神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動している芸人「9番街レトロ」の京極風斗(きょうごく・かざと)さんは、極端なほどに“0か100か”で生きている。今回は、「貯金1億」「借金1億」という0か100かをテーマに、物語形式(!?)も取り入れながら京極さんが考える「本物のお金持ちってこんな人」について語ってくれました。お金の大切さを見直す機会にもなると思うので、ぜひ最後まで読んでみて!
9番街レトロ・京極風斗
連載【0か100かで生きてゆく #48】
ー 本物のお金持ちになろう ー

Illustration: Kazato Kyogoku
ちょっと不思議なお金の話
皆さんお金は好きですか?
嫌いな人はいないですよね。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」なんていいますが、お金だけは例外かもしれません。
ぜひ過ぎたってもらいたいものです。
しかし、「通貨」という概念に疑問を持ったことはありませんか?
例えば1000円の商品を一万円札で支払うと、大体は五千円札が1枚、千円札が4枚という形で9000円のお釣りとして返ってきますよね。
子供の頃の僕は、親と店員とのそのやり取りに疑問を持ちました。
商品を貰えたうえに、「1枚」のお金が、「5枚」になって返ってくるからです。
「買い物をすればするほど、お金が増える」と思いました。
可愛いですよね。
大人になった今考えればバカバカしい話ですが、あながち間違っていない考え方だなとも思うのです。
Page 2
例えば先程のやり取りが、紙幣でなく、純金の板で行われていたらどうでしょう。
その場合、子供の頃の僕が言う通りになりますよね。
なぜなら、純金はそれ自体に物質としての価値があるからです。
1枚の純金の板を渡して、5枚の純金の板が返ってきたら、本当にただのラッキーですからね。
それに対して、紙幣の物質としての価値は、純金に比べれば、ないに等しいと言ってしまってもいいでしょう。
いくら特別な用紙とはいえ、「紙」なので。
ここからが不思議なんです。
かなりの極論ですが、人類が一斉に、「これはただの紙だ」と我に返ったら、紙幣に意味はなくなるわけですよね。
なぜ人類は、ただの紙に書かれた数字を「価値」として盲信できるのでしょうか。
その理由を頭の片隅に置いておくと、将来お金で苦しむことが減るかもしれませんので、ぜひ叩き込んでください。
「紙幣」の正式名称をご存知でしょうか。
「日本銀行券」といいます。
その名の通り、日本銀行が発行している「お買い物券」なんですね。
日本銀行が、「この紙には1万円の価値があります」と、「保証」しているんです。
そして、「あの日本銀行が保証しているのなら間違いはない」と、みんな信じています。
要するに、「数字の書かれた紙」自体に価値があるわけではなく、「日本銀行が責任を持っている事実」に価値があるわけです。
つまるところ、お金とは、「信用」を数値化したものなんですね。
貯金が1億円ある人間の事は1億円分信用できて、借金が1億円ある人間のことは1億円分信用できないんです。
「社会的には」ね。
実際のところ、「貯金1億円の信用できない人間」も、「借金1億円の信用できる人間」も存在しますよね。
よく聞く、「お金が全てではない」という話が、ただの綺麗事ではないということを今から物語形式で説明します。
Page 3
胡散臭郎さんと人望厚郎さん
むかしむかしあるところに
貯金1億円の信用できない人間「胡散臭郎(うさんくさろう)」
と、
借金1億円の信用できる人間「人望厚郎(じんぼうあつろう)」
が住んでいました。
胡散臭郎には、友達がいませんでしたが、口座に、何で稼いだかは誰も知らない1億円がありました。
時折、その1億円に釣られて媚びへつらうバカもいましたが、胡散臭郎の人間力の低さに呆れて、すぐに離れていきました。
それでも、胡散臭郎は困りません。
なんたって自分には1億円の資産があるから。
毎日新しい服を着て、毎日高級料理を食べ、家賃100万円のマンションに住んでいました。
みんな、胡散臭郎の経済力を信じているから、優しくしてくれます。
お金があるって最高です。
人望厚郎は、町中の人気者でしたが、親が遺した1億円の借金を抱えており、毎月の給料は利子だけで消え去りました。
時折、人の良さにつけ込む悪い人間にも出会いましたが、人望厚郎はそんなバカにも愛を与え、たくさんの人間を更生させました。
だから、人望厚郎は困りません。
なんたって自分には計り知れない信用があるから。
毎日新しい服を貰い、毎日高級料理を奢られ、友達が持っている家賃500万円のマンションにタダで住まわせてもらっていました。
みんな、人望厚郎の人柄を信じているから、優しくしてくれます。
信用があるって最高です。
10年後の2人はどうなっているのかな……。
いいお話でしたね。
要するに、人望厚郎には、2億円分以上の信用があるため、資産として1億円持っている胡散臭郎よりも結果的に良い生活をしているということです。
まぁ、世の中そんなに都合よくはできていませんし、「2億円分の信用」ってのも現実味の無い話ではありますが、あくまでも、通貨が「一番わかりやすい価値なだけ」ということを忘れないでもらいたいのです。
もし「お金は信用度を可視化しただけのもの」だとすれば、この世で一番愛されている人間が、この世で一番お金持ちだといえるかもしれません。
確かにお金は大事ですが、「なぜ大事なのか」をたまに思い出してくださいね。

photo by: Ryo (Kotora)
連載『9番街レトロ・京極風斗の0か100かで生きてゆく』は第2・4水曜日に更新!
!!! INFORMATION !!!
2023年9月に東京・大阪で主催ライブが決定!
●9番街フェス2023in東京
9/15(金)18:30開場/19:00開演/20:30終演
場所:銀座ブロッサム(中央会館)ホール
料金:前売り¥3000/当日¥3500/配信¥2000
●9番街フェス2023in大阪
9/30(土)18:30開場/19:00開演/20:30終演
場所:大阪市中央公会堂 大集会室
料金:前売り¥3000/当日¥3500/配信¥2000
●即興60分漫才
9/9(土)17:30開場/18:00開演/19:00終演
場所:神保町よしもと漫才劇場
料金:前売り¥2500/当日¥2800/配信¥1500
チケットの購入はこちらから
1995年8月9日生まれ。大阪府出身。吉本興業所属のお笑いコンビ。2019年4月1日に9番街レトロを結成。神保町よしもと漫才劇場を拠点に活動中。
個人チャンネル「京極風斗の道楽ちゃんねる。」ではアートとインテリアを軸に、好きなことを配信。
コンビのYouTubeチャンネルでは日々の出来事やネタの動画を配信。
そのほか、絵が得意で自らデザインしたオリジナルグッズをSUZURIで販売している。
Twitter @9th_kyogoku
Instagram @9th.kyogoku
9番街レトロってどんなコンビ?
\ 直撃インタビューしてみた /
Photo: Ryo (Kotora) Text & Illustration: Kazato Kyogoku