イケメン

横山裕の俳優の顔にドギマギ。橋本良亮が20テイクかかった映画「決算!忠臣蔵」の場面とは!?

2019.11.28

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切実に、「お金に困った!」ことはあるだろうか? 本当にお金に困った時、「これを売ったら何とかなるかも!」と思えるような、価値の高いものを、一つぐらい持っているだろうか。公開中の映画「決算!忠臣蔵」は、江戸時代に起こった有名な“仇討ち”の実話(赤穂事件)を、“お金”の面にクローズアップして描いた画期的な映画だ。

今から約300年前、赤穂藩(今の兵庫県赤穂市・相生市)藩主である浅野内匠頭は、幕府の重鎮である吉良上野介の数々の嫌がらせやいじめに耐えかね、江戸城内で吉良に斬りかかった。通常であれば喧嘩両成敗のはずが、幕府が下した結論は、内匠頭の即日切腹と赤穂藩のお取り潰し。それを不服とした赤穂浪士47名が、事件の1年9ヶ月後に吉良邸に討ち入り、宿敵の首を取った。この一連の“赤穂事件”は、大石内蔵助と同志たちの行動が忠臣の手本であるという意味で、「忠臣蔵」と呼ばれるようになる。

歌舞伎や浄瑠璃に始まり、昨今ではドラマや舞台や映画まで。赤穂事件をモチーフにしたエンタメ作品は数々あれど、討ち入りにこんなにもお金がかかることを教えてくれる映画は前代未聞。この映画を観ると、江戸時代の武士一人一人にも生活があり、家族があること。何より、人間は食べなくては生きていけないという当たり前のことに気づかされる。

今回、初めての本格時代劇に挑戦したA.B.C-Zの橋本良亮くん、通称“はっしー”の演じた赤穂浪士47人の一人・武林唯七は、なんと、江戸での生活に困窮して自分の刀を売ってしまう! 堤真一さん、岡村隆史さん、濱田岳さん、ジャニーズの先輩・横山裕さん、妻夫木聡さん、荒川良々さん、石原さとみさん、阿部サダヲさんなど、そうそうたる俳優陣に囲まれ、芝居場で何度も困窮したというはっしーに、初体験づくしの撮影を通して、ピンチの乗り越え方について聞いてみた。

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――映像作品では初めての時代劇ということで、事前にどんな準備をしたんですか?

橋本 正直、特に準備はしてなかったです。殺陣のシーンがあればきっと練習したと思うんですけど、それもなかったので。ただ、最初に台本を読んだときは、時代劇なのでわからない言葉がたくさんあったんです。「大丈夫かな?」ってすごく不安だったんですが、最初に監督から、「(普段の)橋本のままで大丈夫だよ」と言われて、「これでいいのかな?」と探りながら演じていました。クランクイン前に、「赤穂浪士が、どんどん薄汚れていって、カッコ悪くなるところが面白いんだよ」と説明されましたが、自分ではどんな感じで汚れていくのか全然想像がつかなかった。でも試写を観て、いい意味で唯七のゲスな部分、ダメダメなところが出ていて、さすがだなと思いました。橋本の“味”を前面に出してくださったと思います。

――ゲスでダメダメな部分が自分の“味”だと思ってるんですか?

橋本 というより、僕自身がすごくマイナス思考なので、普段なら自分が出ているバラエティ番組や歌番組はまず観ないんです。一応、A.B.C-Zというグループの中では、メインボーカルなんですが、みんなから、「もっと前に出ろ」って言われます。しかも、映画でもなんでもそうですが、映像に記録された自分自身を観るのが得意じゃない(苦笑)。試写の時もすごく緊張して、最初は薄目で見てました。そうしたら、映画自体がめちゃめちゃ面白くて、自分が出ているのを忘れるぐらい入り込めたんです。普通にゲラゲラ笑っていました(笑)。

――唯七が、自分の刀を売ったことを告白するシーンは、この映画の見せ場の一つだと思うんですが、撮影の時は緊張しましたか?

