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「Twitterで声をかけられた私が紅白歌合戦に」あいみょんが思うSNS論。

2019.03.03

ルーツはフォークや歌謡曲にあるといい、ギターを抱え男性視点の歌詞を歌い上げるあいみょん。2017年発売のファーストアルバム『青春のエキサイトメント』はロングヒットを続け、昨年末には紅白歌合戦に初出場、この2月には武道館ワンマンライブを開催。快進撃を続けるあいみょんが、一瞬だけ立ち止まって考えた“今とこれから”について。

「たまたま自分から出た一人称が『僕』だったら男目線、『私』だったら女目線になる」

ViVi:『青春のエキサイトメント』以来、1年5ヵ月ぶりのアルバムですね。

あいみょん(以下、あ):そうなんです。自分でももっと早く次のアルバムを作るんだろうなと思ってたんですけど、ありがたいことに前作がじわじわと皆さんの元に届いて行ったので、いつの間にか時間が経ってたんですよね。

ViVi:「あのドラマの!」っていう聴き慣れた楽曲がたくさん収録されていて。

あ:最初はデモ曲から選りすぐってレコーディングを始めたんですけど、その間に主題歌のお話を色々いただいて。まさか自分でもこんなに書き下ろすとは思ってなかったです。

――「今夜このまま」(『獣になれない私たち』日本テレビの主題歌)なんて、劇中ばっちりなタイミングで流れてましたよ。

あ:ドラマのために主題歌を書き下ろしたのって初めてだったんですけど、やっぱり台本に寄り添うのが作品に対する礼儀かなと思ったんです。自分の色は出しつつ、いかに作品に優しく寄り添えるか。その塩梅が大事やなって。アルコールがテーマだと聞いたから、歌詞の中で面白いことができたらなあと色々と練りました。

ViVi:アルバムを通して聴くと、馴染みのある曲と新録のバランスが絶妙ですよね。スッと聴ける。

あ:お経みたいな「二人だけの国」とか入ってますしね(笑)。でもこの曲は欠かせへんかったなって思う。ちょっと異質な感じの曲ですけど、全体のバランスを保ってくれている気がします。

ViVi:ご自身の恋愛観はどの程度、楽曲に生かされているんでしょう。

あ:あまり意識していなくて、人から聞いた話の方が作品につながりやすいですね。男友達でも女友達でも。自分のことより聞いた話の方が面白いなと思います。自分のことは割とどうでも良かったりするので。

ViVi:歌詞にする時に男性視点になるのが面白いですよね。

あ:はじめから「男性目線にしよう、女性目線にしよう」って決めてないんですよ。曲を作り始めて、たまたま自分から出た一人称が「僕」だったら男目線。「私」だったら女目線になる感じ。

ViVi:「僕」の時と「私」の時で感覚って違うものですか?

あ:「僕」は、ちょうど「私」と「俺」の間っていう感じなんです。女の子も共感できるし男の子も共感できる、ちょうどいい一人称かなって。

ViVi:自分の何かが宿っているというよりは代弁している感じなんですね。

あ:そうですね。たまたま出てきた言葉がそうというだけで。私は女で、男心はわからなくて当然だと思うんです。自分も女心をわかって欲しいとは思わないし。でも男と女は常に無い物ねだりをし続ける関係で、わかって欲しいと思う気持ちは大事だと思うんですよね。自分はそこまで相手に求めることはないけど、そういう男女の関係自体が可愛らしいなと思います。

ViVi:『瞬間的シックスセンス』というタイトルにはどんな意味が?

あ:世の中のあらゆる芸術は、五感では感知できないほんの一瞬で生まれるんじゃないかなと思ったんですよね。私、タイトルは最後につけることが多いんですけど、今回は珍しく最初から決めてました。

ViVi:アートワークも、水中に落ちたグラスの一瞬の動きを捉えてますよね。

あ:はい。今回もとんだ林蘭さんにお願いして、タイトルの語感からイメージだけ作ってもらいました。この文字は合成じゃなくて、コップにシールを貼ったものを撮影してるんですけど、こういうのも全部とんださんのアイディアで、オーダーは何もしてません。

ViVi:信頼が厚いんですね。

あ:そうですね。とんださん自身もここまでがっつりアーティストのアートワークを手がけるのって私が初めてで、お互い新しい発見ばかりなんですよ。そうやって一緒に作っていってる感じがいいですね。やっぱり新しく曲を作る時は前作を超えたいし、アートワークだって面白いものを作りたいから。

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「あいみょんでいる時間がだんだん増えている今、自分を取り戻すための時間を大切にしたい」

ViVi:この号が発売される頃には武道館公演も終わってるんですが……。

あ:そっか! 今、2月発売号の取材をしてるんですもんね。はぁ〜。どういうペースで進んでるんやって感じですね。

ViVi:早いなって感じます?

あ:そうですねえ。音楽を作って、それにまつわるお話をして、日々が過ぎていく感じですよね。

ViVi:昨年からあいみょんさんの名前を「好きな女性アーティストランキング」みたいなところで目にすることが増えましたけど、どんな感覚ですか?

あ:ありがたいことですけど、え、ホンマに? ホンマに合ってる? そんなことある? みたいな(笑)。実感が常にない感じです。

ViVI:そうやって晒されていくなかで、創作もしなきゃいけないじゃないですか。その辺はどうバランスを?

