は海外でもいろんな関係ができて、お世辞じゃなくて愛をいっぱい受けたんだよね。世の中には、先輩後輩、上司部下とか、いろんな問題があると思うけど、本当はみんなこういう関係になれると思うし、そうできる世界ならいいなと思って書いた曲。
大人になるというのは、他人の間違いを指摘したりするんじゃなくて、誰かの弱いところやダメなところも笑って受け入れるようになることだ、というふうに受け取りました。

みんな、なにがなんでも歳はとるじゃん? 私は大人になるより子どものままがいいって思ってたんだけど、「大人になることのいいところってなにかな?」と考えたときに、大人になってからこそ、みんなとフラットな関係で仲良くなれて、人間を味わえるんだなと思って。人間同士の関係ってこんなにも楽しいから、大人になるのはいいなって去年は気づいたんだよね。

今回のアルバムで、サウンドメイクにおいて挑戦したことは?

今回は、1曲1曲を別物にしたよね。

挑戦だったのは「THIS IS CHAI」かな。この曲は、ほとんど生の楽器でやってない。ドラムは一応叩いたんだけど、そんなに反映してなくて。エンジニアの今本修さんと一緒に音を作っていったんだけど、そういう作り方をしたのは初めてだったんだよね。
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サウンド作りもファッションも、「なんでもトライしてみる」というのがCHAIの姿勢だと言えそうですね。

そうだね。どんどん新しいことをやっていきたいもんね。自分たちが飽きちゃダメだし。
今後共演したい人はいますか?

えー! いっぱいいるよ!

Justice、Phoenix、DEVO、Basement Jaxx、Bruno Mars、HiNDS、Tune-Yards、Passion Pit、HONNE、The xx……。
海外ミュージシャンの名前がどんどん挙がってきますね。デビュー当初から掲げていた『グラミー賞』の夢には、近づいている実感がありますか?

より距離を感じられるようになったよね。

うん、海外に行けば行くほど「遠い」って感じるね。

でも、それはいいことなんだよね。

そう、現実的に実感できているということだから。だからこそ、『グラミー賞』の夢は言い続けたいね!


撮影/小林真梨子 取材・文/矢島由佳子