働き方や価値観が多様化している今、いい企業に就職したり、お金をたくさん稼ぐということがすべての人にとっての幸せではない。大事なのは人からどう評価されるかよりも、自分自身が納得できるかなのではないでしょうか? あなたにとって自分らしい生き方とは何なのか、今一度考えてみましょう! 今回は気鋭の建築家であり、起業家であり、リアリティー番組『TERRACE HOUSE BOYS&GIRLS IN THE CITY』の元メンバーでもある半田悠人さんに“就職しない生き方”について色々質問してみました。
半田悠人’s History
2007.4 早稲田大学へ入学
2011.3 早稲田大学を卒業
2012.4 東京藝術大学へ入学
2016.3 東京藝術大学を卒業
2017.12 DELICIOUS COMPANYを法人化
建築家を目指されたきっかけを教えてください
最初に興味を持ったのは、幼稚園の時に大工さんと一緒に小屋を作った時ですね。具体的に将来の仕事として意識するようになったのは、もっと後なんですが、狭き門なので一度挫折して、単純に好きだった文学の方を目指しました。でも早稲田の3年生の時に、東京藝大の建築科の学生と出会ってアトリエに通いだして、実際に建築界で活躍されている教授を目の当たりにして、将来こうなれたら素敵だなと思いました。
大学に入り直すことについては周囲に心配されましたか?
肯定してくれる友達は少なかったですね。結構成績が良くて、どこにでも就職できるよと言われていたこともあり、反対されました。普通の大学生だとしたら、3年生くらいからソワソワし始めて、みんな自分探しを始めますよね。その流れに抗うのはものすごく難しいと思います。ただ僕は「就職活動してサラリーマンになったら、自分が思い描いていた自分になれない」って宣言していて、周りの人たちの夢を一人で背負うことになったんです。
幸い親は理解があって「2つくらい大学行ってもいいじゃん!」って考え方だったのでよかったんですが、自分で払える額を考えると国立一択でしたし、いよいよ後には引けないなという感じになって本気を出しました。
働くということについてはどうお考えですか?
日本人は特に難しく考えすぎだと思うんです。人生を線で捉えていて、就職活動の期間がきたら面接を受けて、就職先がものすごく人生を決めるじゃないですか。就職活動で全てが決まるっていう考えがダメですね。ただここで大事なのは、就職活動をしている子たちを否定してはいけないということです。今では早稲田の同期達が会社の中堅クラスでバリバリ仕事を回していて、それはすごく素敵なことだと思います。
ただ、もしそこから溢れてしまうエゴとかやりたい欲を持っている人がいるならトライしてもいいと思うんです。人は支えてくれるし、なんとかなるので。僕はそうでしたね、なんとかなってます。言ってみれば、自分で会社を作ってこれからやっていくぞっていうのもある種の就職活動ですよね。企業就職と同じくらい、それが選択肢として主流になってきたら面白いですね。
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「就職活動ですべてが決まるって考え方は、もう古い。」
学生の方から、そういった進路の悩み相談を受けることはありますか?
すごくありますね。就職系の悩みは毎日のように来ます。みんな悩んでることは共通していて、「このまま夢を諦めて就職した方がいいのか、でも自分はこれをやっていきたい。どうするべきですか?」と。でも、相談してくる時点で答えは出ていて、やりたいんですよ。やりたい自分を否定しないことが大事なんです。
両方できる道がないか、まず探してみてもいいし、少なくともやりたい道を閉ざす必要はないんです。みんなどっちかに決めなきゃいけないって思いがちなんですが、今っていろんなデバイスが進化したことによって、かつてと同じ働き方じゃないことは余裕で証明されていますよね。それなのに、なぜまだ職は一つだと思っているのか疑問を感じますね。
DELICIOUS COMPANYについて教えてください。
東京藝大の同世代の仲間で5年ほど前からチームで活動をしていて、2年ほど前に会社化しました。東京藝大の学生ってひたむきに頑張っている子が多くて、みんな素敵なものを作っているんですけど、才能があっても、苦しんで、バイトしてバイトして作品作って、小さなギャラリーで個展して、そのうち諦める人が多いんですよ。
もちろんバカ売れしている人もいますけど、運が良かったとしか思わないですね。もっと売れてもいい人がいて、バカ売れしないまでも最低限生活できるようになればいいのにって思うんですが、社会ってそうだからって諦めている人も多くて。だったら僕がみんなに仕事を取ってこようって思ったのがきっかけですね。
チームで動くことって大変なんですが、チームだから生まれてしまうものを肯定し続けようって思ったんです。あの人たち楽しそうだよねって言われることが、僕らが一緒にやっている一番の理由ですね。憧れられたり、嫉妬されたいです。
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会社が軌道に乗ったのはどの辺りからですか?
一般的に軌道に乗るまで10年かかると言われているので、それでいうとまだですね。売り上げ的にはものすごく上がっているんですが、その分『元映画館』のプロジェクトを筆頭に、新しいチャレンジをしているので。

『元映画館』カフェバーを併設し、映画を上映しながらの食事会や、イベント、美術展示など使い方は自由。利用者は一日“支配人”となることができる。10/23オープン予定。東京都荒川区東日暮里3-31-18 旭ビル2F
『元映画館』のプロジェクトについて詳しく教えてください。
家賃というシステムはいずれなくなると思っていて、家賃をいかにゼロにするかが建築家として取り組むべきことだなと思うんです。そこで、坪単価が安い広めの場所を自分たちで改修して、余ったスペースを貸し出してシェアすれば家賃がゼロになるなって考えて、大きめの場所を探していたところ、たまたま28年間使われていなかった日暮里の映画館が見つかったんです。
「かつて映画館だった場所だからこそしたいこと」、「映画館ではしたくてもできなかったこと」、そのどちらをも実現できる場所になればと考えています。
すでに何かやりたいという話は来ているんですか?
インド映画祭から依頼が来たり、海外のアーティストの個展の予定があったり、ありがたいことにたくさん来ています。
最後に、自分らしく生きるためのアドバイスをいただけますか?
可能性はいつでも350度くらいはひらけていると思っているんです。僕は小学生には戻れないし、甲子園には出られないし、どうしてもできないことはあるんですけど、大学は何歳になっても入ることができるんです。僕が今建築を全部捨てて医者を目指したっていいんですよ。それはそれで想像すると面白いなと思います。
それくらい人生は自由だし、僕は死ぬほどバイトをしてきたんですが、あのバイト生活に戻れば生きてはいける。もっと言えば、「大学入ってやり直した方がいいのか」っていう質問もよく受けるんですけど、大学行かなくたって興味があって自分で勉強できるんだったら、どこでやっても同じです。いつからでも始められる。大事なのはやめないことですね。
Photos : Junpei Ishikawa