皆さんこんにちは。花上惇(はなうえじゅん)です。私は普段SNS上で女性達をエンパワーするコンテンツを発信するトランスジェンダー。私も皆さんも、社会の荒波に揉まれながら必死に生きているのではないかしら。本連載では、そんな私が日頃気になっているトピックをpick upして、その時の等身大の思いや考えをシェアしたいと思います。

花上惇連載#28
「ファッションの自由と責任」

連載第28弾では、最近、話題にも上がった露出度が高い服の着こなしについて、私の体験談を踏まえて考えを語っていきたいと思う。

「ちょっと露出多くないですか?
もっと自分を大切にしてください」
先日出席したイベントで、背中が大きく開いた、いわゆる“びんぼっちゃまスタイル”の衣装を着用した。確かに露出は多いが、肌当たりの柔らかなサテン生地で美しいデザインだと思った。
イベントは大盛況で、集まった参加者の方々も各々ファッションを最大限に楽しんでおり、改めてファッションとは自由で素晴らしいものだと感じた。
しかし、会場で撮影した写真をSNSに投稿したところ、一部予想外の意見が私の元に届いた。
「ちょっと露出多くないですか?もっと自分を大切にしてください。」(原文)
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好きな服を着る=私自身を愛する事
露出の多い服装に対する“否定的な意見”が予想外だったというわけではない。そんなことは初めから分かっている。
私は“露出をすること=自分自身を蔑ろにすること”だと考える方がいることに驚いたのだ。
どんな意見も個人の自由なので、この方の意見を否定するつもりは毛頭なく、むしろ尊重したい。
ただ私にとって、自由に好きなファッションを楽しむことは、気分を高揚させ、自分で自分の機嫌を取る方法の一つだった。そして、それは自分自身を大切にし、愛することと同義だったのだ。
私たちは誰しも、着たい服を着る自由がある。しかし、その“自由”には責任が伴うとも思う。あらゆる可能性を考慮し、対策を打つことも非常に重要。
私は当日、行き帰りの移動には電車ではなくタクシーを利用し、そのうえで、さらにカーディガンを羽織ることで視界の刺激を緩和するよう努めた。
それは性的被害の可能性と、「お前の露出なんか見たくねぇよ」と思う方、両方への考慮と配慮。
私の場合は後者が大半だとは思うけれど(笑)。

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露出の多い服を着るのはダメ?
先月、大阪府で行われた野外イベントにおいて、韓国人女性DJが観客から性被害を受けた事件。
加害者が100%悪いという意見のほか、露出の多い服装や、観客との距離感、そして運営側を責める意見も見受けられた。
大前提として、いかなる性加害も許されない。
私も加害者が悪いという意見には100%同意であり、どんなことがあっても、無許可で他人の身体に触れていいはずはない。
しかし、今後同じような事件が起きないように議論すべきは、危機管理や警備体制の不備・不足についてではないだろうか。
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自由には責任が伴う。しかし“何をされても自己責任”という訳ではない
私は、自由な衣装でステージに立つという自由と権利を支持している。それに加え、その自由に伴う責任として、あらゆる可能性を考慮し、対策を打つことが非常に重要だと考えている。
運営側は、演者と観客間で起こり得るトラブルをしっかり想定していたら、フェンスを二重にすることで双方の距離を一定に保ったり、観客同士の二次被害も視野に入れてセキュリティを増員したりといった対策を講じることができたはず。
そして何より、露出が多い衣装を着用していたからといって、“何をされても自己責任”ということではない。他者の行動を完全に予測し制限することは不可能だから。
極論、公然わいせつでなければどんな服装を着ても良い。ただ、他者が関わるすべてのケースにおいて“自由”には“責任”が伴う。
トラブルを予測し、それらを未然に防ぐ行動をとるように努める。考慮と配慮。
そのうえで、素敵なファッションを楽しむということが大切だ。

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花上惇(はなうえじゅん)
SNS総フォロワー約60万人。ポジティブなマインドを発信するオリジナル動画がクセになると注目のインフルエンサー。独学で学び流暢に英語を話す姿にも反響がある。2020年には『THEカラオケ★バトル』で優勝した経験も。
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Model&Text:Jun Hanaue
Photo:Yuzo Touge
Styling:Yoh U(TRON)
Hair:Saya Yamamoto
Composition:Arisa Uchida