新海誠監督の最新作『天気の子』で、祈るだけで空を晴れにできる力を持つ不思議な少女・陽菜の声を担当した森七菜さん。新海監督は、「天気みたいに、感情がくるくる変わるところが似ていたから。陽菜のことを教えてもらえるかもと思った」と、彼女を起用した理由を本人にそう伝えたという。
また、高1で離島から家出してきた少年・帆高の声を担当した醍醐虎汰朗くんに対して監督は、「醍醐くんは帆高、帆高は醍醐くんだから。自然にやればいいよ」とアドバイスをした。
ViViの取材中、醍醐くんは繊細だけど大胆な“ザ・男子!”、七菜さんは天然なんだけど負けず嫌いで、すぐムキになるところがカワイイ印象でした。2000人のオーディションの中から選ばれた二人に、映画のことや、今自分たちが生きている青春の時間のこと。様々なテーマで話をしてもらうと……?
『天気の子』に関わっているときは、日常生活がずっとアニメみたいにキラキラしてた。
ViVi:醍醐くんと森さんは、ドラマ『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)で共演していますね。
七菜:そうなんです。『天気の子』のオーディションで再会したとき、醍醐くんは、「ドラマのときはほとんど話してないよね」みたいなことを言って…………あれはショックだった〜! 一緒に、小道具にお絵描きしたこと、覚えてないんだなと思って。私は、オーディション会場で見つけてすぐ、「あ、ゴダイゴの人だ!」って気づいたのに!
醍醐:ゴダイゴじゃないし(笑)。
七菜:でも、醍醐くんも緊張しているはずなのに、私が思い切り深呼吸しながら、「ふー」とかやってたら、「何やってるの?」って笑いながら声をかけてくれたね。そのとき、ちょっと緊張がほぐれて、「あれ、実は優しいのかな?」って思いました(笑)。
醍醐:“実は”じゃなくて、普段からちゃんと優しいの俺は!! でも、オーディションで、初めて“帆高”と“陽菜”になってお芝居を一緒にしたとき、一回ぱっとやった段階で、「(陽菜の役は)森さんになるな」と思ったよ。アフレコのテストが終わった後、マネージャーさんに、「きっと、森さんがやると思う」って言ったぐらい。すごく陽菜っぽかった。やりやすかったし、楽しかったです。
七菜:ありがとう(照)。私は、自分のことにいっぱいいっぱいで、あんまり覚えてないんだけど、私もオーディションが終わった後、「(帆高が)醍醐くんだったらいいな」ってマネージャーさんに言った…………ような気がする(笑)。私も、醍醐くんとやっている時が、一番うまくいったかなと思った。
醍醐:でも、森さんは、オーディションを受けるまで、新海監督の映画を見たことがなかったんでしょ(笑)?
七菜:それは言わないで(汗)! だって、大分の田舎に住んでいて、『君の名は。』の公開時はまだ中学生で映画館も遠かったし……。でも、オーディションを受けることが決まってからは、一気に全部見ました。『君の名は。』、リアルタイムで見たかったなぁって。醍醐くんも、すごく新海監督の作品を研究したんでしょ?
醍醐:そう。オーディションの前、自分の声を録音して、こんな感じかなとか、ちょっと違うなとか。でも、オーディションのためのビデオテープを作っている時点では、絶対無理だろうから、ダメ元で受けるくらいの感覚だった。でも、選考に受かってからは絶対にこの役をやりたいと思い、1次審査、2次審査って進んでいくと、必死になっていきました。
七菜:それわかる! 私も、オーディションが進んでいくうちにどんどん楽しくなって、もっとやりたい、もっとやりたいって思った。特に陽菜は、感情がコロコロ変わっていくので、台本を読みながら、自分の気持ちが追いつかなくて。「次の審査まで進めたら、もっと上手にやれるかもしれないのに!」ってどんどん欲張りになっていったの。あれは、自分でもビックリした。
醍醐:決まった直後はあんまり実感が湧かなかったけど、本格的にアフレコが始まったとき、頭の中で、「始まった……」っていう自分の声が、ナレーションみたいに響いたんだ(笑)。なんか、この作品に関わっているときは、日常生活がずっとアニメみたいにキラキラしてた。ところで、森さんは、声優やるために何か準備したことってあった?
七菜:ちょうど、来年公開の『Last Letter』という映画の撮影で、神木隆之介さんと共演をしていたので、アドバイスをいただきました。実際のお芝居のときと、声だけのお芝居のときの、声の抑揚のつけ方の違い、とか。実際、アフレコをやってみて、「(抑揚が)まだ足りない」「まだ足りない」って思い、神木さんがおっしゃっていたことを実感しました。
醍醐:それは、なんかわかるなぁ。難しかったよね。

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霊とかUFOの存在って信じてる?
ViVi:ところで、映画の中で帆高は、ひょんなことからオカルト系雑誌の編集者として働くことになります。お二人は、霊とかUFOを信じますか?
七菜:信じます! 信じざるを得ない経験をしたことがあります。……っていうか、あるんかなぁ……? 昔住んでいた家にすごく長い廊下があって、その廊下の突き当たりの壁に鏡があったんです。その鏡越しに、包丁で刺された女の人がいた……? みたいな雰囲気があったんです(しどろもどろ)。それが怖すぎて、私が作り出した幻想なのか。とにかく霊は怖いです。でも、いると思います。ゴジラはいるかどうかわからないですけど。
醍醐:(ゴジラは)いないでしょ(笑)! 霊だって、絶対“いない”と思っていたほうが幸せだよ。もしいたら、本当に怖い! 僕がいつも思うのは、霊って実態がないから、戦いを挑まれたら絶対に負けちゃうじゃん、ってこと。めちゃくちゃ強い人間より、幽霊の方がずっと怖い。だって、どうしたって捕まえられないから。霊に取り憑かれたり、呪われたりしたら、こっちは手の打ちようがないって思うと怖くてしょうがない。だから、いないと思って暮らしたほうが幸せだと思わない?
七菜:醍醐くん、お化け屋敷も嫌い?
醍醐:お化け屋敷は平気。あれは人工的に作られているってわかってるから。
七菜:UFOは信じる?
醍醐:信じない。だって見たことないし。
七菜:私は見たことないけど、お母さんは見たことあるんです。だから、UFOも実在すると私は思う。私たちが、選ばれていない人間というだけで。

