700万人に迫るチャンネル登録者数を誇る動画クリエイターグループ・東海オンエアの虫眼鏡さんが、このたび5冊目の著書を刊行。自身の個人チャンネル『虫眼鏡の放送部』に寄せられたお悩みと、それに対する有益すぎる回答をまとめたものです。
そこで新著の中身をちょっとだけ教えてもらうとともに、東海オンエアとして活動10周を迎えようとしている今、「継続」というテーマからもいろいろとお話をお伺いしました。仕事、そして“LOVE”の、虫眼鏡的継続の秘訣とは……?
運命の人に気づかせてくれたお便り

――これまで4冊リリースしてきた『虫眼鏡の概要欄』シリーズに続き、このたび5冊目となる新著が発売されました。個人チャンネルに寄せられたお悩みへの回答集とのことですが、我ながらこれはベスト回答だったな、と思うものを教えてください。
虫眼鏡 22Pに載ってるやつですかね。「今の彼が大好きなんだけど、夢に出てくるのは元カレなんです」という。それでやましさを覚えていらっしゃるとのことだったんですけど、そのとき僕は「脳で恋愛するか心で恋愛するか」みたいな話をしたんですね。正直、そこまで深く考えずに言葉にしたんですけど、これが言ってみてすごい自分で腹落ちしたんですよ。なるほどね!って。それで今年の3月に結婚した、みたいなところすらあるんです。というのも歳をとってからは、言葉を選ばずに言うとちょっとモテるようになって。「どういう人と結婚しようかな」と頭でいろいろ考えていたんですけど、そうするとめちゃくちゃ答えが難しかった。だけどこの回答をしたとき、「そっかー、僕も心で恋愛をしていたときがあったなあ」と気づいて。おかげで今の妻に出会ったとき、全く悩まなかったんですよね。結婚も、けっこう早かったし。
――心で選ぶか、頭で選ぶか。めちゃくちゃ参考になる基準ですね。
虫眼鏡 恋している人はいっぱいいますけど、明確に2パターンいるというか。めっちゃラブラブなカップルと、何なら彼氏の悪口言いながら付き合ってるみたいなやつと(笑)。まあどっちも良さはあるんだろうけど、僕はどっち向きなんだろうな?って考えてみたんです。
――そうやって相談に答えながら、自分の中で答えが整理されていくことはあるんですか?
虫眼鏡 よくありますね。編集ありきのラジオなんで、まずお便り読ませてもらって、そこから一回ウーンって考えちゃうときもあるんですね。そういうときは、自分はこの問題に対してどういう考え方を持っているのか?と、ちゃんと頭の中で整理してから喋るんですけど、普通に生きていて、「そういえばこの問題についてしっかり考えてみよう」って思うこと、あんまりないじゃないですか。でもいろんな種類のお便りをもらっているので、それぞれの問題において自分の頭が整理できるようになってきて。だから聞かれたことに対して、「僕はこう思う」って答えられる速度が上がったなと思いますね。鍛えられたというか。
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ラジオを始めて人間が丸くなりました
――いろんな種類のお悩みがきて、真摯に考え答えていくうちに、実生活の中でも考え方に変化が出てきたりしました?
虫眼鏡 このラジオを始めたときから僕は、一貫して言ってきたんです。どの回答もあくまで僕の考えなので、それを鵜呑みにしないでほしいし、虫さんが言ったんだからと変に価値を付与しないでほしい、と。加えて念押ししたのが、僕とは全然違う意見の人もいると思うけどケンカしないでほしい、ということ。アナタの意見はアナタの意見で素晴らしいし、僕は僕でこういう意見を持っている。それはどっちも正解でいいと思うので、争うのだけはやめません? つまんないんで、……ってずっと言い続けてきたんですよ。
――たしかに、そう言っておかないと収拾がつかなくなりそうですもんね。
虫眼鏡 お便りを送ってくれた人がいて、でもそのお便りが原因でコメント欄でモメちゃったとかなったら、むしろ「もうお便り送りたくないよ」って思われちゃうだろうな、と。ラジオという媒体をやるのであれば、それだけは絶対やめようと自分の中で決めてやっていたんですけど、そうすると僕、気付けば何事にも腹が立たなくなったんですよ。へえ、君はそういうヤツなんだ、と思えるようになりまして(笑)。
――それまではけっこう違ったんですか?