あ:家で曲を作るんですけど、最近は家にいられる時間が減ってしまって、1〜2年前に比べて書く曲数が減っている感じがするんです。だから今はアウトプットよりインプットを大事にしたい。本を読んだり映画館や美術館に行ったり、そういう時間を大事にしたいですね。尊敬してるピースの又吉直樹さんが、「今は少しでも時間が空いたら全部自分のために使ってください」って言ってくれたんですよ。それがすごい嬉しくて。まだまだ時間の使い方が下手だから、うまくなりたいなと思っています。

ViVi:自分のための時間って、具体的にどんなことをするんでしょう。

あ:領収書をまとめたり……。

ViVi:あっ、事務仕事(笑)

あ:はい(笑)。忙しいとゴミも捨てられないし、洗濯物も溜まるし、人間としての生活がままならなくなってくるんですよ。そもそも家族が多い家で育ったので、家事はそれなりにできるほうなんです。そういうのを終わらせてから好きなことやらないとって思うタイプなので。

ViVi:真面目! じゃあ今は家のことを充実させたいわけですね。

あ:そう、ナウシカの部屋みたいにしたいんですよ。お花をいただくことが増えたから、大事にしたくてちゃんと飾るようになって。あとサボテン専門店で、ガジュマルとか多肉植物とか色々買いました。

ViVi:緑っていいですよね。珍しく家にいる時は何をしてるんですか?

あ:テレビでニュース番組ばっかりずっと観てますね。バラエティ番組は時間がなくてあまり観てないんですけど、お笑いも好きですよ。高校生のときからずっと好きなのは又吉さんで、初めて又吉さんが表紙を飾った2012年の『マンスリーよしもと』を未だに持ってます。最近だと、ジェラードンさんと、三千……あ、四千頭身さん。すみません千少なかった(笑)。あとチョコレートプラネットさんも昔から好き。芸人さんて賢いし、瞬発力がすごいじゃないですか。うわ、そんな返し方するんだ! みたいな。勉強になりますよね。やっぱり関西人ってみんな面白くなりたいんですよ。私ももっと面白くなりたいです。

ViVi:(笑)。買い物に行ったりは?

あ:前は一人で買い物に行くのが好きやったんですけど、最近はインスタのストーリーに上げられちゃうじゃないですか。「あれ、あいみょんヒートテック買ってねえ?」みたいな(笑)。だから最近はよくスタイリストさんが持ってきてくれた服を買い取ってます。

ViVi:メンズもレディースも着ますよね。ステージではパンツですし。

あ:はい。夏場はレディースが多めです。私ヘソ出しスタイルがすごい好きで。身体が大きいので、どこかで肌を出しておかないとボテッと見える気がして。おヘソ出すとバランスが取れる気がするんですよ。昔はTシャツの裾を切りまくってお腹出してました(笑)。

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「Twitterで声をかけられた私が紅白歌合戦に。SNSの時代、誰だってチャンスはあると思う」

ViVi:あいみょんさんの楽曲は幅広い層に愛されてると思うんですけど、特に同世代の子たちに思うことは?

あ:みんな自由で楽しそうだなって。私たちSNS世代は自分を発信できる時代に生きてますよね。それに頼り過ぎても良くないと思うけど、表現の場所が増えているんだから、表現したい子は是非ともフル活用して欲しいですね。とある写真家の方が「もし僕が若い頃にSNSがあったらもっと作品を上げてた」って仰ってて、なるほどなと。そう言われてみると、私も普通に本名でTwitterをやってた頃に声をかけられて、今は紅白歌合戦にまで出ちゃってるわけで。そういう意味でもめちゃくちゃ希望があるというか。もちろんデメリットもあるかもしれないけど、上手に使うことができたら、誰にだってチャンスがあるなって思います。

ViVi:あと同世代の子の、悩み事の第1位といえば恋愛ですよね。相談を受けることって多くないですか?

あ:確かに、大阪のラジオでは恋愛に関するメッセージがすごい多いですね。大体ふざけて答えてますけど(笑)。でも私も自分の経験が正解とは思わないから、こういう人もいるよ、ああいう人もいるよっていろんな事例を教えてあげる感じかな。前に「都合のいい女をやめたいです」っていう相談があった時は、「私は都合のいい女しか〝いい女〞になれないって思ってるので、あなたはいい女ですよ」って言ったら喜んでくれましたね。

ViVi:その受け止め感、すごくあいみょんさんらしい気がしました。もうすぐ入学や就職のシーズンですけど、気持ちも新たに挑戦したいことは?

あ:去年は〝あいみょん〞としての時間が多くて、病院で本名を呼ばれて「ああ私か」ってハッとすることがあったんです。もちろん自分の名前を忘れたわけじゃないけど、あいみょんじゃない素の自分ってどんなんやったかなって改めて思い返してみたいです。

ViVi:〝あいみょん〞の時もキャラを作っているわけではないですもんね。

あ:うん、それは全然ないです。昔から〝あいみょん〞でしたから。でもアーティストとしてそう名乗ってるからにはって、無意識のうちに意識はしてたかもしれない。

ViVi:本名の自分を取り戻すというか。

あ:そうですね。朝ごはんを作って食べる時間とか、領収書をまとめる時間とか(笑)、人間としての生活のバランスを取れるように頑張りたいですね。

INFORMATION
『瞬間的シックスセンス』
¥ 3024(税込み/ワーナーミュージック・ジャパン)
前作から1年5ヵ月ぶりとなる待望の2ndアルバム。「満月の夜なら」「マリーゴールド」「今夜このまま」といったヒットシングルを含む全12曲を収録。

Photos:Yuki Kumagai Styling:Masataka Hattori Hair&Make-up:Chie Fujimoto Interview&Text:Neo Iida Design:attik