国際工科専門職大学のCMで、真っすぐにこちらを見据える、大きな黒目が印象的な男性。ネットでも「カッコいい!」と話題になっていますが、その正体はモデル・俳優の湯木優輝さん。芸能活動を始めてまだ2年。海外を転々としてきた20歳。動き出したばかりの“自我”を、写真家・森栄喜氏が捉えます。
MY CHARACTER
―流されそうで流されない―
家にいるときはゲームばかりしています。まわりからは「そんなふうに見えない」って言われるんですけど、バトル系のRPGゲームが好きで、プレイしているときはけっこう汚い言葉もいっぱい使っちゃいます。でもこの仕事を始めてからは、映画やドラマを見たり、本を読んだりすることが増えました。仕事で知り合った人からいろいろいい作品を勧められるので。実は今まで映画って大ヒット作しか見たことがなくて。今さら、「映画ってヒットしているから面白いわけじゃないんだ」ということを学びました。
オフの時間は圧倒的に一人で過ごすことが多いです。ごはんもカラオケも映画館も全て一人で行く。最近東京に引っ越して、近くに友達があまりいないこともあるんですけど、一人っ子なので一人のほうが基本的にラクなんですよね。でも友達の誘いは断りません。断られるのが嫌で自分から誘うことはしないんですけど、誘われたらけっこうウキウキ出かけます(笑)。
友達からは「変わってるね」とよく言われます。海外と日本を行き来しながら育ったので、“個”の意識が強いんでしょうね。頑固で流されない。ニコニコしながら「いやいや」と自分の意見を貫いています。だから友達の彼女についても、「どうかなー」と思ったときはハッキリ言っちゃう。いろんな国でいろんな人を見てきたから、人を見る目には自信があるんですよ。ただ自分のことになると急にダメなんですけど……。

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THE ACTING
―“肯定”をもらった―
生まれは日本なんですけど、オランダやアメリカ、カナダなど、日本と海外を行ったり来たりしながら育ちました。高3のときは日本にいて、原宿でバイトをしていたら芸能関係の人から声をかけられるようになって。それを友達に話したら、彼の両親が今の事務所の社長を紹介してくれて。社長の人柄に惚れたのと、たまたま誕生日が同じだったので縁を感じて、アメリカの大学に進学が決まっていたんですけど、急遽方向転換して挑戦してみることにしたんです。
それからはオーディションを受けて受けて受けて、落ちて落ちて落ちて。初めて受かったのが国際工科専門職大学のCMでした。これがロングランでけっこう反響があって、そこからいくつかCMが決まり、「このままイケるかも?」と思ったらまた落ちて、また少し上がって……の繰り返しで今日まで来ています。
この先は、お芝居ももっともっとやっていきたいと思っています。僕、中学のとき日本になじめなくて引きこもっていた時期があるんですよ。そのときは周りも自分も「逃げている」と思っていたんですけど、お芝居で引きこもりの人を演じたとき「自分なりに戦っていたのかな」と思えて、嬉しくてワーッと涙が出てきて。自分のお芝居で、何かそういう“肯定”を提供できたらいいなと思ったんです。もちろん逆も然りで、誰かの人生を“否定”することもあるかもしれないですけど、少なくとも映像を見て心を揺さぶられるって素晴らしいことだなと、今の僕は感じているんです。
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MY LIFE
―正解がないから面白い―
実を言うと、何かが続いたことがない人間なんです。習い事も最初は楽しいんですよ、でも半年から1年すると飽きてくる。バイオリン、塾、中学の部活で始めたソフトテニスも……。その僕が、この仕事を始めて3年目に入りました。飽きるどころか、まだまだという気持ちしかありません。今は何もできなくて悔しくてたまらない。正解のない仕事なのがいいのかもしれませんね。
勉強もスポーツもある程度ゴールがあるので、達成しちゃうと「もういいや」となってしまうんですよ。ダイエットも同じです。仕事を始めた頃は今よりずっと丸くて。毎日4㎞走って夜はサラダとチキンばかり食べて7㎏落としたんですけど、達成したらまた緩んでしまって、2、3キロ戻ってしまいました。今は週に2回ジムに行ってます。ある程度脱げる体になりたいから(笑)。腹筋を割りたくて、家でも鍛えているんですけど割れない。何でかなあ……。
他に今やりたいことは、広島に行くことです。母方の実家が広島なんですけど、まだお墓参りができていないので。原爆ドームも見たいですし。海外に長くいたこともあって、自分のルーツやアイデンティティがどこにあるんだろう?という興味もあるんですよね。あとは、普通に温泉に行きたいです。お仕事で1日に何百着もの服を着たりすると疲れるので、温泉に浸かって一日中何もせずボケーッと過ごしたら気持ちいいだろうな、と。でもそれはあくまで言うだけで、実際はそんな時間は全然いりません!

Photos:Eiki Mori Hair&Make-up:Fumi Suganaga(Lila) Interview&Text:Naoko Yamamoto