虫眼鏡 まあ、そうですね。自分の考えと違うことを言ってる人がいると、なぜか自分の考えをぶつけに行きたくなっちゃうところがあったんですけど、これ別にしなくていいじゃん、と気付きましたね。「アナタにとってその考え方が気持ちいいのならそれでいいです、変だけどね」って変わりました(笑)。
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死ぬまで東海オンエアでいられたらそれでいい

――東海オンエアは活動10周年を迎えられますよね。続けるって何より難しいことだと思うんですけど、その秘訣は何なんでしょう?
虫眼鏡 10年間やってきて、「疲れた」とかはないんですけど、「アイディアが枯れそう、この田んぼヤバイ」っていう状況に片足をツッコんだことはよくあります。そういうときは“いい場所”に戻るというか。初心にまで戻らなくていいから、めっちゃ良かったときに一回戻ろう、というのをやります。
――具体的にはどんなことを?
虫眼鏡 たとえば僕がよくやるのは、「これはすごい面白かった」と自分が思う動画を見返したり、自分が大活躍した動画を見返してそのコメント欄の称賛の言葉を浴びたり、ということ。そういうところに戻ってみると、「はは~ん、俺はこんなに才能があるんだからここで埋もれさせちゃいけないな」というメンタルになるなと感じたんですよ。まあでもこれ、ある程度継続できているからこそ“継続できるヒント”が得られるっていうことで、トンチみたいになっちゃいますけど(笑)。でもそれこそが、頑張って続けてきたご褒美なのかなとも思いますね。
――モチベーションにつながるような新しい夢とか目標とかは、どんどん出てくるんですか?
虫眼鏡 ないですね。インタビューのたびに「東海オンエアの次の目標は?」って聞かれるんですけど、いつも「ないな~」と思っていて。というのも究極的な目標として……、本当はこれ照れくさいんで言いたくないんですけど、僕は死ぬまで東海オンエアで一緒にいられれば何をやっていてもいいなって思うんですよ。だから「次はこれをしたいです」とかはなくて、ケンカしなきゃいいやっていう感じです。……まあもう30歳ですから、しないですけどね。
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あらためてファンの名前を覚えたい
――ファンの人についてきてもらうためにやっていること、逆にやらないようにしていることってありますか?
虫眼鏡 さっき言ったことと違うじゃんと思われるかもしれませんが、僕が個人的に今年の目標として書初めで書いたのが、「初心」なんですよ。何でかっていうと、やっぱりもう10年目になって、自分を取り巻く環境に慣れてきちゃったところがあって。もともと僕たちはド素人から始まった人たちなんですけど、今や「ファンいるわな」、「Twitterのフォロワー100万人いるわな」というのが当たり前になってしまっている。僕が1個ツイートするといっぱいリプライが来ますけど、そこでただ「いっぱい来てるなあ」と思うんじゃなくて、「一人一人がこんなにたくさんいるんだ」っていう感覚を改めて思い出さなきゃいけないなって。
最初の頃って、僕のこと推してますって言ってくれる人の名前を全員覚えていましたし、その人にリプライを返したりするのがすごい楽しかったので。何ていうんでしょうね、「仕事だから」とかそういうメンタルじゃなくて、もうちょっと昔やっていたような“触れ合い”というか、そういう“ファンへの時間の使い方”をもう一回思い出したいな、とは心がけていますが……。
まあ長々言いましたけど、ひと言でいうとファンの名前をあらためて覚えたい、ということです。
――それってすごい数ですよね……。
反省はするけど後悔はしない
――意識していることといえば、本の中で「反省はするけど後悔はしない」と書かれていました。これは具体的にはどういうことなんでしょう?