橋本 堤真一さん演じる大石内蔵助を前に、武士の命である刀を生活のために売ったと告白すると、堤さんの内蔵助が物凄い勢いで怒るんですよ。それが本当に怖くて、現場もピリピリしていました。さすがに唯七も、刀を売ったのはまずいことだとわかっていると思ったので真剣な顔で演じようとしたら、監督から、「天然な感じも盛り込んで」と言われてしまって……。すごく難しかったです。

キャスティングが決まってから、その俳優のキャラクターに合わせて監督が当て書きをした部分もあったと聞いていますけど、だから唯七が天然キャラになったかというとそうでもなくて、実際の唯七も天然だったみたい。映画ではカットされてましたけど、唯七は、服も売っちゃっていて(笑)。1年を、たった一枚の着物で過ごしていたんです。撮影は真冬だったので、すごく寒かったです。ホッカイロをめちゃくちゃたくさん着物の中に貼っていました。

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――撮影現場にはどうやって慣れていったんですか?

橋本 正直、最初から最後まで気まずかったです(笑)。こんなすごい俳優さんたちの中で、経験不足の僕が一人。普通にチラシを見て、キャストの名前を追っていったら、僕のところで、「こいつ誰だよ?」って感じじゃないですか。でも、せっかくのチャンスなので、頑張ろうと思って現場に来てはみたんですが、誰に話しかけていいのか、待ち時間中、どうやって過ごせばいいのか、まったくわからなくて、心細かったです。

今回、マネージャーさんもいなくて、一人、1ヶ月京都で過ごしました。堀部安兵衛役の荒川(良々)さんが、僕のことを気にかけてくださって、食事に誘っていただきました。あと、比較的早い時期に、同世代の佐々木くんという友達ができました。佐々木くんの方から、「今日暇ならご飯でも行かない?」って誘ってくれて、「よっしゃ助かった。友達できた!」って(笑)。それ以降、現場ではずっと佐々木くんの隣にいました。

――現場では積極的に周りの方に話しかけていたという目撃情報もあったみたいですが?

橋本 え? 僕が積極的に? おかしいなぁ。でも、もしそうだったとしたら、恥ずかしさの裏返しかもしれないです。あとは、経験値がないのに起用していただけたので、いくらネガティヴ思考だといっても、それを言い訳にして、「ぼっちでもいいや」と開き直るのは違うと思うから、まあ、できることはしていたのかも。全く記憶にないですけど(笑)。

あとは、ジャニーズを代表してきている部分もあるので、ジャニーズの印象が悪くならないように。「調子乗ってるな」とか思われないよう、挨拶は頑張って大きい声でするようにしました。初めての人に、「礼儀正しい、めちゃくちゃいいじゃん!」って思われたいですからね(笑)。

――20テイク撮ったシーンがあるそうですね。橋本さんから、「もう一回やらせてください!」と粘ったんですか?

橋本 違います。ただのNGです(笑)。「もう一回やらせてください」なんて、おこがましいことは言えないです。中村監督は、僕だけでなく、キャスト全員のいいところを出したいという気持ちが強かったんだと思います。何度もテイクを繰り返したのは、荒川さんや僕の最初の登場シーンなんですが、クランクインしてからだいぶ経っての撮影なのに、全然キャラクターを掴み切れてなかった。あの時は本当に悔しかったです。

もう一つ、何十人もの俳優さんが一堂に会する見積もり会議のシーンがあるんですけど、その時のプレッシャーも凄かったです。「失敗したらどうしよう」と、本当にビクビクでした。次だ、次だ、次だ……って、めちゃくちゃ肩に力が入ってしまって。監督からも、「橋本くん、そうじゃない。こういう言い方で。表情はもっと険しく」とか、細かいところまで指示が入りました。

実は、今年は、1月に堤さんとご一緒する舞台のポスター撮影があって、2月にこの映画の撮影があって、3月は舞台の稽古があって、ずっと堤さんと一緒だったんです。でも、撮影中はあまりお話ができなくて、映画がクランクアップして、東京で一緒にお稽古している時に、堤さんから、「あの時のお前、めちゃくちゃ幸せもんやったで。俺らの時代なら、うまくできなかったらカットされるか、帰れと言われるか。中村監督みたいな、細かく演出してくれる監督はいなかった。出会えて本当によかったな」と言われました。

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――今回の映画を通して、何か新たな発見はありましたか?

