【第1話】恋はタイミングが大切なの『うみんちゅとデコネイル』

2020.08.03

恋愛リアリティーショー番組『恋する❤︎週末ホームステイ』に参加したナツキ。「絶対彼氏を作るぞ!」と意気込んで参加したものの、特に何もなく終わってしまった。だけどひとつだけ、心残りな事があって……。『うみんちゅとデコネイル』マイクロコンテンツ第1話をお届けします♡
※「AbemaTV『恋する❤︎週末ホームステイ』 短編ノベル・イラストコンテスト」受賞作品です。

『恋はタイミングが大切なの』
そう従妹のお姉ちゃんが言ってた。

読モで女子力高いお姉ちゃんの言葉だから間違いない。
でも、私はタイミングなんてわからなかった。
素敵な男の子と恋に落ちることを夢見て応募した番組だったのに。

まだ手帳に挟まったまんまの、使えなかったチケット。
私は未だに後悔している。

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「ナツキちゃん! テラス席にこれ運んで」
「はーい!」
オーナーの言葉に私は元気よく返事してトレイにフードをのせた。

海開きも先日終わったばかりの湘南の海。
潮風が気持ち良い、騒がしいけど活気が溢れて人で込み合う浜辺。
その浜辺をでーんと見下ろす、オシャレなウッドテラスがウリのこのお店。
海のカフェ、プティソレイユは今日も満員御礼。

「お待たせしました。シークワーサースムージーと黒糖アメリカンドックです」
フランス語の店名そのものって感じのオシャレな外観や内装なのに、なぜかメニューはオーナーの出身地にちなんだ沖縄風。
でもその意外な組み合わせが何故かSNS映えすると評判なんだよね、このお店。

「あ、あのっ! ナツキちゃんですよね?」
突然、女の子に声を掛けられる。

オーダーのフードを運んだテーブルの隣の席に座る、私とそんなに歳が変わらないであろう高校生らしき女の子の集団。
そっか、この子達もあの番組を観てたんだ。
なんだか嬉しいような、恥ずかしいようなくすぐったい気持ちと。
……それと、ちょっとだけ思い出す、胸の奥のほんの少しだけある苦い気持ち。
私は頷く代わりに、にっこりと笑う。
うん、自画自賛だけど最高の笑顔じゃね?

そして有難いことに、彼女たちは歓声を上げてくれた。
この反応すごく嬉しい。

「あたしたち、恋ステがめっちゃ好きで! で、登場した時から、ナツキちゃんのファンで! ナツキちゃんのインスタ見てここにきましたっ!」
「夏休みは週末、ここでバイトしてるんですよね!」
「今日のネイルもめちゃくちゃ可愛いっ! 良く見せて~!」
興奮した彼女たちから口々に私に飛び交う質問と称賛。

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ナツキちゃんのファン、かぁ……。
ただの女子高生の私にファンとか……なんだか嬉しいなぁ。
あの番組で私って最後まで賑やかし要員で終わっちゃってたのにね。
「恋ステ見ててくれたんだ、ありがと! うん。明日もここにいるよ。このネイル可愛いでしょ? これはね~ベースをフレンチにして貝殻スタッズとラメでキラキラにデコる、この夏私イチオシのネイルなんだ」

私の指先でキラキラ踊る色とりどりの爪先。
イエローやミントグリーンのパステルカラーと白のフレンチ。
「わあっ、ホンモノのナツキちゃんのデコネイルだ~! そのデコネイルへの情熱って言うか、愛って言うか……マジ憧れちゃう」
「うちは高校も親もネイル禁止だし……ちょー、羨ましい」
「ね、私も彼氏がデコネイルとか好きじゃないからさぁ。周りに理解のあるナツキちゃんが羨ましい~」

お、この子達、もしかして周りが理解があるから、私がネイルをしてると思ってるのか。
そんでネイルをしたまんま、学校に行ってると思ってるのね。
確かにあの番組、私のことネイル好きってことあるごとに紹介してたからね。
毎週、今日のネイルのポイントは? って聞かれてたし。
私イコールデコネイルってイメージついちゃっても無理もないし、ぶっちゃけそれって結構嬉しいし。

だけど……うーん。
ちょっと違うんだけどなぁ。

私はゼロ円スマイルを顔に張り付けたまま、ゆっくりとテーブルから離れようとした。
けど……。
「でも、恋ステでナツキちゃんが最後まで誰ともくっつかなくて安心した~」
ぐさり。
その言葉が私の心臓に突き刺さって、ゼロ円スマイル仮面に大きなひびが入る。

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『恋する週末ホームスティ』略して恋ステ。
学生に人気のあるストリーミング配信のこの番組に、私は今年の冬に参加した。
理由はもちろん、素敵な彼氏を作るために。
素敵な男の子に恋をして、男の子も私を好きになって、チケットを渡されて、私の彼氏いない歴イコールに終止符を打つ!
そう具体的なプランを夢見て、絶対絶対彼氏を作るぞって決心して参加したのだ。

だけど、何もないまま終わってしまった。
いや、正確にはちょっとあったけど……結果的には何もなかったって言うか……。

「でもさ、レン……だっけ? あの沖縄の男の子。ナツキちゃん、結構仲良かったよね?」

レン。
その言葉に2本目の矢が胸に突き刺さる。
……耐えてくれ、私の仮面。

「ばっかね! ナツキちゃんがあんなダサいの男の子好きになるわけないじゃん!」
ぐさり。
「それにナツキちゃん、はっきり言ってたし。あの子にダサいって。それってナツキちゃん的にありえないってことでしょ?」
ぐさぐさぐさ。
「赤ミーバイだっけ? あんな変な魚とナツキちゃんが似てるとか言うのも失礼だっての」

ああ……そうだね。
その部分、オンエアの時には面白おかしく、でーんと真っ赤な魚のドアップを出されちゃったもんね。
分厚い唇に、でろんとした大きな顔。
そして毒林檎みたいに真っ赤な全身。
あんなのと似てるなんて、ほんとデリカシーないよねレンのヤツ。

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雨の様に降り注ぐ言葉の矢。
レンはありえない。ナツキちゃんが誰とも付き合わなくて良かった。
うん、そうだね。確かにそうだ。
でも、もう限界だ。
「それではごゆっくり~」
私はまだ名残惜しそうにしている彼女たちの前からそそくさと厨房に逃げ帰った。

分かってる。
人間は外見じゃないって、言葉は単なる気休め。
偽善的って言うの?
結局は外見もそれ相応にしないと世間は内面も見てくれない。
私だっていくらネイルが好きでも、学校にはデコったネイルで行かない。
だから外見って、とても大事。

確かに私はレンはダサかった。
私もダメ出ししたし。
ダサいって、それじゃモテないし、恋愛も出来ないって。

でもさ、その外見が壊滅的にダサい子の内面にさ……私ってば惹かれちゃったんだよね。

▶︎【第2話】は8月4日13:00更新!

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作者:イトウアユム