ViVi:七菜さんは、お化け屋敷は大丈夫?
七菜:怖いです。急に驚かされると“ひゃー”ってなって、その日の夜まで引きずっちゃうんです。夜、一人でお風呂に入れなくなる(苦笑)。今、大分と東京を行ったり来たりしていて、東京に滞在するときは、マネージャーさんの家に泊まっているんですけど、マネージャーさんが不在のときは、一人でトイレにも行けなくなります。でも、人を驚かせるのは大好き。遊園地のアトラクションで、一つの部屋にカメラが回っていて、部屋の様子が外から見えて、ボタンを押すとプシューって煙が出るのがあるの知ってる? あれは大好き! それのために行ってもいいくらい。
醍醐:それ、後楽園にあるやつでしょ。知ってるよ(笑)。でも、そんな怖がりなら、一人暮らしなんて到底できないね(笑)。
七菜:できます! それは自信がある。
醍醐:根拠のない自信だ(笑)。
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二人にとって“夏”といえば……
ViVi:では、次のお題は“夏”です。夏に欠かせないものといえば何?
醍醐:傘です! 僕、すごく情けないことにセミがダメで。玄関の前とかにセミの死骸が転がっているのがすごく嫌なんです。普通に背中を見せていてくれればいいんですけど、ひっくり返っていたらもうダメ(笑)。弟は掴めるんだけど、僕は掴めないし、見るのも嫌だから、セミを撃退する用の傘が必需品です。
七菜:夏祭りが好きです。浴衣は着るのが大変だから、サラっとしたワンピースとか着て、屋台の美味しいものを食べたい。お祭りって、珍しい友達に会えるんです。小学校の頃の友達とかと偶然会って、「何年ぶり?」「髪伸びたね〜」「何してるの最近?」とか言って盛り上がるのが好き(笑)。
醍醐:森七菜ワールドだ(笑)。僕は、それに比べたら全然ありきたりだ(笑)。免許を取ったから、レンタカー借りて、川でキャンプとかバーベキューとかしたい。写真とかいっぱい撮って。森さんに比べると超ありきたり(笑)。
スーパー銭湯でサウナ我慢大会。青春っぽいことしてます
ViVi:最近、何か青春っぽいことをしていたら教えて!
七菜:この前、青春っぽいことしました! 友達とコンビニでいっぱいお菓子を買って、川というか用水路の脇の道を帰って家まで帰ったとき、一人の子が自転車を漕いで、他の子はみんな走りながら「アハハ」「アハハ」と笑いあって。またその道沿いに、レモンの木が植えてあって、ちょっと田舎の綺麗な景色の中、はしゃぐ女子高生って感じで、映画みたいな青春っぽさがあったんです!
ただ、おしゃべりしているときは、みんなの進路の話を聞くしかできなかった。私は、高校を卒業したら東京に来ることが決まっているので、話の輪に入れずじまい。一言も喋れなかったけど、人の話を聞いてるのがすごく好きです。
醍醐:青春というか、ちょっとおじさんっぽいのですが(笑)、最近はスーパー銭湯にハマっています。みんな免許持っているので、地元の友達の誰かがスーパー銭湯まで車を走らせて、サウナで我慢大会(笑)。ビリになった人がジュースを奢るんです。

『天気の子』に参加して変わったこと
ViVi:じゃあ最後、『天気の子』という作品に参加したことで、お天気について、何か見方は変わりましたか?
醍醐:僕自身、全然“晴れ男”でもないし、暑くも鬱陶しくもない“曇り”がちょうどいいって思っているようなフツーの平凡な男なんですが、この映画を通して、人間は、無力でもいいんだって思ったかな。どんな状況に置かれても、人間って適応していくものだと思う。そういう人間の強さを感じられたかもしれないです。ただ、どんなときも絶望だけはしちゃダメだなって思いました。
七菜:空が好きになりましたね。大分の空は広くて、遠くまでくっきりと見えてキレイだけど、東京の空も、建物に空が映ったり、光が反射したりして、別のキレイさがある。それに気づけたのも、この作品に参加できたからです。
ただ最近は、朝起きて空模様を確認するたびに、『天気の子』のストーリーを思い出して、ワクワクしたり、不安になったり、ドキドキしたり、なんだか、複雑な気持ちなんです(笑)。お化け屋敷じゃないけど、この映画には色々驚かされたから、陽菜をまだ引きずっているのかもしれない。ふふふ。
2000 年9月1日生まれ。東京都出身。2015年に俳優を志し『

映画『君の名は』から3年。新海誠監督、待望の最新作。離島から家出した帆高(声・醍醐虎汰朗)は、都会の片隅で一人の少女・陽菜(声・森七菜)と出会う。彼女には不思議な能力があって……。全国ロードショー中。©️2019「天気の子」製作委員会
Photos:Tohru Daimon Interview&Text:Yoko Kikuchi