橋本 先輩の横山くんの役者としてのオーラにびっくりしました。バラエティ番組とかで見る顔とは違い、現場に入った瞬間、キリッと変わったんです。「なんだなんだ?」って、ドキドキしました。僕、普段は先輩のドラマとか見ないので、ああいう横山くんの雰囲気に触れたのは初めてで。めちゃくちゃ新鮮でした。僕はまだ俳優というレベルまで達していないことを思い知らされましたね。この映画の横山くんは関ジャニ∞の顔じゃなく、俳優の顔です。僕もいつか必ずそこまでいきたい。そう思わせてくれて、めちゃくちゃ刺激を受けました。

アドバイス? それはなかったです。20歳ぐらいの時は、家に何回かお邪魔させていただいていて、普段からフランクに接してもらっているんですが、それとは違う顔を見られたことがよかったです。岡田(准一)くんとかもストイックですもんね。今回の経験を通して、あらためて、もっとお芝居を勉強したいなと思いました。

――先輩の作品はあまり観ないということですが、普段はどんな映画を好んで観ていますか?

橋本 普段は洋画が多いです。邦画だと、福田雄一監督の映画は好きです。福田監督とは2年前に、舞台でご一緒させてもらっていて。コメディだから観やすいんです。

――ところで、映像作品での本格時代劇は初ですが、橋本さんのジャニーズ歴はもう15年になります。初めてステージに立った時のことは覚えてますか?

橋本 えーなんだろ? 小4だったし、部活感覚でした。子どもだから、それがどんなすごいことかわかっていなかったし、ドキドキとかはなかったと思います。

――じゃあ、映画に因んで、橋本さんのお金の使い道について少し教えてください。橋本さんが、自分のお金で最初に家族にご飯を御馳走したのはいつですか?

橋本 割と最近ですね。18歳の時にA.B.C-Zとしてデビューして、しばらく経ってたから、20歳とかそこらへん。多分、焼肉だったと思います。今は、甥っ子と姪っ子がいるので、おいしいものを食べさせてあげたり、何か買ってあげたりと貢いでます(笑)。

PROFILE
橋本良亮 はしもと りょうすけ
1993年7月15日生まれ。千葉県出身。2008年に戸塚祥太、河合郁人、五関晃一、塚田僚一と共にA.B.C-Zが結成される。グループ最年少ながら、メインボーカルに抜擢され、12年にジャニーズ初のDVDデビュー。14年からはCDもリリース。ジャニーズの舞台のほか、外部舞台は、ベートーヴェン役を演じた音楽劇「ルードリヒ・B〜ベートーヴェン歓喜の歌〜」(14年)、河合郁人とW主演を果たした「コインロッカー・ベイビーズ」(16年、18年)、福田雄一演出の「デストラップ」(17年)、堤真一と共演した「良い子はみんなご褒美がもらえる」(19年)などコンスタントに出演している。映画の出演作に「劇場版BAD BOYS J〜最後に守るもの〜」(13年)。2020年の公開待機作に、A.B.C-Z主演の「俺たち応援屋!! We are Oh& Yeah!」がある。
INFORMATION
映画『決算! 忠臣蔵』
今から約300年前、赤穂藩(今の兵庫県赤穂市・相生市)藩主である浅野内匠頭(阿部サダヲ)は、幕府の重鎮である吉良上野介の数々の嫌がらせやいじめに耐えかね、江戸城内で吉良に斬りかかった。通常であれば喧嘩両成敗のはずが、幕府が下した結論は、内匠頭の即日切腹と赤穂藩のお取り潰し。筆頭家老・大石内蔵助(堤真一)は、嘆く暇もなく、幼なじみの勘定方・矢頭長助(岡村隆史)の力を借りて、ひたすら残務整理に励んでいた。御家再興の道が閉ざされた彼らに残された唯一の希望は、宿敵・吉良邸への討ち入り。ただ、討ち入りをするには莫大なお金が必要で、現時点で使える予算は(現在の貨幣価値にして)9500万だった。果たして彼らは、予算内で、仇討ちという一大プロジェクトを無事に決算できるのか???
出演:堤真一 岡村隆史 濱田岳 横山裕 妻夫木聡 荒川良々 竹内結子 西川きよし 石原さとみ 橋本良亮(A.B.C-Z)阿部サダヲ ほか
脚本・監督:中村義洋
原作:「忠臣蔵の決算書」山本博文著(新潮新書刊)

Text: Yoko Kikuchi