虫眼鏡 とくにインターネットの世界で生きていると、なんですけど……。自分たちの「失敗しました、ごめんなさい!」という姿を見せるのって、日本人的には「当然すべきもの」という感覚ですよね。そうやって学校の先生にも教えられましたし。だけどインターネットの世界って、必ずしもそれが正解じゃないよなと感じるというか。いつまでたってもそこで揚げ足をとってくる人もいますし、わりと弱気に「すいませーん、次から頑張ります」ってスタンスでいると、気持ちが落ちていっちゃうというか。説明が難しいんですけど、ちょっと強気にいかないとメンタルがもたない部分があるなと思ったんですよ。そんなに生ぬるい人たちばかりじゃないので。そういう意味で、反省はもちろんして次に生かすけど、「あれはやるべきじゃなかった」とかネガティブなことをわざわざ発信して共感してもらう、みたいな作戦は嫌だなって、僕は思うようになったんです。
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ラブラブ期はどう頑張っても永遠には続かない

――虫眼鏡さんは今年の4月7日に結婚を発表されましたよね。“LOVE”における継続についても是非いろいろとお聞きしたく。著書の中で、「どうやって運命の人だと分かったのか?」とまわりによく聞いていたと書かれていましたが、どういう答えが多かったんでしょう?
虫眼鏡 全員、二択でしたよ。勢いか、流れ。本当に、全員一緒でした。
――虫眼鏡さんはどちらで?
虫眼鏡 僕も勢いですね。
――お相手に対して、「この人が運命の人だ」と分かった瞬間ってあったんですか?
虫眼鏡 正直、頭で恋愛している人は運命の人って分からないだろうな、って思うんですよね。僕は、「頭で恋愛するのって上手くいかないわ~」というのを何回か繰り返して、久しぶりに「これ、めっちゃ一緒にいたすぎて仕事行きたくなくなるタイプのやつだ!」と思ったんですよ。だから「ああ、これが心の恋愛だな」と思ったんですね。で、そのときの僕は「頭の恋愛」は自分にはダメだと分かっていたので、「じゃあこっちなんだ」と思って。だからその瞬間が「運命の瞬間ですね」と言われたら、それでいいですよって感じですけど。まあでも、こういう理詰めな選び方をしている時点で「頭の恋愛」なのかもしれないですけど(笑)。それはどうあれ、僕はそうしてこの人を選んだんだからタイミングも何もないよな、と思い結婚したわけです。だからそういう意味では勢いだった、ということですね。
――とはいえ恋愛や結婚においては、ラブラブ期がずっと続かないというのが悩ましいところだと思います。虫眼鏡さんは、心がけ次第でずっと続くと思われますか? あるいは、続けるためにこうしていこう、みたいな考えはお持ちですか?
虫眼鏡 僕はどう頑張っても続かないと思いますね。愛の形って、「女として抱きたい」的な“好き”から、家族として守りたいという“好き”に、逆に変わらないと怖いじゃないですか。なので絶対変わっていくだろうなとは思うんですけど、その「俺は変わるぞ」と思っていることこそが大事なのかなと思っていて。そこで「あれ、前みたいにずっとチューしたいと思わなくなっちゃったから好きじゃなくなったのかも」とか、勘違いしないようにしたいなって。そうじゃなくてこれは正当に僕が大人の男になったというだけなんだ、と思うようにしたいと思っています。
――今ラブラブなのに、もうそんな心の準備をしているんですね!
虫眼鏡 それはけっこう、このラジオでいただく数々のお便りにそう思わされたところが多くて。僕より年上で結婚されていて、という方からもたくさんお便りをいただくんですけど、やっぱり昔はこうだったのに今はこんなふうになっちゃって……というものもたくさんあって。そうやって僕も先輩からたくさん学ばせてもらっているんで、変わっていくのが当然なんだろうなって心構えができてますね。
――著書の中にあった「人間には内と外と他所がある」というお話は興味深かったです。人間は本当に心を許している「内」の人と、自分に全く関係ない「他所」の人には雑になるという。こういう考え方を心の片隅に持っておいたりすると、二人の関係も続きやすくなるのかなって思いました。
虫眼鏡 このフレーズは何かの受け売りなんですけど……。結局、結婚とか恋愛における関係性って、一番大事にしなきゃいけない存在から、自分のことを何でも分かってくれる、むしろ助けてよね、という相棒に上がっていくものじゃないですか。いや、下がっていくのかもしれないですけど。そう思うと、「昔はこうだったのに」って比べるのもナンセンスだと思うんで、やっぱり変わっていくんだなーと思っておくべきというか、「この私というイモムシはいつかサナギになってチョウチョになっちゃうんですよね」とでも思っておけば、相手の態度が雑になってきても、そんなにびっくりはしないんじゃないかなって思いますけど。まあでも、まだ僕はラブラブなんで。
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今のうちにいっぱい経験を積んでください
――では最後に、人生の先輩としてViVi読者に「これ」というアドバイスをいただけませんでしょうか?
虫眼鏡 そうですね……、ラジオでは皆さんからお便りを送ってもらって、それに僕が答えるという形式をとっているんですけど、半分くらいは恋愛のお悩みなんですね。それらは似ているようでも一人一人状況が違っていて、毎回僕もどうやって答えようかなと悩んだりするんですけど、そのときに思うのが、やっぱり経験値ってすごい大事だなということで。もちろん、初めて付き合った人と結婚しましたっていうのもすごく素敵なことだと思いますけど、「いやこれ、もうちょい慣れてたら何てことないよな」ということですごい悩んでる子がたくさんいるんです。ViViの読者さんは若い方が多いと思っているので言うんですけど、だからこそ今のうちにいろんな経験をしてほしい。悪いことも……っていうか、難しいですね、言い方が。大人になったらこれはちょっとやれないなっていうことを、是非今の年齢だからこそチャレンジしてほしい。……という、良くないアドバイスをしておきます(笑)。
――失敗を恐れずに経験を積め、ということですよね。
虫眼鏡 結局、経験値を積み重ねて“カンスト”したところで、「じゃあもう結婚してもいいか」となっている人が多い気がするんです。だから今経験を積んでおかないと、他の人から遅れたところで「どうしようどうしよう、どうしたらいいですか虫眼鏡さん」となってしまう。実際、そういう人がたくさんいるので、「だから学生時代に告白ぐらいしておけば良かったのに」とか「他の人はその時代に絶対してたよ」とか、何回も言ったことがあるんですけど。
ということで、是非今のうちにいろいろチャレンジしておいてほしいなって。そうすると大人になったとき、だいぶ余裕をもって恋愛できるようになるんじゃないかって思いますね。
――経験の積み重ねも、“継続”の秘訣の一つなんでしょうね。素敵なアドバイスをありがとうございました!

『東海オンエアの動画が6.4倍楽しくなる本・極 虫眼鏡の放送部エディション』講談社刊 ¥1500+税
東海オンエア・虫眼鏡のラジオ『虫眼鏡の放送部』で配信された、リスナーからのお悩みと虫眼鏡の回答をまとめた1冊。恋愛相談から様々な人生相談、さらにはちょっとエロい相談ごとまで、至ってマジメに、役立つ回答を授けてくれています。東海オンエアの活動が10周年を迎えたことについて語った、書き下ろしエッセイも掲載。
虫眼鏡
1992年、愛知県岡崎市生まれ。愛知教育大学教育学部卒業。小学校教員を経て、愛知県岡崎市を拠点に活動する6人組YouTubeクリエイター「東海オンエア」のメンバーとして活動中。著書に、動画概要欄に書き連ねたエッセイを書籍化した『東海オンエアの動画が6.4倍楽しくなる本 虫眼鏡の概要欄』シリーズ、『東海オンエア虫眼鏡×Mリーガー内川幸太郎 勝てる麻雀をわかりやすく教えてください!』(共著)があり、動画以外にも活動の幅を広げている。
Photos:Tohru Daimon
Interview&Text:Naoko Yamamoto